雇用助成金の具体例 C

チャレンジ3号業務(その4)
特定社会保険労務士 竹内 睦 昭和34年生まれ。昭和57年明治大学経営学部卒業。同年大和証券鰍ノ入社。中小企業開拓を中心とするセールスマンとして第一歩を踏み出す。以来、外資系証券及ぴ生損保の営業を経験。現在,顧問先の営業支援を助成金活用によって新規開拓に結びつけるという独自の領域で活躍中。
祝合格、即開業へ 竹内 睦 助成金活用研究会会長
特定社会保険労務士
失うものは何もない!!
開業時の私の気持ち

 今年度の社労士試験の出来は、いかがでしたか?
毎年のことながら、結果発表までの3ヵ月間は、本当に長く、切ないものです。
私の場合は、運命の合格発表日に、妻と3歳の次男を連れて、厚生省へ発表を見に行きました。
さすがに、霞ヶ関界隈に子連れの姿はなく、周囲から浮いていました。
しかし、家族の命運がかかるその日に、世間の目などまったく気にもならず、本省へ入りました。
 人だかりの中で、もみくちゃになりながら自分の番号を捜すのだろうと思っていましたが、実際は、受付後ろのエレベーター通路の右側を通り抜けると、その奥に目指すものはありました。
カウンター上に、SRゼミ本誌はどの大きさの冊子が置かれてあって、周囲に受験生らしき人は1人もいません。
 貸切状態の中、自分の番号を見つけた時、嬉しさより安堵感で胸がいっぱいになりました。
妻と握手をし、電話でお世話になった方達に連絡をしながら、合格の実感が湧いてきました。
 さて、皆さんは、合格されたら即開業しますか?
私の場合、2年以上の社会保険適用事業所での役員の経験がありましたので、実務の件はクリアし、合格発表日(11月1日) 翌月の12月1日に登録しました。
お客様ゼロ細かな実務経験皆無、資金もゼロ。
あるのは家族・友人の応援とこの体一つ。
つまり失うものは何もない!!熱望して勝ち取った合格ではないか。
開業しないで何とする!この精神でスタートを切りました

社労士事務所の経営
収益の柱を創る

 具体的にどんな分野で顧客開拓をし、安定収益を叩きだすか?
その答えが助成金でした。なぜ助成金か?
 世の中は、戦後最大級の不況の最中です。
社会保険労務士である前に、社労士事務所の経営者として、この助成金でどんなことができるのか、よく考えてみました。
私は、営業一筋できましたが、この環境下、セールスマンの最大の悩みは、売れないこと(この悩みは、経済環境がどうであれ、いつもつきまといますが……)です。
 そして、会社の営業部門が不振であれば、経営者が一番元気がないのです。
それなら、個別の会社だけでなく、中小企業に対して宿命的に、営業をかけていかなければならない大企業の営業部門は、同じ悩みを必ず持っていると考えました。
『新規開拓や既存客の深堀りには、相手にとって有効な情報の提供が不可欠だ。ここに助成金の情報を提供すれば喜んでもらえる。でも「こんな助成金があります」みたいな郵便配達的な取組みでなく、具体的な使い方、つまり営業のツール(道具)として、各会社に合う使い方の企画も併せて提供しよう、該当会社のセールスマンと一緒に回ろう、そして、会社の売上アップに貢献して、経営者やセールスマンに思いきり喜んでもらおう。』等の事業イメージが膨らんでいきました。
 我が事務所の経営戦略が確定しました。
あとは、最短距離を(明大ラグビーFWのごとく)走り抜けるだけです。

助成金情報の仕入れ
事業主の代理人

 助成金の情報は、職安に冊子が置いてあります。
そして、東京・飯田橋の職安には、専門の相談コーナーも設置されています。
書籍等も発行されていますので、情報収集は容易になっています。
また、東京には、申請を受け付ける地方事務所の本部もありますので、直接出向いてインタビューをされるのが良いと思います。
 私も、こういった機関や霞ヶ関の各官庁を回って、資料を集めました。
出てくる人はさまざま、対応もいろいろで、腹が立つようなこともあります。
そんなとき、私は、いつも我慢せず、不快感を示しました。
 なぜなら、助成金の多くは、雇用三事業です。
そして、財源を負担しているのは、社長さん(会社) です。
その社長さんの代理で、わざわざ出向いて話を聞きに来ているのに、きちんと説明しなかったり、態度の悪い人達には、世間の風を思い知ってもらいました。
お茶くらい出すのが当たり前、といつも思います。
窓口では、事業主としての当然の権利を行使するだけですから、私は、その事業主の代理人として、常に堂々とした態度で交渉するように心がけています。行動基準は、「依頼者の利益」です。

プロとしての仕事
制度設計のお手伝い

 情報はあふれていますが、何の策もなく提供するため、売上につながらないことがよくあります。
助成金の話も、そのいい例です。
開業当初、なかなか契約に結びつかず、かといって、見込客は、喜んで私の話を聞いています。
しかし、契約書は交わせません。その理由は?
 至極簡単なことでした。
つまり、最後の詰めであるクロージングが不発だったからでした。
どんな見込客でも、自分から契約したいとはなかなか言いません。
つまり、私オリジナルのクロージングの仕方を持っていなかったのです。
この致命的な問題が解決してからは、一気に契約の確率が上がりました。
 初回面談での契約、その場で着手金(契約金額の50%)を受領したこともあります。
成功報酬で行うアマチュア的アプローチ(責任回避の弱気の姿勢)から、プロフェッショナル(自分の仕事に全責任を持つ)なコンサルタントヘ脱皮することができた瞬間です。
 この助成金コンサルティングの世界では、成功報酬で取り組んでいる方がほとんどだということをよく聞きます。
つまり、「100万円の助成金の受給に成功したなら、その暁には何割下さい。」という仕事です。
私も、開業当初のごく短い期間(6ヵ月位)は、この考えで対応していました。
しかし、助成金の仕組みや本質を知るにつけ、この「何割下さい」という仕事が、プロとは到底呼べない、初歩的で低レベルな仕事だと認識するに至りました。
つまり、自分のコンサルティングに自信がないから、こんな弱気な仕事(出たら何割下さい)をやっていたわけです。
これでは、経営者にも低く見られます。
プロとして、診断結果を自信を持って、かつ分かりやすく説明し、毅然とした態度で仕事を受注する当方の条件を提示すること。
これが非常に重要だと思います。

(1) 仕事は助成金が出る出ないでなく、受給できる体制の確立で完了すること。
(2) 必ず契約書を交わし、着手金を受領後仕事にかかること。

 私は、現在この形で仕事をしていますが、不都合を感じたことはありません。
この条件で契約するかどうかは相手の自由ですので、不成立ならそれで営業が終了するだけです。
逆に、当方を信頼して契約し、着手金をお支払いいただける経営者は、大変質の良いお客様といえます。
1人の社会保険労務士が担当できるお客様の数は限られます。
ならば、質の良い会社をたくさん持つことが優良な事務所経営の要件でしょう。
この一連の3号業務に対し、40万円から100万円程度までの契約をして、着手金を払う会社は、我々が関与すべき顧客層ではないでしょうか?

見込客開拓の方法
具体的ツール

 見込客の前で、初回訪問時、何を話すか、どんな内容で契約を締結するか、等のことを経験し、研究することは大変重要です。
しかし、場数を踏み、自分自身のスキルをアップさせるためには、そのステージに登らなければなりません。
この見込客を創る活動は、最重要なテーマであり、かつ一番難しいことだと思います。
 具体的に、私は次の方法で創っています。

 (1)セミナー開催及び講師。
 (2)紹介を受ける。

 この2つが中心です。
やり方はいろいろあるでしょう(DM、飛込み、税理士との提携等)が、今後は、スタッフや予算に余裕が出てくれば順次行いたいと考えています。
 また、助成金診断のツールとして、インタビュー用アンケート及びその診断結果報告書、助成金申請書類の作成支援ソフト及び顧客管理ソフトを活用し、できるだけ多くの経営者に助成金の情報(自分の会社はどうなのか?)を提供することが有力な見込客の発見につながっています。
大切なのは、まずこの数でしょう。
そして、紹介をいただく先は、金融機関等の営業現場からでしょう。

金融機関との取組み・1
生命保険会社編

 金融ビッグバンが進み、金融界の営業部門は、逆風の中で仕事をしています。本当に大変です。
我々社労士業界の方が、営業は10倍以上ラクに顧客開拓できるでしょう。
特に、この生保業界の営業の厳しさは、群を抜いていると思います。
まず、顧客の元への最初のアプローチである面談のアポイントを取ることが、至難の業です。
アポイントを取る行為自体、かなりスキルが必要です。
 私は、ライフプランナーの方から、「とにかく面談し、お客様にメリットを与えること(助成金を受給してもらう)ができれば、かなりその後の営業がしやすくなる」と聞いていますので、助成金情報だけでなく、その過程で退職金の現状分析や今後の退職金はどの程度の債務になるかを説明し、「その資金準備ができているかどうか、プロであるライフプランナーに、この際よく見てもらいましょう」と提案します。
もちろん、タイミング等は彼らからサジェスチョン受けながら行います。
 また、就業規則を作成するときは、役員の就業規則や報酬規程、役員退職慰労金規程も作成し、ライフプランナー同席時、説明します。
税理士の節税及び事業の継承という切り口とは別に、社内規程の整備や退職金債務問題とその対応、ポイント制の退職金制度など我々の知恵をフル活用することでこれらの問題を提起し、「その解決法をライフプランナーと一緒に考えましょう、あるいは相談されたらどうでしょう」と提案します。
あくまでも、紹介元のビジネスがうまくいくように独善的にならないように打ち合わせてやることが重要です。
生保の営業マンとの付き合いでは、以上のようなことを日々考えながら、提携して活動しています。
 また、この時に気を付けなければならないのは、経営者は、我々の本を読んで得た知識や研修で覚えた一般論を求めているのではなく、「我が社ではどうすれば良いのか?」という具体的処方箋に対してフィーを支払ってくれるわけですから、分かりやすく、具体的で、相手の会社へのオーダーメイドの提案でなければ、成果は上がりません。
我々は、評論家ではなく実務家です。
経営者の貴重な時間や紹介元のライフプランナーを失望させるような、実のない時間を使わせないよう注意が必要です(面談が終わると、この点をいつも反省しています)。
 また、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付を活用した新しい賃金の提案が受け入れられれば、かなりの経費節減になりますので積立原資の一つができます。
いろいろと創意工夫を、ライフプランナーの方と共同で開発していくという姿勢が大事だといつも考えて、営業しています。

金融機関との取組み・2
損害保険会社編

 保険料率の自由化と外資との攻防、生保系損保の活動、販売チャンネルの再編成など、まさに黒船来航を思わせる波瀾が起きつつある損保業界は、これから非常にエキサイティングな世界です。
我々社労士とも、保険の給付という点で、仕事が似ています。
つまり、困っているときお金を運ぶところです。
 また、損保の有力な営業先の建設業界や車両をたくさん保有している会社は、労災事故や自動車事故、労災と自賠責保険との調整等、社労士の業務分野と深く関わり、かつ、この周辺分野を総合的にコンサルティングできる専門家は、ほとんどいません。
私は、助成金関係の読書以外で時間を割くのは、この分野です。
是非、助成金と労災関連を、二本柱で経営していきたいと考えています。
 さて、損保は、生保と違い90%以上の契約が代理店経由です。
その中でも、保険料の自由化(値下げ=減収)が経営に一番響くセールスマンを複数雇用している特級代理店さんの応援に対するニーズが、保険会社、代理店双方にあると思います。
相対的に損保契約の粗利益が減少すれば、事務コストの割に収益が高い契約(大口の火災保険契約、大きなフリート契約)や、系列生保の販売をしていくことがトレンドです。
ここで助成金を活用し、お客様にメリットを与えることができれば、シェアインすることや自社で代理店をやっていても、なんらかのビジネスチャンスが生まれるのではないでしょうか?
 また、生保編で書いたような、労務的側面からの退職金準備の提案ができれば、喜ばれるのではないかと思います。
そこで労災の知識が生かせれば、代理店さんからも保険会社さんからも、頼りになる社労士として認識してもらい、顧客の紹介につながります。
助成金の中でも、財形の制度を設計すれば、将来の日本版401Kへの足掛かりになるかもしれません。
 また、プロ代理店養成のための研修生制度があります。
意欲的な方と提携できれば、強力なパートナーになります。
損保業界は、我々の業務に即関わりますので、大手のうちの1社と親しくされることをお勧めします。

素晴らしき社労士業界
何を決断し、じっこうするか

 お客様のことを考え、突き詰めていくと、いろいろなアイデアが生まれます。
あとは、これを実行しながら、修正していけば、ゴールをゲットできます。
開業後、最初にすることは、何を専門にする社労士となるかを決めることです。
これはリサーチして、決めたら即実行しましょう。
他の業界で開業することを考えたら、今、社会保険労務士に吹く風は、順風そのものです。この風に乗るも良し、今の仕事を続けるも良し。
でも、足を踏み入れたときは、なんて素晴らしい業界だろうと感じるはずです。
 実務経験がなければ、先輩社労士に顧問料を払って、教わればいいではないですか。
営業が苦手ならば、営業のプロに顧問料を払って、紹介してもらえばいいではないですか。
生活費がなければ、アルバイトをすればいいではないですか。
右肩上がりのこの業界での苦労は、余りあるものをプレゼントしてくれると信じて私は、愉快に過ごしています。
 No.1からNo.4まで、独断と自分の経験を書いてみました。
すべて事実です。経験不足のところは、お許し下さい。
読者の皆さん、合格を祈っております!

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