雇用助成金の具体例 A

チャレンジ3号業務(その2)
特定社会保険労務士 竹内 睦 昭和34年生まれ。昭和57年明治大学経営学部卒業。同年大和証券鰍ノ入社。中小企業開拓を中心とするセールスマンとして第一歩を踏み出す。以来、外資系証券及ぴ生損保の営業を経験。現在,顧問先の営業支援を助成金活用によって新規開拓に結びつけるという独自の領域で活躍中。
助成金活用型→福利厚生リストラプラン 竹内 睦 助成金活用研究会会長
特定社会保険労務士
不況下の法人開拓/社労士の強みを生かせ
眠っているお金のかからない福利厚生プラン

 前回、社会保険労務士の業務分野の中で、 助成金を活用した経営支援ビジネスの可能性の広がりを説明しましたが、今回は、社会保険労務士事務所の経営者として、この助成金を活用し、新規開拓をし、スポット及び顧問契約に結び付ける上でアプローチしやすく、かつ、労務コンサルティングヘと導入しやすい助成金を取り上げたいと思います。
 現在の経済環境の中では、一般論として、 経営者は、あらゆる経営資源(ヒト・モノ・カネ)の再構築、いわゆるリストラを断行し、この経営資源からは、もはや策が尽きたと思われている経営者も多くいらっしゃることでしょう。
現に、この景気の悪さは相当なものとの認識は私にもあります。
しかし、我々社会保険労務士は、経営コンサルタントとして、お客様である経営者の利益を常に念頭に置きながら、業務改善の提案を行い、会社利益の創造を実現していかなければ、経営者から報酬をいただくことはできません。
この経済環境をお客様と共に嘆いていることは、事務所経営者としての我々の敗北を意味します。
以上の認識の上で、私が日々の営業活動の中で活用している3つの助成金について、そのアプローチからクロージングまでのプロセスを説明します。
 まず、このストーリーに活用する助成金を概説しましょう。
それぞれ中高年対策、家族介護、従業員の財産形成といった労務問題の解決において、制度導入時に資金負担がないことが共通点として挙げることができます。

高齢期就業準備奨励金
高齢期の職業生活に向けた準備休暇創設

 この就業準備奨励金とは、申請を行う当該事業主に継続して5年以上雇用されている45歳以上65歳未満の常用被保険者に対して、高齢期の職業生活に向けた準備を円滑に行わせるために、表1の諸条件を満たした準備制度を、労働協約又は就業規則により設けた事業主に支給される奨励金です。

表1 就業準備奨励金の受給要件
(1) 常用被保険者の数が10人以上であること。
(2) 労働協約又は就業規則により、60歳以上の定年を定めているか又は定年を定めていない事業主であること。
(3) 対象被保険者の申出により、連続した10日以上の有給休暇を与えること。
(4) 休暇中の賃金は、当該期間の通常業務に就いた場合に支払われる賃金以上であること。
(5) 運用計画を作成し、当該事業所の管轄安定所長の認定を受けること。

 この条件をクリアしている事業主に対しては、営業上スポット及び顧問契約に結び付ける上でかなり有利なポジションにいると理解して下さい。
つまり、この就業準備奨励金の支給額が、いわゆる3号業務を展開する上での報酬額の理論的裏付けとなります。
この奨励金の支給額は表2で確認して下さい。

表2
【企業規模別支給額】
規模 10〜29人 30〜99人 100〜299人 300人〜
金額 80万円 120万円 160万円 200万円
【対象被保険者の種別による支給額】
- 1ヵ月単位 1ヵ月未満
一般被保険者 6万円 3万円
短時間被保険者 3万円 1.5万円
支給対象期間は、10日以上3ヵ月以内を限度とするが、公共職業訓練を3ヵ月を超えて受講する場合にあっては、6ヵ月までの範囲内で当該訓練の実施期間に相当する期間を限度とする。

会社利益の創造とその活用法
就業準備奨励金の支給額からの展開

 制度設計をし、該当者が休暇を取れば、表2の支給額が会社に入ります。
我々が提案したプランにより、新しい会社利益が創造されたわけです。この利益は、社長さんの経営判断で使い道は自由です。
 常日頃、社員に給料・賞与を支払い、社会保険料を事業主負担分と併せて、強制的に銀行口座から引き落とされ、銀行借入に際しては、自宅を担保に取られ、借入に見合うだけ加入させられた銀行紹介の生命保険も掛け捨てで、解約したらほとんど戻らない。
経済環境最悪のこの時期、社長さんを取り巻く環境を考えて下さい。
会社利益の創造を実現したコンサルタントに対して、いつも支払ってばかりいる社長さんは、どのような感情を抱くでしょうか?
『FOR YOUR COMPANY』の営業スピリットが我々の行動の源となったとき、各種の提案に耳を傾けてくれるものと確信しています。
 表3は申請必要書類の一覧ですが、管轄により、かなりニュアンスが違いますので、事前に問い合わせをするのがよいと思います。
また、制度を作ってから2ヵ月以内の申請という期限がありますので、注意して下さい。

表3 就業準備奨励金申請必要書類
(1) 高齢期就業準備制度運用計画書
(2) 就業規則原本(準備制度を定めたもの)
(3) 労働者名簿
(4) 商業登記簿謄本
(5) 高齢期就業準備制度申請見込労働者名簿
その他管轄安定所長により相違がある

財産形成貯蓄活用助成金
社員が払い出す財形貯蓄に上乗せ給付される

 低金利時代が続く中、企業福祉の代表的な項目である社内預金は、相次ぐ金利引き下げとコスト削減の流れにより、廃止する企業が続出しています。
また、企業年金制度においても、適格年金、厚生年金基金、また中小企業退職金共済等の退職金制度を含めて、新しい福利厚生制度の再構築というテーマが、会社存続のための既存制度のスリム化と表裏の関係で、経営者の関心事となっています。
 しかし、既存の制度を変更すること、まして廃止するなどの変革は、オーナー社長といえども実行が難しく、なかなか手がつかないのが現状です。
いきなりこの分野に入っていくことは、いたずらに制度の混乱を招くだけでしょう。
 では、相手企業の実態を知り、分析をする上でアプローチしやすい福利厚生制度とは、どんなものが考えられるでしょうか?
私は、財形貯蓄制度の新たな提案をしています。
その理由は、導入コストがかからず、 社員に馴染みが深く、かつ、不人気のこの制度の名誉挽回策として、平成9年1月より財産形成貯蓄活用助成金制度が発足したからです。
 昭和46年以降、残高は下降線をたどっていますが、この助成金の導入により、かなり魅力のある福利厚生制度としてリニューアルされたと思います。
社員が支出した額に対し、事業主の支払った財形活用給付金の額により、財形活用助成金の支給額が決まります。
通常、表4の太い部分の金額で給付金規定を作成し、財産形成貯蓄活用給付金制度認定申請書にもこの金額を記入します。
 また、受給要件は表5のとおりです。
財産形成貯蓄活用給付金制度の設計は、右のフローチャートの手順で行います。
なお、 取扱先は各都道府県の雇用促進センターです。

表4 給付内容(中小企業の場合)
支出額 財形活用給付金支払額 助成金支給額
50万円以上
100万円未満
15,000円以上30,000円未満 15,000円
30,000円以上90,000円以下 30,000円
100万円以上
150万円未満
25,000円以上50,000円未満 25,000円
50,000円以上150,000円以下 50,000円
150以上 35,000円以上70,000円未満 35,000円
70,000円以上210,000円以下 70,000円

表5 受給要件
(1) 常時社員を雇用する事業主
(2) 財産形成貯蓄活用給付金規定の作成
(3) その社員が1年以上一般財形貯蓄を行っていること
(4) 特定事由の資金に充てるため、払出し・解約を行う場合
(5) 特定事由
- @育児〔新生児用品の購入費・レンタル費・育児休業期間中の養育費〕
A教育〔初年度納付金・受験料等〕
B介護〔介護休業期間中の介護費・介護機器等の購入費・レンタル費〕
C自己再開発〔教育訓練及び健康増進のための初年度納付金・受験料等〕

財形貯蓄の効用
どの金融機関を選択するか/労災事故へのリスクヘッジ

 この制度の導入により、資金が必要で解約する社員に対して、会社から給付金の提供が実現します。
この低金利の中、これだけ金利を生む金融商品はありません。
では、どこの金融機関の商品で一般財形を設計するか?
多くの企業は取引銀行で行っています。
しかし、重なる福利厚生制度の再設計を目指すのならば、損保財形を勧めます
 その理由は、財形貯蓄の残高の5倍の金額が、 傷害事故で死亡した場合に保険金として遺族に支払われるからです。
我々が対象とする中小企業は、労災事故に対して、政府の労災保険以外にさしたるリスクヘッジの対策をたてていません。
社員への補償の面だけでなく、被災した社員からの使用者責任を追及する損害賠償請求に対して、労働協約又は就業規則に定めた財形活用給付金規定等の作成財形活用給付金制度認定申請認定申請書、及ぴ、労働協約又は就業規則を雇用促進センターへも、本来きっちりとコンサルトすることが、 労災保険における唯一のプロである社会保険労務士の責務ではないかと思います。
 財形は社員個人の資産の話ですが、会社として財形貯蓄の制度がないと、社員は加入できません。
会社がこの給付金の制度を作らなければ、社員に解約時のプラスは発生しません。
導入コストなしのこの制度を、労災の話を含めて分かりやすく伝えることができれば、この過程で、特に車両を多く持っている会社や、労災事故の処理で困った経験のある社長さんに対して、労災に強い、頼りになる社会保険労務士として、アピールすることができます
 我々は、スポット及び顧問契約を社長さんと交わすことが目的であり、財形の制度設計は、その手段であることを意識してストーリーを組み立てることが必要です。

家族介護のための休業と勤務時間短縮制度
介護休業制度導入奨励金/介護勤務時間短縮等奨励金

 育児休業法の一部改正により、平成11年4月1日より、育児・介護休業法に基づく介護休業制度は、一律に事業主に義務付けられます。
現在、事業主には、育児・介護休業法に沿った介護休業制度及び介護のための勤務時間の短縮等の措置を設けるよう努めることが求められています。
そして、介護休業制度を早期に導入した事業主に対しては、以下の奨励金が支給されます。

表6
【奨励金の給付内容】
(1) 最初の対象介護休業者 75万円
(2) 2人目以降の介護休業者 20万円
(3) 勤務時間短縮等の措置を利用した社員が生じた時 40万円
【受給の要件及び必要書類】
(1) 就業規則等で育児・介護休業法に基づく介護休業制度を設けたこと
(2) 介護休業制度の認定を受けていること
(3) 介護休業制度により,社員が2週間以上介護休業を取得し又は勤務時間短縮等の措置を利用した時
(4) 対象となる社員は,休業開始の日までに1 年以上継続雇用していること
(5) 介護休業制度認定申請書
(6) 就業規則等(介護休業規定及び協定書含む)
(7) 介護休業制良導入奨励金・介護休業申出書の写し・対象労働者の労働者名簿・雇用保険被保険者資格取得等確認通知書の写し
※ 女性少年室→育児・介護休業法や奨励金の認定申請
※ 21世紀職業財団→奨励金の支給申請

介護休業の奨励金は,みそ汁のだしと同じこれがないと3号業務の契約に結び付かない

 介護休業の奨励金は、家族介護の対象者が生じないと受給できず、この制度設計だけをストレートに社長さんに進めても、まず契約できません。
 しかし、クロージングの時、社長さんにサインをいただくためには、必要不可欠の奨励金です。
その理由とは?
 こちらが提示するコンサルティング料金を値引きなしで通すための隠し味。
そんな役割で私は活用しています。つまり、「対象者が生じるかどうか分からないが、制度の認定を受けていないと、せっかく対象者が生じても受給できません。
この制度設計は、
 @介護休業の規定作成
 A協定書作成
 B監督署への届出
 C女性少年室への認定申請
といった作業が必要であり、面倒だがやっておけば、もしかしたら奨励金が受給できます。」と説明し、「次に挙げる見積り(下記参照)の中で、 この価格を通していただけるならば、介護の制度設計は価格に含めます。」とクロージングをかけます。
迷っている方も、ここで決めてくれる場合が結構

現在の問題点をインタビューによってあぷりだし、解決のプランを自信をもって提示する

 今回、説明しました助成金の共通点として、 次の3点が指摘できます。
 @必ず就業規則の変更や届出が発生する。
 A制度の導入にコストがかからない。
 B社員のためにという大義名分がたつ。
ここで、簡単な見積りを作ってみました。

○◇商事株式会社 御中                        助成金活用研究会
(1) 高齢期就業準備奨励金制度設計
(2) 財形貯蓄活用助成金制度設計
(3) 介護休業制度設計
(4) 上記(1)〜(3)の設計に伴う就業規則等の作成変更及び届出業務全般

 社員30人の会社であれば、
(1)より休暇取得者がでれば123万円
(3)より介護休業者及び勤務時間短縮の利用者が生じれば115万円
就業規則が古ければ全面見直し。
東京都社会保険労務士会の就業規則作成報酬は、規定で20万円です。
この見積りで、お客様と真剣勝負すると約2時間かかります。
ここで必ずクロージングします。
OKが出れば委託契約書を交わします。社判と委託契約書は必携です。
 助成金を活用した営業は、この真剣勝負の繰り返しです。
3号業務からのアプローチ。導入コストゼロ!福利厚生の再構築。
皆さんは、この見積りにいくらの価格を付けて提示しますか?

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