移動時間は労働時間に入るのか?

所定労働時間の前後に、仕事の目的地まで行くための、列車、自動車、船舶、航空機等の乗物に乗って移動している時間は、労働時間に該当するのでしょうか?
条件によって異なります。考え方の目安と事例詳細を以下にご紹介します。
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このコンテンツの目次
  • 労働時間に入る場合
  • 労働時間に入らない場合
  • 事例詳細

労働時間に入る場合

  • 時刻を指定して会社事務所に出勤するように指示されている場合
  • 移動中において会社から特段の用務を命じられているような場合
  • 車両の運転を命じられている場合
  • 帰社後に道具の洗浄や手入れ等が義務付けられているような場合
  • 所定労働時間内に次の目的地に移動する場合

労働時間に入らない場合

  • 当日の作業内容が決まっていない場合
  • 移動中の時間を自由に利用できるような場合
  • 会社事務所に立ち寄ったとしても、会社からの指示によらない場合
  • 自宅から現場に直行する場合、および、現場から自宅へ直帰する場合

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事例詳細

当社は、都内に本社を構える建築土木工事を業とする株式会社で、従業員は約30人程です。

当社が請け負う現場は、近隣地域が中心ではありますが、不況の折ですから、少しでも利益になるのであれば、多少遠い現場であっても、積極的に受託をするようにしております。

従業員は、担当する現場にかかわらず、まず会社事務所にいったん立ち寄り、その後、現場によって、単独、または班ごとに各現場に出向き、午前8時から現場で作業を開始することになっています。

そのため、遠方の現場を担当している場合には、他の従業員と比べて、相当早くに出発しなければならないこともありますので、現場によって不公平が生じないように、現場ごとの人員配置には気を配っているつもりです。

A社員

来週からの現場、遠いなぁ~。前橋の辺りだってよ。車で2時間はかかるなー。

B社員

車で2時間っすかーーー!! それはけっこう遠いっすねー。早起きも大変ですよねー。

A社員

今週までは、会社から車で30分くらいの現場だったからなぁ。それに比べると、ちょっとしんどいなぁ。

B社員

私も先月は、小田原の現場に行っていたんですけど、車で1時間半くらいはかかりましたね。別に出張日当が貰えたから、まぁよかったんですけどね。

A社員

でもさー、出張日当っていったって、1日1,000円だろ? 朝早く出て、夜遅く帰ってくるんだから、もう少し貰ってもいいんじゃねぇかと思うけどね。

このようなやり取りがありつつも、A社員は約1ヶ月にわたり、毎日前橋の現場まで出向いて作業を行いました。

A社員

あぁ~、やっと前橋の現場、終わったぜ。本当は、2週間の予定だったんだけど、もう2週間延長になって、大変だったわ。

B社員

えぇ~、そりゃ大変でしたねー。でも、出張日当も2倍貰えてよかったじゃないですか。

A社員

何言ってんだよ。そりゃ、多少の足しにはなるけど、もともとの出張日当が安いんだからさぁ~。

B社員

そうですね。出張日当もよいですけど、どうせなら、現場まで行く時間と、帰る時間の時給の方がよいですよね?

A社員

そうだなぁー。今まで、そんなこと思いもよらなかったけど、確かにお前の言う通りだなー。

B社員

そうなんですけど、・・・でも、そんなこと会社に言ったら怒られちゃいますよ。

A社員

いやいや、朝早くから、こんなに遠方の現場まで出向いたんだし、この移動時間は現場作業には必要不可欠なものだから、業務と同じなんじゃないか?

B社員

どうなんですかねー。僕にはさっぱりわかりませーん。でも時給にしてくれたら嬉しいなー!

A社員

よっしゃ!! 俺さ、明日、労働基準監督署に行って、移動時間って勤務時間になるのかどうか聞いてくるわ。

このように、出張等で仕事の目的地まで赴くため、列車、自動車、船舶、航空機等の乗物に乗って移動している時間は、労働時間になるのでしょうか?

今回のような事例において、裁判所は、次のように判示しています。

建築現場で職務に就く社員の所定就業時間(現場での作業開始時刻から終了時刻まで)は、午前8時から午後6時までとされており、実際もそのように運用されていたこと、社員は、出勤の際、会社事務所に立ち寄り、車両により単独、または複数で建築現場に向かっていたこと、この車両による移動は、会社が命じたものではなく、車両運転者、集合時刻等も移動者の間で任意に定めていたことが認められる。

これらの事実によれば、社員が行った会社事務所と工事現場との往復は、通勤としての性格を多分に有するものであり、これに要した時間は、労働時間、すなわち、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間に当たらないものというべきである。

また、社員は、当日の作業内容が決まっていない場合は、会社事務所において会社から当日の作業内容を指示されていたが、前日までに当日の作業内容が決まっていたことが多く、この場合は当日に改めて作業内容につき会社事務所において指示されず、その必要もなかったことが認められ、これらの事実によれば、会社事務所と工事現場との往復に要した時間が労働時間であるとする社員の主張は採用することができない。

飲み会

つまり、出勤の際に、会社事務所に立ち寄ったとしても、当日の作業内容について、改めて会社事務所において指示されず、その必要もなく、その後、車で単独、または複数で現場に出向いていたとしても、その車による移動も会社が命じたものではなく、集合時刻が何時で、誰が運転するのか等についても、社員の間で任意に定められており、移動中も、道沿いのコンビニに入る等、その時間を自由に利用できるのであれば、労働からの解放が保障されているといえるため、移動時間は労働時間ではないということです。

移動時間が労働時間に該当することもある

一方で、例えば、建築現場に出向く前に、時刻を指定して会社事務所に出勤するように指示されていると評価できるような状況があり、その後の車両による移動時間も、上司と組みになって、打ち合わせなり、指示に基づいて現場に赴いているような場合や、また作業終了後には会社事務所に戻ることが原則化している状況があって、帰社後には道具の洗浄等が義務付けられているような場合には、例え移動時間であっても、労働時間と解される可能性が高まります。(東京地判H20.2.22 総設事件)

その他にも、例えば、移動中において、物品の監視・管理や商品あるいは現金、貴金属などの運搬など、会社から特段の用務を命じられているような場合は、それ自体が業務であり、そこに労働からの解放、行動の自由性はありませんから、その移動中の時間は、会社の指揮命令下におかれている時間ということになり、労働時間に該当するということになります。

なお、これまで説明してきたのは、所定就業時間の前後の移動時間についてでしたが、所定就業時間中の移動時間の場合には、社員は、直ちに次の目的地に移動することが求められていることが通常であり、労働からの解放が保障されているとは言えませんから、もちろん労働時間ということになります。

この他、移動が伴うものも含めて、社員が事業場外で業務を行なったりや出張したりする場合において「労働時間を算定しがたいとき」には、所定労働時間労働したものとみなすという、「事業場外のみなし労働時間制」があります。

「事業場外のみなし労働時間制」を用いる場面があるようでしたら、就業規則に規定があるかどうか、今一度ご確認ください。

移動時間が労働時間に該当するか否かは、その状況によって異なります。
労働時間に関する正しい考え方については、以下のセミナーで詳細を解説しています。
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竹内社労士事務所の代表である竹内が、最新の法改正や労働事情を踏まえ、2021年度版に改訂した最強の就業規則をベースに、法的根拠やトラブル事例、判例などを豊富に交え、会社を守るポイントをわかりやすく解説します。

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