セクハラをした社員の普通解雇は有効?

セクハラをした社員の普通解雇は有効?

セクハラをした社員を普通解雇し、社員がそれを不服として争った場合、普通解雇は有効なのでしょうか?

→ 事案によりますが、ある判決では普通解雇が有効とされました。セクハラの4類型も含め、以下に詳細を説明します。

目 次

  • 普通解雇の有効性
  • セクハラの4類型
  • 事例詳細

普通解雇の有効性

  • ある判決では、セクハラを受けた社員たちの苦痛の度合いや対応の仕方、会社の対応、セクハラをした社員の言動を勘案し、普通解雇を有効とした

セクハラの4類型

  • 刑法レベル、民放レベル、均等法レベル、就業規則レベルに区分される
  • 上記の区分に応じた対応が必要

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事例詳細

当社は、東京に本社を構える自動車関連部品の販売を主とした会社です。本社の他、5ヵ所の支店があり、従業員規模は約300人になります。

この度の人事異動で、福岡支店の営業課長のAさんが東京本社に単身赴任してまいりました。

Aさんは、まだ40歳と若く、また能力も評価されており、今回の異動により、20名の部下を有するマーケティング室長に抜擢されました。

当社は、比較的女性が多いため、セクハラ等のない職場環境の維持・改善に努めており、各管理職を現場の責任者として位置づけていました。

前任地でも管理職であったAさんは、セクハラ行為の問題性を十分認識し、セクハラ行為のあった部下に対して退職勧奨を行うなど、率先して職場環境の改善に取り組んでいました。

ところが、Aさんが東京本社に赴任して数ヵ月経った頃、部下の女性社員数名が、Aさんからセクハラを受けているとの噂が、人事部長の耳に入りました。

「君たちが、Aさんからセクハラを受けているという話を耳にしたんですが、事実ですか?会社としても皆さんの職場環境が悪くなるようなことがあるのなら、直ちに改善する必要があると思っています。話しにくいとは思いますが、皆さんに迷惑が掛かるようなことはしませんのでお話しして頂けませんか。」

「・・・はい、人事部長。・・・実は。Aさんには何回かお食事に誘われたことがあります。」

「あのーーー部長、私もなんです。Aさんからは私も何度か食事に誘われていました。」

「私だってたくさん誘われてます!!お茶の誘いも含めたら、数えられないくらいです。」

「そうですね・・・。私も、お茶のお誘いを含めたら、本当に数え切れないくらいですね。」

「そうですかーーー。それで皆さん、そのAさんからの誘いには、どう対応したのですか。」

「私は、何とか口実をつけてその都度断っていますが、毎回断るのも心苦しくて・・・。」

「そうですねーーー。私もです。A室長と2人きりになるのは、ちょっと避けたいですね。」

「A室長からの発言やメールの内容は結構露骨なので、2人きりになるのは避けたいです。」

「そうですかーーー。Aさんは、皆さんにどのような発言やメールを送ってきたのですか。」

「私には、『今すぐにでも貴方を抱きたい。』っていうメールが来ました。ちょっと怖いです。」

「私は、仕事のことで個人面談がしたいって応接室に呼ばれて、『僕はずっとアプローチしているのに、君は全然相手にしてくれないね。』って言われたり、私の身体をなぞるような仕草をしながら、『グラマーだね。』って言われたりしました。」

「私なんか、『今度、僕と一緒に出張するように。』って言われました。その後、『2人で宿に泊まろうよ。』って・・・。」

「そうですか。これは問題ですねーーー。会社としては、今回の件について、すぐに対応をとるようにします。協力してくれてありがとう。また何かあったら、すぐに報告して下さい。」

面談終了後、人事部長は常務に報告の上、直ちにAさんを呼出して、常務、人事部長、そしてAさんの3人で面談をすることになりました。

Aさんは、事実について一部認めたものの、他については否定したり沈黙したりして、デートや部下を同伴しての出張も結局は実現していないなどと釈明しました。

会社は、Aさんに反省の色が見られないこともあり、その後、就業規則に則り、Aさんを普通解雇とすることに決定しました。その後、Aさんは裁判所に訴えを起こします。

セクハラ

判決では、Aさんの各発言は、直接的で露骨な性的言動であることは明らかで、女性社員らはいずれもその対応に苦慮し、苦痛を感じていたものであり、Aさんも女性社員にことごとく断られているのだから、少なくとも歓迎されていないことは認識できなければならないと指摘しました。

また、Aさんの地位、従前からの会社の取り組みとその中でAさんが置かれていた立場、過去にAさんがセクハラ行為をした部下に退職勧奨をした経験も踏まえ、自身の言動の問題性を十分認識し得る立場であったこと等を考慮すると、会社がAさんについて、管理職としてのみならず、従業員としても適格性を欠くと判断したことには相当の理由があるとして、解雇を有効としました。

さて、今回のケースも含め、セクハラと言っても、その態様は様々です。

程度ごとに整理すると、

  1. 犯罪行為論(刑法レベル:強姦、強制わいせつ等)
  2. 不法行為論(民法レベル:着衣の上から臀部を触る等)
  3. 労働行政指導論(均等法レベル:職場で性的言動をする、執拗に食事に誘う等)
  4. 企業秩序論(就業規則レベル:おばさん、女の子と呼ぶ等)

これらの4つに区分できます。

このうち、使用者に厳正な対応を求められるのは、3.の均等法レベル、及び4.の就業規則レベルのものですが、これについて使用者は、セクハラの予防措置を講ずる義務が課せられております。

なお、1.のような事案については、懲戒解雇も含めた労働契約の解消しかありません。

2.であれば、強制わいせつ事件にはならないまでも、不法行為は成立すると考えられます。

しかし、初犯であれば、解雇による労働契約の解消は困難ですので、降職・降格を上限とした懲戒処分を行うことになりますが、実務では退職届を提出してもらう方向で対応をすることになります。

3.4.のレベルでは、注意・指導を与えて、本人に改善が見られない場合には、譴責等の懲戒処分を行い、さらに教育していくことになります。

また、配転が可能な会社であれば、被害者と加害者を引き離すための人事異動も検討することになりますが、その場合、どんなに有能な従業員であっても、加害者を配転することが原則です。

被害者を我慢させることだけは、絶対に避けることが肝要と言えます。


ハラスメントのトラブル

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