賞与支給時の在籍要件はどこまで認められるか?

賞与支給時の在籍要件はどこまで認められるか?

労働組合との交渉で賞与の支給日が遅れ、支給日を迎えず退職した社員にも、賞与を支払わなければならないのでしょうか?

→ 事案にもよりますが、給与規程で定められていた支給日以前に在籍していた者に賞与の支払い義務があると判断された例があります。

目 次

  • 賞与支給の要件
  • 事例詳細

賞与支給の要件

  • 多くの場合、「支給日に在籍していることが賞与の支給要件のひとつである」と就業規則に定めてあれば、その規定は有効
  • ただし、会社と労働組合の交渉の結果、賞与の支給日が遅れた場合に、支給日を変更したときには変更日における在籍要件を満たす必要があるといった慣行がないのであれば、給与規程で定められていた支給日以前に在籍していた者には、賞与の支払い義務がある

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事例詳細

小規模の流通業を営むA社に勤めるB社員は、10月に入り会社を辞めようかと悩んでいました。

そこでB社員は、同僚のC社員に相談してみることにしました。

「まったく、馬鹿だなぁBは。賃金規程で支給日に在籍していれば賞与を支給するとあるのだから、それまで会社にいて、それから辞めればいいじゃん。いつも12月5日に賞与が出ているんだから、もらってからにしたら?」

「確かにそうだな…。もらえるものはもらってから辞めた方が得だもんな!」

C社員のアドバイスを踏まえ、B社員は会社に対し、今年の12月20日をもって退職すると辞表を出してしまいました。

辞表を受け取った上司は引き留めるまでもないと判断し、辞表を受理、退職を承認しました。

ところでA社には、社員のほとんどが加入する労働組合があり、昇給や賞与については必ず団体交渉で決めてきました。

A社と労働組合は協調的な関係を形成してきましたから、B社員は12月5日までには妥結して賞与がもらえるだろうと考えていましたが、B社員が辞める時に限って、12月5日になっても交渉は妥結することがありませんでした。

B社員はだんだんと心配になってきましたが、交渉は進展しないまま、ついに退職日の前日になってしまいました。

心配になったB社員は、総務部長のところに行き、話を聞いてみました。

「あのー、総務部長、私は明日で退職するのですが、明日までに決まらなければ私の賞与はどうなるのでしょうか?」

「確かにあなたは明日で辞めることになっていますね。当社の賃金規程では、支給日に在籍していなければ賞与は払わない規定ですから、Bさんに賞与は支給できません。いままで退職した方にもそうしてきているし、組合から文句を言われたこともありませんよ。」

B社員は驚き、返す言葉もなく引き下がってしまいました。

結局、賞与の支給額が妥結したのは12月25日だったためB社員は賞与をもらうことはできませんでした。その後B社員は、元同僚のC社員にたまたま会って愚痴をこぼしたところ、C社員はなんと、

「君はほんとにわかってないな。賞与支給日に在籍している者に限るといっても、支給日が伸びたのだからもらえるはずだろ。なんで総務部長にもっと強く言わなかったんだよ」

と言われてしましました。

賞与支給の要件は?

賞与

さて、C社員が言うことは正しいのでしょうか?賞与の支給に関しては、賞与を労働の対価としてとらえたうえで、支給対象時に在籍しない従業員に対しても支払い義務があるとする判例(日本ルセル事件 S49.8.27 東京高裁)がありますが、多くの場合、賞与の支給要件として支給日に在籍していることと就業規則に定めてあれば、その規定を有効としています。(大和銀行事件 S57.10.7 最高裁他)

しかし、ニプロ医工事件(S59.8.28 東京高裁)では、会社の給与規程では6月支給と定めかつ過去にも6月29日ないし30日に支払っていたものの、ある年については会社と労働組合の交渉の結果、支給日が9月13日となり、その結果9月13日より前に退職した者に賞与が支払われなかったことについて、“給与規程で支給月が定められ、かつ労使間で了承されていた6月中の日をもって支給日とし、その支給日より前に退職する場合に限り合理性を有する”と判断し、9月13日より前に退職した者についての賞与支払い義務を認めました。これに照らし合わせれば、A社の事例では、支給日が変更となった場合についても在籍要件を適用する旨の規定が就業規則にあるかどうか、並びに慣行がどの程度認められるかが問題になると考えられます。


賃金・退職金のトラブル

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