固定残業手当を控除することはできる?

固定残業手当を毎月支払っている場合、欠勤した日について固定残業手当を控除してもいいのですか?
欠勤に対して固定残業手当を日額に分割して控除することは、1日毎に残業手当を設定しているのと同じだと解される可能性があることからも、欠勤日について固定残業手当を控除しないことが一般的です。
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このコンテンツの目次
  • 固定残業手当とは
  • 事例詳細

固定残業手当とは

  • 一定の時間外労働時間の時間外手当を毎月固定払いすることとして、実際の時間外労働がそれを下回っても減額せず、上回った場合には差額を支払うというもの。
  • 欠勤した場合に、固定残業手当を控除するのは、あまり一般的ではない。

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事例詳細

A社員

総務課長、今月の給与なんですけど、先月に比べて少ないのですが、どういうことでしょうか?

総務課長

Aさんは今月3日間欠勤していますからね、その分が控除されているのですよ。

A社員

基本給が控除されるのは分かるんですが、固定残業手当も減額されているんです。

総務課長

固定残業手当が減額されることについて、何か問題がありますか? 3日欠勤したからですよ。

A社員

欠勤ですので、本来勤務すべき所定労働時間に対する賃金が控除されるのは分かるのですが、固定残業手当は所定外労働に対しての賃金なので、欠勤控除されるのはどうなのかと思いまして。

総務課長

ノーワークノーペイなんだから、固定残業手当も欠勤控除の対象になるのは当然だと思いますよ。

さて、欠勤した場合、固定残業手当も控除の対象とすることはできるのでしょうか。

欠勤で固定残業手当を控除するのは一般的ではない

固定残業手当とは、一定の時間外労働時間(例えば月30時間等)の時間外手当を毎月固定払いすることとして、実際の時間外労働がそれを下回っても減額せず、上回った場合には、差額を支払うというものです。

また、A社員が言うように、固定残業手当は所定外労働に対して支払われるものですから、欠勤した反動で、別の所定労働日に時間外労働が発生することも考えられますので、欠勤した場合に、固定残業手当を控除するのは、あまり一般的ではありません。

しかし、欠勤控除をすることによって、労基法所定の割増賃金を下回る等の法違反が生ずるのであればともかく、そうでなければ、欠勤控除を前提とする固定残業手当も有効と考えられます。

例えば、固定残業手当が5万円で、所定労働日数が月20日だとすると、4日欠勤した場合は、5万円÷20日×4日=1万円が控除され、4万円の固定残業手当が支払われることになりますが、当該月における実際の時間外労働時間数が、4万円の時間外手当を超える程度に達していた場合には、控除後の固定残業手当では不足することになってしまいます。

そのため、こうした場合には固定残業手当を控除することができないことになり、仮に控除するとしても、控除後の固定残業手当との差額を別途支払う必要が生じます。

つまり、欠勤控除できる場面とは、当該月の実際の時間外労働時間数が少なく、固定残業手当の金額に対して余裕がある場合に限られることになります。


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固定残業手当の主旨を考える

また、固定残業手当の主旨に即して適切かどうかという問題もあります。つまり、固定残業手当とは、実際の時間外労働に関係なく、一定の時間外労働に対する時間外手当を毎月固定払いするものですが、日々の時間外労働の長短に関係なく、月間の時間外労働に対応して設定しているのが通常です。

しかし、欠勤に対して、固定残業手当を日額に分割して控除するとなると、1日毎に残業手当を設定しているのと同じだと解される可能性があります。具体的には、月20時間相当の固定残業手当を支給しており、月の所定労働日数が20日の場合に、1日欠勤すれば固定残業手当も1日分を控除するとすれば、1日あたり1時間を超える残業をした場合は、日ごとに固定残業手当とは別に残業代を支払うという解釈にもなりかねません。

もちろん、固定残業手当は、月間の時間外労働時間に対応して設定しているものですから、欠勤があった場合は、固定残業手当の額が法令に反しない範囲で減額されるというだけであって、固定残業手当が1日毎の時間外労働時間に対応しているという結論に直結するとは考えにくいのですが、そうした議論を呼ぶ余地はあります。

そのため、欠勤があっても、固定残業手当を控除しないのが一般的です。

ただし、極端な例として、1ヶ月間全く就労していない場合、基本給や他の手当は控除されて支払われない一方で、固定残業手当が支払われるのは適切ではありませんから、このような場合は固定残業手当も支払わない旨を定めておけば支払う必要はありません。

また、固定残業手当を欠勤控除する場合でも、それが適用される欠勤日数につき、例えば月の所定労働日数の半分以上に及んだ場合は、控除の対象とするといった方法も考えられると思います。

ただし、あまり細かく分割すれば、時間外手当を法定通りに支払うという原則に近づき、固定残業手当の主旨から遠ざかるものと思いますので、その点には留意する必要があると思います。

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