台風で出張先から帰れず休んだ日の賃金は?

台風で出張先から帰れず休んだ日の賃金は?

台風や災害、交通ストなどで社員が休業した場合、賃金を支払わなければならないのでしょうか?

→ 「労使双方の責めに帰すべからざる休業」のため、労務提供のない日や時間に賃金を支払わなくても、法違反の問題は生じません。

目 次

  • 民法による原則
  • 組合との交渉の留意点
  • 事例詳細

民法による原則

  • 台風や災害による休業は、民法第536条第1項の「両当事者の責めに帰さない債務の不履行」として、労使双方の責めに帰すべからざる休業と取り扱う
  • したがって、ノーワーク・ノーペイの原則により、労務提供のない日や時間については賃金を支払わなくとも法違反の問題は生じない

組合との交渉の留意点

  • 組合との団体交渉でもめた場合は、台風で余分に泊まった場合の宿泊料を会社で持つ他、皆勤手当や人事考課上、不利な取り扱いをしないなどを提案する
  • それでもなお、組合が賃金支払に固執し要求してきたとしても、会社に分がある争いになると思われるので、要求は呑まずに放っておくのがよい

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事例詳細

組合から困った要求が・・・

テレビのニュースを見ていると、沖縄や九州で台風が猛威を振るっていたようですね。そんな時、ある社長さんから次のような相談を受けました。

「うちの会社に労働者の権利ということで、何でもかんでも要求をしてくる組合ができて困っているのだが、先日も組合の書記長が沖縄に出張に行ったとき、ちょうど折り悪く大きな台風にぶつかって、出張先での仕事が終わった後に、3日間飛行機が飛ばずに、沖縄で缶詰になり東京に帰って来れなかった。私は、普段の行いが悪いからそんな目に合うのだと内心思っていたら、この3日間は、会社の命令で沖縄に出張に行ったから帰れなかったので自分に責任はない。したがって、その間の賃金は通常通り支払えと私に要求してきた。確かに、そうかもしれないが、台風にぶつかったのは、今回の場合、事前に会社が予測できた訳ではなかったので、会社の責任ではないし、組合の言うとおり、労働日として賃金を払うべきなのか、あるいは休日として取り扱っても構わないのか分からない。どう扱うべきか教えて欲しい。」

とのことでした。

労使双方の責めに帰すべからざる休業?

このような場合、結論としては従業員の出勤すべき労働日とも、その義務の無い休日とも言えず、労使双方の責めに帰すべからざる休業と考えるのが、最も妥当だと思われます。

台風

原因が台風という不可抗力のものですから、従業員としても予定通り帰京して、所定の勤務に就きたくてもできなかったというのは事実ですが、一方、会社側としてもこの場合「事業主の責めに帰すべき事由による休業」として労働基準法第26条に規定する休業手当の支払い義務があるとされ、平均賃金の60パーセント以上を支払う休業とされるのは不満でしょう。

また、民法第536条2項の危険負担の問題として、出張を命じたのは会社だから、債権者(会社)の責めに帰すべき事由として賃金の100パーセントを支払うという結論はもっと納得できないと思われます。

ということで、このような場合、民法第536条1項の「両当事者の責めに帰さない債務の不履行」の例に習って、労使双方の責めに帰すべからざる休業として取り扱うのが妥当ということになります。

同様のケースとして、全面的交通ストによる出勤不能や、東北大震災のときのような広範な交通マヒなどがあります。

実際に従業員に労務の提供がないのは事実ですから、ノーワーク・ノーペイの原則により、働かなかった日や時間については賃金を支払わなくとも法違反の問題は生じないといえます。

では、具体的な対応策は?

しかしながら、上記のようなことを団体交渉で労働組合に回答すると、組合は大騒ぎをするでしょう。

大騒ぎをされたからといって組合の主張や要求を呑む必要はないと思われますが、この程度のことで無駄な時間を組合と浪費するのも会社にとって益の無いことです。

どの程度で組合と折り合いをつけるかという問題に関しては、このケースなら、あくまで上記結論で押し通したうえで、そうはいっても沖縄で缶詰状態の3日間過ごしたわけですから、(実際にはそうでないかもしれませんが)その宿泊料を会社で持つ他、皆勤手当や人事考課上、不利な取り扱いをしないなどの配慮をするということを組合に提案して様子を見るのがよいでしょう。

それでも、尚、組合が100パーセントの賃金支払に固執し要求してくるのであれば、金額がわずかなので組合が本気になって何か具体的な行動に出てくるとは思えませんし、仮にそうなっても理屈は会社に分がある争いになると思われますので、組合の要求は呑まずに放っておくのがよいと思います。

一番悪いのは、騒げば要求が通るという実体験を組合にさせることです。特に、組合が結成された初期の場合は、この点に気をつけて組合と対応をすべきです。


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