待機時間は労働時間と判断されるか?

待機時間は労働時間と判断されるか?

タクシーの運転手の待機している場所が、会社指定の場所以外だという理由で、その待機時間の賃金を支払わなくてもよいのでしょうか?

→ 会社指定の場所以外であっても、会社の指揮命令・指揮監督の下におかれている時間であり、その待機時間も労働時間として判断されます。

目 次

  • 待機時間の労働時間性判断の基準
  • 事例詳細

待機時間の労働時間性判断の基準

  • 実際に業務をしていない時間であっても、労働から完全に離れることが保障されていない限り労基法上の労働時間にあたる
  • 労働契約上の役務の提供が義務付けられていれば、労働時間にあたる

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事例詳細

○×タクシー会社では、運行日報とタコグラフで労働時間の集計を行っています。今月も集計したところ、やはりAさんは懲りずに会社が指定していない場所で客待ち(待機)をしていたようです。

「Aさん、何度も言ってるけど、△駅のロータリーは待機中のタクシーで行列になってるんだから、きちんと会社が指定してる場所で待機してください。」

「すいませ~ん。でも△駅近くでお客さんを降ろしたときは、そのまま△駅で待機してた方がいいんじゃないかと思って。」

「その場合であっても、△駅は待機時間が長くなって、売上が上がりにくいから、指定場所まで移動して待機してください。」

「はいはい、わかりました。それよりも、待機時間が30分を超えるとその時間の給与がいつも支払われてないんですけど。」

「指定場所以外での30分以上の待機は労働時間ではないから給与は出ないですよ。」

「それおかしいでしょ。いつでもすぐ車を回せるようにしてるんだから、待機時間も労働時間でしょ。」

「Aさんも知ってる通り、Aさんも加入している社内組合と昔何度も協議を重ねて、待機時間については労働協約で定めてるんですよ。待機時間が労働時間かそうでないかは規定通りに取り扱っています。」

「労働協約で規定があるからって、指定場所以外での30分以上の待機時間は労働時間じゃないっていうのはおかしいと思うんですよね。」

その後、Aさんは10年ほど勤続して退職しました。そして退職後、会社に対して、指定場所以外での客待ち待機時間分の賃金が未払いであるとして、その支払いを求める訴訟を提起しました。

裁判所の判断は?

本件について裁判所は、

  1. 「タクシーに乗車して客待ち待機している時間は、これが30分を超えるものであっても、その時間は客待ち待機している時間であることに変わりはなく、被告(会社)からの具体的指揮命令があれば、直ちに原告(本人)らはその命令に従わなければならず、また原告らは労働の提供ができる状態にあったのであるから、30分を超える客待ち待機をしている時間が、被告の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下におかれている時間であることは明らかといわざるを得ない。」
  2. 「労働協約の規定があったとしても、被告の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機時間が労働基準法上の労働時間に該当しなくなるわけではない。」
  3. 「労働時間として否定されるほど、あるいは、およそ労働と認められないほどの信義則違反が原告らにあることは認められない。」

過去の判例は?

待機時間について、最高裁まで争われた事件は、三菱重工業長崎造船所事件(最一小判 平12.3.9)、大星ビル管理事件(最一小判 平14.2.28)、大林ファシリティーズ事件(最二小判 平19.10.19)等がありますが、待機時間は「実際に業務をしていない時間であっても、労働から完全に離れることが保障されていない限り労基法上の労働時間にあたる」という基準と「労働契約上の役務の提供が義務付けられているかどうか」という基準を用いて労働時間性を判断しています。

本件では、会社の指揮命令を無視した会社指定場所以外の場所での30分超える客待ち待機についても、「適正な手続きを経て懲戒処分を受けることがあるとしても、その時間は喫茶店等に入ってサボっている時間でもなく、労働提供が可能な状態である時間であるし、労働時間として否定されるほど、あるいは、およそ労働とは認められないほどの信義則違反があることは認められない」ことから労働時間として認定されています。

今後、待機時間を労働時間か休憩時間かを検討される際は、これらの判例を参考にされると良いでしょう。


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