年休の時季指定義務に伴う制度変更について

年次有給休暇を労働者に取得させるため、会社の制度を変更することはできるのでしょうか?
付与日を統一することや夏季休暇を廃止することが考えられます。夏季休暇を廃止することは不利益変更にあたるので、個別に同意を取ることが望ましいです。
このコンテンツの目次
  • 年次有給休暇付与日の統一
  • 夏季休暇を廃止する場合
  • 事例詳細

年次有給休暇付与日の統一

  • 通達に記載の2つの要件を満たすのであれば、付与日を統一したときに個人差が生じたとしても差し支えない
  • 出勤率については、統一後の付与日から従来の付与日前の期間を全て出勤したとみなした場合、8割を超えているかどうかで判断する

夏季休暇を廃止する場合

  • 夏季休暇が廃止となることは不利益変更の問題になるので、個別同意が必要
  • 従業員への説明の機会を設け、疑問点の解消を図ったり、不利益に対しての代償措置(アニバーサリー休暇の新設)等を講じることは有効

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事例詳細

当社は、ITサービスを主とした20名程度の中小企業です。労働基準法が改正され、2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要(「年次有給休暇の時季指定義務」といいます)となったことから、当社でも対策を立て、まずは制度案を全体会議で周知することにしました。

総務部長

皆さんもご存じの通り、2019年4月1日より年次有給休暇についての法改正があります。当社としては、法令を遵守すべく、3つの運用を検討しています。
まず、①入社日を基準に年次有給休暇の付与を行っていましたが、基準日を設け一斉に付与することにします。もちろん、法律を下回ることはしません。
次に、②例年8月の3日間は、夏季休暇としておりましたが、夏季休暇を廃止し、その期間は、労使協定による年次有給休暇の計画的付与を行います。
最後に、③夏季休暇廃止の代わりに、アニバーサリー休暇を2日間設けますので、自由に取得してよいものとします。意見がある方はどうぞ。

A社員

部長、基準日によっては、かなり得する人がいると思いますが、差があってもいいんでしょうか。

B社員

僕は、現時点では、出勤率が7割程度です。①に変更の場合はどうなるんでしょうか。

C社員

夏季休暇3日とアニバーサリー休暇1日では、結局休暇が1日減るので不利益じゃないですか。

さて、これらの質問については、どのように取り扱われるのでしょうか。

年休付与の基準日を設けるとき

まず、A社員の質問について、法律通りの付与を行っていれば、他の労働者との有利不利は発生しませんが、基準日を統一する場合、入社日によっては、有利不利が生じることとなります。

この点、特に法律上、取り決めがされているわけではありませんが、通達上、次のような取り扱いとなっております。

年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
  1. 斉一的取扱いにより法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること
  2. 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること

つまり、1.と2.を満たすのであれば、個人差が生じたとしても差し支えないということになります。

出勤率8割の判断

そして、B社員の質問について、付与の対象となるかどうかは、統一後の付与日から従来の付与日前の期間を全て出勤したとみなした場合、出勤率が8割を超えているかどうかで判断することとなります。

夏季休暇の廃止したいときには?

次に、C社員の発言について、確かに夏季休暇が廃止となることは不利益変更の問題になりますので、個別同意が必要です。

そして一部の労働者の個別同意が得られない場合には、就業規則の変更により、同意しない労働者に対しても、変更後の労働条件を適用させることは可能です。

しかし、同意が得られず、争いとなった場合、当該変更の合理性が求められ、労働者の不利益変更の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他就業規則変更にかかる事情に照らし判断されることになります。

なお、今回のケースでは、夏季休暇の廃止自体は不利益変更ではありますが、一方、アニバーサリー休暇の導入により、休暇取得時期の自由の幅が広がり、休日に隣接した労働日に取得することで連続した休みにすることも容易となりますので、実際に被る不利益の程度は低いと考えられ、制度変更の趣旨や目的をしっかり説明して進めることで、変更の合理性が認められる余地はあると考えます。

しかし、不要なトラブルを避けるためには個別同意を得るに越したことはありませんので、従業員への説明の機会を設け、疑問点の解消を図ったり、不利益に対しての代償措置(アニバーサリー休暇の新設)等を講じることは、有効な措置であり、実務としてもこのように努める必要があると考えます。 

年次有給休暇について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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