傷害事件を起こした社員が年次有給休暇を請求?

傷害事件を起こした社員が年次有給休暇を請求?

傷害事件を起こして警察に拘留されていた期間を年次有給休暇にして欲しいといわれた場合、会社は応じる必要があるのでしょうか?

→ 会社の過去の実態にもよりますが、会社への連絡が全く取れないような特別の事情があったと認められないのであれば、事後申請を認めなくてもよいと思われます。

目 次

  • 懲戒解雇の可否
  • 年次有給休暇の事後申請の可否
  • 最終的な結論は?

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ある会社の社員が、町で暴行傷害事件を起こし、警察に拘留されました。

社長は、懲戒解雇と思っていましたが、本人から「警察に拘留されていた3日間を年休にして欲しい」と請求されたそうです。

社長は、「まったくもってふざけた話だ。年休は認めず懲戒解雇にしたいが、どうだ。」というご相談を受けました。

このご相談には2つの問題点があります。

懲戒解雇の可否

まず、懲戒解雇が可能かどうか、という点についてです。

皆さんもすでにご承知でしょうが、そもそも懲戒権は企業の秩序を維持し、生産性の向上を図るために規律違反をした労働者に不利益を科す(秩序罰)目的で、企業に認められていると一般的には解されています。

従って、労働者の私生活上の行為は原則として懲戒の対象とはならないと解されているので、今回の暴行傷害事件によって、会社の信用名誉を毀損した特別の事情が認められないと、争いになった場合、会社が不利な状況になると考えざるを得ません。

そして、この「会社の信用名誉を毀損したとき」は、かなりハードルが高く、かつて東京高裁では「道徳的、社会的、法律的にみて、不名誉な一切の行為を含むものではなく、不名誉な行為(ただし、それが職場内で行われたと職場外で行われたとを問わない)のうち、客観的にみて、企業の秩序ないし規律の維持または企業の向上と相容れない程度のもので、これによって現実に会社の体面すなわち企業者としての社会的地位、信用、名誉などが著しく毀損され、企業にとってもはや当該労働者との間の雇用関係の継続を期待しえない場合を意味すると解する。」(日本鋼管事件 東京高判 昭和39年3月27日)としています。

単に町でけんかをして警察に拘留されただけで、新聞やテレビで報道されることもなく、けんかした当該労働者も工場作業員で、会社の評判や信用を大きく失墜させるような立場でもない場合、仮に就業規則において懲戒事由に定めていたとしても、まず懲戒解雇は認められることはありません。

年次有給休暇の事後申請の可否

次に、年次有給休暇の事後申請に関してですが、この会社では事後の年次有給休暇振り替えも状況により認めているという実態はあるようでした。

しかしながら、今回のケースは当該労働者が警察に捕まってから、会社への連絡が全く取れなかったような特別の事情があったとは認められず、事後申請を認めなくてもよいと思われます。

独身者が病欠するような場合

なぜなら、当該会社で年次有給休暇の事後申請を認めるケースは、例えば1人住まいの人が病気にかかってしまった場合など、事前に会社に連絡できないケースに限って、事後でも年次有給休暇の請求を認めていたというように、「どのような場合でも認めていたというわけではない」労務管理をしていたと主張できる実態があったようだからです。

最終的な結論は?

以上の状況を総合的に考えると、今回の事件では懲戒解雇は無理だと思われますが、年次有給休暇の事後申請については拒否できるということになります。

もちろん、この結果だけを社長に伝えても、社長が満足できるわけはありません。

暴行傷害事件を起こした当該労働者は普段から勤務態度も悪く、上長にも反抗的な態度を取る問題社員であり、何とかしたいと考えていたところだったからです。

そこで、社長と上記のような客観的事情について話をして、「結果として会社から放逐できればそれでよし」という結論になりました。

そこからは、社長と同席の上で当該労働者と面談の機会を持ち、普段の勤務態度の問題点、今回の暴行傷害事件の件、その後の年次有給休暇の事後申請の件について話し合いました。

決して、暴行傷害事件を懲戒解雇に直結する要件として、それを材料にして退職を迫るような話法は用いず、ご本人から退職の意思表示を引き出すよう細心の注意を払って話を進めました。

その結果、事後の年次有給休暇3日分の申請は認めるが、本人からの自主的な退職届の提出という、会社にとっては最良の結末で本件を終了することに成功しました。

もちろん、社長が大満足したことはいうまでもありません。

年次有給休暇について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。

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年次有給休暇のトラブル

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