私生活上の飲酒運転で懲戒処分できる?

私生活上の飲酒運転で懲戒処分できる?

社員の私生活上の行為を理由として、懲戒処分を科してもよいのでしょうか?

→ 原則は、社員の私生活上の行為を理由として懲戒処分をすることはできません。

目 次

  • 懲戒処分の有効性
  • 事例詳細

懲戒処分の有効性

  • 原則、社員の私生活上の行為を理由として懲戒処分をすることはできない
  • ただし、例えば運送会社など、社員の私生活上の行為が、企業活動の遂行に直接関連したり、企業の社会的評価を低下・毀損させるものであれば、懲戒処分が有効と判断される可能性がある

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事例詳細

当社は、東京の郊外に本社を構える運送会社です。拠点は、本社以外に、営業所が4箇所、従業員規模は合計で約150名ほどになります。

「社長、この間私の知人と会ったときに聞いた話なんですけど、その知人は営業なのですが、入社時には、会社に運転記録証明書を提出しているらしいんですよ。」

「総務部長、何を言ってるんだね。それなら、うちの会社でもやっているじゃないか。」

「そうなんですけど、その会社で、飲酒運転で捕まった社員がいたらしく、急遽営業社員全員に、運転記録証明書の提出を求めたそうなんです。そしたら他にも飲酒運転等の事実が発覚した社員が2名もいたそうなんです。」

「そんなことがあったのかぁ。そう言えば、うちも入社時には運転記録証明書を提出してもらっているけど、その後は特に提出してもらってはいないなぁ。」

「当社は運送業ですし、今後は定期的に提出してもらった方がいいのではないかと・・・。」

「そうだなーーー。じゃあ、早速全員から、運転記録証明書を提出してもらうことにしよう。」

「はい、わかりました社長。早速、全員に運転記録証明書の提出をしてもらうよう対応します。」

こうして、当社のドライバー全員から、運転記録証明書の提出を求めることになりました。

「おーーーい、部長。この前の運転記録証明書の件はどうなりましたか。全員提出したのかね?」

「はい。全員から提出してもらいましたが、1名のドライバーが・・・。実は、A社員が今から5ヵ月前に酒気帯びで検挙されていまして・・・。」

「なんだってぇ~!うちの社員が酒気帯び運転で検挙されてたって言うのかね!本当なのか!?」

「私もびっくりです。どうりでA社員だけ、運転記録証明書の提出が遅かったんですね。」

「そうかーーー。総務部長、すぐにA社員と面談してください。そして、事情を聞いてくれるかね。」

「わかりました社長。すぐにA社員をつかまえて、詳しく状況を説明してもらいましょう。」

こうして、総務部長は、A社員を応接室に呼んで、面談を行いました。

「Aさん。今日お呼びした理由は分かりますよね?5ヵ月前に酒気帯び運転をしていますが、その時の状況を説明して頂けますか?」

「・・・はい。申し訳ありません。反省しています。その日は休日で、友人とキャンプに出かけておりまして、飲むつもりはなかったのですが、缶ビールを1本だけ飲んでしまいました。帰ろうとするまでの時間は、多分1時間半程度あったと思いますが、帰りの運転中に検問で捕まってしまいました。」

「そ、そ、そりゃーーーまずいだろう。缶ビール1本でも酒を飲んで運転するなんて・・・。」

「確かに酒気帯び運転だったかも知れませんが、事故は起こしていませんし、もう罰金も支払いました。俺なりに反省していますし、何とかお許しくださいよ。」

「わかりました。確かに事故がなかったのは、不幸中の幸いですが、当社は運業会社です。個人的には、そういう問題では済まされないと思います。今日の面談内容とあわせて、Aさんへの処分を決定することになります。」

こうして、Aさんとの面談は終了し、翌日社長、専務、総務部長により協議した結果、会社はAさんを、懲戒解雇することに決定しました。

しかし、Aさんが懲戒解雇された数日後、私生活上の行為を理由とする懲戒解雇は無効であるとして、訴状が送付されてきました。

果たして、私生活上の行為を理由として、会社が従業員に懲戒処分を科すことは可能なのでしょうか。

実際には、このような私生活上の行為を理由として、懲戒解雇や諭旨解雇以外の懲戒処分であれば、なされていることもあり、実務上は労務管理の一つの方法だと思います。

しかしながら、理論上、懲戒処分とは、あくまでも企業秩序を維持するために認められているものですので、原則として、従業員の私生活の行為について懲戒処分をすることはできません。

そうは言っても、従業員の私生活上の行為が、企業活動の遂行に直接関連したり、企業の社会的評価を低下・毀損させるものであれば、企業には従業員を懲戒して、秩序を回復する必要性があると言えます。

飲酒運転

事例のような、飲酒運転に関して言えば、昨今は、道路交通法も改正され、罰則等が強化されていることもあり、社会の評価は非常に厳しいものがあります。

運送会社であれば、仮に事故を起こさなかったとしても、免許停止期間中の業務への影響もあることでしょう。

それに加えて、事故を起こしたとすれば、飲酒量の程度や新聞等での報道の有無、そして人身事故等の重大な事故であったかどうかといった事故の態様によっては、企業の社会的評価の低下・毀損を招くことも十分考えられますから、慎重さは必要ですが、厳しい懲戒処分を検討する必要性もあると言えます。

しかしながら、こうした議論は、ある程度企業活動に直接関係する可能性があるからこそであり、例えば製造業の工場に勤務する一般社員が、飲酒運転で事故を起こしても、懲戒できるわけではありません。

また、運送会社であるからといって、私生活上の飲酒運転が必ずしも懲戒処分の対象になるとも限りません。

裁判例には、大手宅配会社のセースルドライバーが、業務終了後に酒気帯び運転で検挙されたことについて、懲戒処分を有効としたものもあります。

これは、誰もが知っている大手運送会社であり、自らが交通事故の防止に努力し、飲酒運転等の違反行為には厳正に対処すべきことが求められる立場にあったことが大きな要因だと思います。

しかし大企業でなくても、運送業のうち、旅客運送事業を営む会社であれば、「あの会社のタクシーは怖くて乗れない。」など、安全運転上の批判を強く受け、多大な被害を受けることも予想されますので、懲戒解雇を含めた厳しい処分も可能だと思います。

ただし、あくまでも懲戒処分の性質上、私生活上の行為を理由として懲戒処分をすることはできないという原則は、念頭に置いておく必要はあるでしょう。


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