退職した社員が既存顧客を奪っている?

退職した社員が既存顧客を奪っている?

退職した社員が、同様の営業活動を行っていたことが分かった場合、元社員を訴えることができるのでしょうか?

→ 元社員の秘密保持義務と競業避止義務等を勘案して判断されます。

目 次

  • 秘密保持義務と競業避止義務
  • 競業避止義務が課せられる期間
  • 事例詳細

秘密保持義務と競業避止義務

  • 元社員の知りえた情報が、会社の経営の根幹に関わる重要なものであったかどうかという秘密保持義務の合理性が前提となる
  • その上で、競業避止義務が課せられる期間、区域、職種、使用者の利益の程度と労働者の不利益の程度、そして代償措置の有無と程度等の事情を総合的に勘案される

競業避止義務が課せられる期間

  • 昨今は時代の変化が激しく、商品のライフサイクルも短期化していることから、業種によっては6ヵ月~1年程度が適切

二重就労や競業避止義務について正しく規定しておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。

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事例詳細

当社は、業界大手であるX社とフランチャイズ契約を締結して、X社からマットやモップ類の商品提供を受け、その商品をお客様にレンタルしたり、販売したりすることを主な業務としている会社です。

営業

当社の新規顧客開拓は、飛び込み営業が最も多く、実際の成約率は、200件~300件に1件程度にすぎません。

ですが、一旦契約をして頂ければ、1年以上継続して頂くことも多く、中には10年以上も継続して頂いているケースもあります。

このように、当社を始め、業界の特性として、顧客を獲得した後の継続率は高いのですが、新規に顧客を開拓することが一番の課題となっており、新規顧客開拓に費やす費用と労力は多大なものとなっています。

一方で、契約の維持・継続についても疎かにすることはできません。

「・・・ところで営業部長。最近、解約の件数が急激に増えているようだが・・・。」

「申し訳ありません社長。どうやらY社とフランチャイズ契約を締結している会社が、当社よりも低い値段を提示しているようでして。」

「ふーーーむ。しかし、そうは言っても、今までこんなことは無かったんじゃないのかな。」

「はい、おっしゃる通りです。何とか対策を講じなければと考えていたところです。」

「今回の解約パターンは、これまでとは違うような気がしてならないなぁ。今回解約された顧客について、もう少し詳しく調査してみてくれないか。」

社長の指示を受けて、営業部長が調査を続けると、あることが明らかになりました。

「社長。調べてみましたが、この間退職したA元社員が担当していた顧客がほとんどですね。A元社員は当社を3ヵ月前に退職していますが、その後にY社とフランチャイズ契約を結んで独立したようです。それで、当社に在籍していたときに担当していた顧客を訪問しているようなんです。」

「うちは社員と誓約書を交わしているだろう。Aは誓約書に違反していないのか?」

「はい、誓約書を確認しますと、『貴社を退職した後にも、貴社の業務に関わる重要な機密事項、特に「顧客の名簿及び取引内容に関わる事項」並びに「製品の製造過程、価格等に関わる事項」については一切他に漏らさないこと』とあります。そしてもう一つ、『事情があって貴社を退職した後、理由のいかんに関わらず2年間は在職時に対応したことのある営業地域並びにその隣接地域に在する同業他社に就職をして、あるいは同地域にて同業の事業を興して、貴社の顧客に対して営業活動を行ったりしないこと(競業避止義務)』とありますね。」

「そうか。誓約書に違反しているということになるな。事実確認ができたらAに連絡して、誓約書に違反している旨を警告してくれ。」

これを受けて営業部長は、A元社員に連絡することにしました。

「Aさんのしている行為は、当社に差し出した誓約書に反しますので、ただちにお止め下さい。」

「形式的にサインしただけです。そもそも、この誓約書の内容自体、おかしいんじゃないですか?職業選択の自由は、憲法で保障されている権利じゃないですか。」

「・・・そうですか。仕方ありませんね。それでは裁判所に判断してもらいましょう。実際に当社は、Aさんのお陰で大変な損害も被っていますし。」

こうして会社は、A元社員を訴えることにしました。

裁判所は、会社に提出された誓約書に記載されている重要な機密事項については、それが無限定ではないこと、そしてその機密事項が、会社の経営の根幹に関わる重要な情報であって、これが自由に開示・使用されれば、容易に会社に不利益を生じさせ、その存立にも関わり兼ねない程の価値があるとしました。

また、A元社員は、営業社員として、最前線で当該機密事項の内容を熟知し、その利用方法や重要性を十分認識している立場にあったことから、秘密保持義務を付けられてもやむを得ない地位にあり、当該秘密保持義務には合理性があると判示しました。

さらに、競業避止義務についても、退職後2年間という比較的短いものであること、また区域についても、在職中に担当したことのある営業地域並びにその近隣という限定されたものであること、そして、禁じられる行為は顧客収奪行為であって、会社の顧客以外の者に対してであれば、在職時に担当したことのある営業地域並びにその近隣で営業活動を行うことは禁止していないから、A元社員が会社と同じ事業を営むことが困難になるという訳でもない、としました。

そして、通常、競業避止義務を課すには必要と言われている代償措置を、会社が講じていなかった点については、当該競業避止義務によって、A元社員の職業選択の自由が制限される程度はかなり小さく、代償措置が講じられていないことのみをもって、競業避止義務の合理性が失われるということにはならないとして、当該競業避止義務は有効と判示しました。

競業避止義務が有効かどうかは、個別事情にもよりますが、一般的には、退職後の秘密保持義務に合理性があることを前提として、競業避止義務が課せられる期間、区域、職種、使用者の利益の程度と労働者の不利益の程度、そして代償措置の有無と程度等の事情を総合勘案して判断されます。

今回の事案では、競業避止義務の期間が、比較的短いという判断もありましたが、昨今は時代の変化が激しく、商品のライフサイクルも短期化していることも考えれば、業種によっては、2年という期間は少し長く、6ヵ月~1年程度が適切なのではないかと思います。


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