給与の振込口座の変更は?

社員から給与の振込口座を変更したいという依頼があったとき、応じなければならないのでしょうか?
本来、給与振込は会社の便宜によるものなので、原則変更には応じなければならず、振込手数料等も会社が負担するべきです。
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このコンテンツの目次
  • 給与振込には労働者の同意が必要
  • 振込手数料を社員に負担させるときは
  • 事例詳細

給与振込には労働者の同意が必要

  • 労働基準法第24条によると、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされている
  • 給与の振り込みは、「本人の同意」や「本人の指定」が必要であって、本来は、会社から特定の金融機関を指定することはできない
  • 会社が振込先の金融機関を指定したいときは、会社のメリットと従業員の手間を勘案し、本人の意思も尊重しつつ、かつ同意を得た上で実施する

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振込手数料を社員に負担させるときは

  • 原則は、民法第485条により、会社が給与の支払いに関する債務者であることから、その弁済にかかる費用(振込手数料)は会社が負担するべき
  • 社員本人に負担させるときは、少なくとも、本人の同意、賃金控除の労使協定の締結、給与明細への記載が必要

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事例詳細

ある日、営業課のAさんが、総務部長を訪ねました。

A社員

総務部長。お願いなんですが、私の給与の振込先口座を変更して欲しいんですが・・・。

総務部長

当社は全員が同じ銀行の同じ支店に口座を作ってもらって、そこに振り込むことにしているからな。今のままじゃ、駄目なのか?

A社員

私事で恐縮なんですが、実はマンションを購入することになりまして。それで、住宅ローンの関係もあって、X銀行に振込先を変更していただきたいんです・・・。

総務部長

事情は分かった。ただ他行への振り込みだと手数料も掛かるし、そもそも君だけを特別扱いすることができるかどうかは、社長に聞いてみないとな。

ということで、総務部長は社長に確認してみることにしました。

総務部長

社長。A君から、給与の振込先口座を変更して欲しいといった要望があったんですが、どうしますか?

社長

事情は理解できるが、1人に認めてしまうと他の社員にも認めないと不公平になるし。そうすると、振込先がバラバラになって手数料も掛かったり、振込先を間違ってしまう可能性もあるからなぁ。

総務部長

では、認めるとしたら、手数料は本人に負担させますか? そうすれば、他の従業員が知ったとしても、自分も振込先を変えて欲しいとは言ってこないでしょう。

社長

そうだな。それで問題ないというのであれば、そうしてくれ。よろしく頼むよ。

社長の確認が取れた総務部長は、Aさんにその旨を伝えることにしました。

総務部長

Aさん。先日の件、指定の口座に振り込むことはできるが、その代わり振込手数料を負担してもらうことになるけど、いいかい?

A社員

えっ。手数料は自己負担ですか? しかも、それは私だけ自己負担っていうことですか?

会社が金融機関を指定することはできない

銀行

さて、給与の支払いは、ほとんどの企業が口座振込によって行っております。

しかし、労基法第24条には、「通貨払い」という規定があって、振り込みではなく現金手渡しが原則とされており、振り込みが認められるためには、労働者の同意を得た場合で、当該労働者が指定する当該労働者の口座へ振り込むことが必要とされています。

したがって、給与振り込みでは、「本人の同意」や「本人の指定」が必要であり、本来は、会社から特定の金融機関を指定することはできないと考えられます。

よって、会社が振込先の金融機関を指定したい場合には、会社のメリットと従業員の手間を勘案した上で、本人の意思も尊重しつつ、かつ同意を得た上で実施することが落としどころになるのではないかと思います。

振込手数料を従業員負担にできる?

次に、振込手数料の負担についてですが、先述の通り、労基法第24条が、「通貨払い」を原則とし、本人が同意すれば、振り込みによる支払いも可能とされていることからすると、振り込みによる支払いは、本人ではなく、会社側の便宜によるものと考えられます。

また、民法上も、給与の支払いに関しては、会社が債務者であることから、その弁済にかかる費用(振込手数料)は、会社が負担するべきものと解釈できます。

第485条(弁済の費用)
弁済(給与支払)の費用について別段の意思表示がないときは、その費用(給与支払に要する費用)は債務者(会社)の負担とする。

以上を勘案しますと、振込手数料は、本来は会社が負担すべきものであると考えられます。

しかし、本人に負担させることが、必ずしも違法とはいえません。仮に本人に負担させるとすれば、少なくとも、以下の要件を充足する必要があると思います。

  1. 本人が同意していることが明らかであること(書面によることが必要と考えます)
  2. 労基法第24条に基づく、賃金控除の労使協定を締結すること(労基署への届出は不要)
  3. 控除した場合には、その金額を給与明細に記載すること

なお、給与計算の時期に慌てないためにも、給与の振込口座等、会社にとって必要な社員の情報に変更があった場合には、速やかに届け出るよう、就業規則に規定し、周知しておくとよいと思います。

賃金については、明確に就業規則に定め、社員に周知しなければなりません。
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