懲戒権行使の流れ

どのような流れで懲戒処分を行えばよいのですか?

懲戒処分を実施するまでは、会社で定めた手続き上のルールがあれば、これを遵守する必要があります。

ルールがなければ強制されるものではありませんが、とくに定めがなかったとしても、諭旨退職や懲戒解雇といった最も重い懲戒処分をしようとする場合は、弁明の機会を与えることが最低限必要です。

諭旨退職や懲戒解雇に至らない程度の懲戒処分については、必ずしもすべての事案について弁明の機会を与える必要はなく、事案ごとに会社の判断に委ねることでよいと思います。

こうした手続きが、就業規則等で定められているのに、それに違反した場合、あるいは特に定めがなくても適正な手続を経ないでなされた処分は、権利の濫用等として無効とされることがありますので、注意が必要です。

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懲戒権行使の流れ

諭旨解雇や懲戒解雇は、一般社会でいうところの「死刑」に該当します。

社内刑法である懲戒規定によって、諭旨解雇や懲戒解雇といった懲戒処分を科す場合にはとくに、適正な手続きがなされているかどうかが、より重要なポイントになります。

事実を確認する

懲戒処分を行うときは、まず、上記のような事実を確かめることが必要です。

たとえば、会社に無断でアフターファイブに飲食店でアルバイトしている社員を処分するのであれば、具体的にどの店で何時から何時までアルバイトをしているのか確かめるべきです。

弁明の機会を与える

そして、事実を確認したとしても、弁明の機会を与えることなく、会社の方で一方的に処分を決定すれば、不公正だと批判されかねません。

「信義則」上は、処分の事由の告知と弁明の機会の提供が要請されることになるでしょう。

たとえば、会社の転勤命令に従わない者を処分するときは、「どうして転勤命令に応じられないのか」をよく聞く必要があります。

ただし、就業規則上、処分理由を告知すべき旨の定めがない場合には、「事実を告げなかったからといって、直ちに懲戒処分の手続に反し、無効であるということはできない」(総友会事件 東京高裁 H4.5.28)という判例もあります。

懲戒処分は公平でなければならない

過去に同様の事案があり、しかもその程度がほぼ同じである場合には、懲戒処分も同じ内容にすることが適当です。

一人の労働者には特に厳しい処分を行い、別の労働者には甘い処分で済ませるということがあっては不公平だからです。

懲戒委員会への付議

懲戒処分の発動やその内容を懲戒委員会で決めることにしているときは、必ずその手続きを踏まなければいけません。

その手続きを経ずに懲戒処分をした場合には、無効と判断される可能性があります。

もっとも、懲戒委員会への付議が必要的なものでない場合は、懲戒委員会の議を経ずなされた懲戒も無効となるわけではないとされています。

「懲戒委員会を設けることがある」旨の懲戒規定について、「懲戒規定の文言によれば委員会は必ず開かれなければならないものではなく、これまで開かれた例もないのであるから懲戒委員会が開かれなかったからといって本件処分が無効となるというようなものではない」

労働組合との協議

労働組合との協議約款がある場合でも、組合が協議に応じなかったり、組合側委員が懲戒委員会に出席しないような場合には、使用者側委員の決定となっても、手続違反とはなりません。

懲戒事由の公表

こうした手続きを経て実際に懲戒処分をしたとして、その懲戒事実や懲戒を受けた従業員の氏名を公表しようとする会社もあります。

これらを公表することができるかどうかについても労働契約を基礎として考えるべきですから、就業規則に「懲戒事実を公表することがある」旨の規定が定められ、周知されていれば、懲戒処分を受けた従業員の氏名を含めて公表することができると考えます。

ただし、氏名を公表するということはプライバシー侵害との関係から、名誉毀損にあたる行為に該当し、不法行為が成立する可能性もありますので、以下のような事情を総合考慮して、事案ごとに決定すべきことになります。

  1. 公表の目的
  2. 事案の性質・内容(職務関連性等)、事案の重大性(処分の重さも含む)
  3. 関係者の名誉、プライバシー等への配慮

実務上は、よほどの重大な事案でない限りは、公表する際に、実名、所属部署、役職といった個人が特定可能な事実については原則として記載せず、「違反事実の要旨、該当する懲戒規定、処分結果」といった事実の記載に留め、被処分者を含む関係者の名誉にも一定の配慮をしておくことが、肝要であるといえます。

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