懲戒処分が無効のケース

懲戒処分が無効とされるケースはあるのでしょうか?
懲戒処分が無効とされるケースとしては、懲戒処分に該当する事実が存在せず、本人が潔白である場合のほか、懲戒に値する事実は認められるが、違反行為と懲戒処分とが不均衡とされている例が少なくありません。
具体的には、懲戒処分をする際には、会社が守るべき7つのルールがあり、これらを欠いた場合、無効とされることがあります。以下に詳細を説明いたします。
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懲戒処分の際に守るべきルール

懲戒処分を行うには、就業規則上の根拠が必要です。懲戒手続きを欠いた懲戒処分は、懲戒権の濫用となり無効となります。

懲戒解雇の場合、普通解雇のチェック項目の外、次の点をチェックします。
これらの要件を欠いた懲戒処分は、懲戒権の濫用として無効となります。

  1. 懲戒の根拠があること(罪刑法定主義の原則):懲戒事由、懲戒内容を明示すること
  2. 平等取り扱いの原則:すべての労働者を平等に扱うこと
  3. 一事不再理(二重処罰の禁止):同じ事由で二重に処分することはできない
  4. 不遡及の原則:懲戒規定の制定以前の行為には適用できない
  5. 個人責任の原則:連座制は許されない
  6. 相当性の原則:処分の種類・程度には客観的妥当性が必要
  7. 適正手続きの原則:就業規則や労働協約などで定められた手続きが必要

懲戒の根拠があること(罪刑法定主義が準用されているか)

罪刑法定主義とは、いかなる行為が犯罪となるか、それにいかなる刑罰が科せられるかは、既定の法律によってのみ定められるという考え方をいいます。

会社における懲戒規定は、一般社会における刑法と同じですから、懲戒処分を科すためには、当然のことながら、懲懲戒処分に該当する事実がなければなりません。

また、本人に十分な弁明の機会を与えることも必要です。

さらに、懲戒処分を行うためには、懲戒事由とこれに対する懲戒の種類・程度が、就業規則の懲戒規定(懲戒事由と懲戒手段)により定められていることが最低限必要です。(労働基準法第89条1項9号)

そして、その就業規則は周知されていなければなりません。

平等取り扱いの原則

特別な理由もないのに、人によって、あるいは社内の地位によって、処分の重さを変えたり、先例に反した仕方をしてはいけません。

企業秩序違反行為の種類や程度、その他の事情に照らして、他の同僚や過去の例と比べても平等な取り扱いであることが求められます。

すなわち、同じ規定に同じ程度に違反した場合には、これに対する懲戒は同一種類、同一程度とされていなければならないのです。

そのためには、懲戒の記録は必ず残しておいて、平等取り扱いの原則から、照会できるようにしておくことが必要です。

一事不再理(二重処罰の禁止)

日本には「一事不再理」の原則があります。(憲法第39条)

一度判決が決まれば、その罪では二度と罰することができないという原則です。

会社内の懲戒についても同じように考えられており、同じ行為に対して、二重に処罰することはできません。

逆にいえば、二つの罪があるなら二つの罰があるともいえます。

ある事実に基づいて甲という懲戒処分がとられたのちに、その事実について再び乙という別の懲戒処分をとることは、一事不再理の原則に照らし許されないものと解すべきである。
ただし、ある事実について懲戒処分をとったところ、それから短期間の後に他の懲戒事由が発生したのでこれに対する処分を定める際に・・・、いわば情状として考慮することは許される。

懲戒処分は、使用者が労働者のした企業秩序違反行為に対してする一種の制裁罰であるから、一事不再理の法理は就業規則の懲戒条項にも該当し、過去にある懲戒処分の対象となった行為について反省の態度が見受けられないことだけを理由として懲戒することもできない。

なお、一事不再理は、過去に懲戒処分を受けた行為について、再度懲戒処分を科すことを禁ずるものですから、過去に懲戒処分を受けたことのある者が、新たに懲戒処分の対象となる企業秩序違反行為を犯した場合に、過去に全く懲戒処分を受けたことの無い者に比して、重く処罰されることまでを禁ずる趣旨ではありません。

一事不再理は、過去に懲戒処分を受けたのと同一の行為につき、再度懲戒処分を科すことを禁ずるものであって、過去に懲戒処分を受けたことのある者が、新たに懲戒処分の対象となる非違行為を犯した場合に、過去にまったく懲戒処分を受けたことのない者に比して、重く処罰されることまでを禁ずる趣旨ではない。

不遡及の原則

根拠規定が設けられる以前の事犯に対して適用されてはなりません。

個人責任の原則

懲戒処分は労働者個人の行為に対して行う制裁罰ですから、行為に関与していない別の労働者に対しての責任連座制は許されません。

相当性の原則

懲戒は企業秩序違反行為の種類や程度、その他の事情に照らして相当なものでなければなりません。

要するに、犯した行為と、懲戒処分とのバランスが取れているかどうかが重要であり、当該行為や懲戒処分対象者に対する情状を適切に斟酌せずに、重すぎる量刑を科した場合には、懲戒権の濫用と判断されることになります。

適正手続きの原則

懲戒処分を科すまでの手続きは、適正かつ公平なものでなければなりません。
会社で定めた手続き上のルール(例えば懲戒委員会に諮る等)があれば、これを遵守する必要があります。

定めた手続き上のルールがなければ強制されるものではありませんが、とくに定めがなかったとしても、諭旨解雇や懲戒解雇といった、企業から追放するという最も重い懲戒処分をしようとする場合には、弁明の機会を与えることが最低限必要とされます。

こうした手続きが、就業規則等で定められているのに、それに違反した場合、あるいはとく定めがなくても適正な手続きを経ずになされた処分は、懲戒権の濫用等として無効とされることがありますので、注意が必要です。

たとえば、懲戒処分にあたり、就業規則や労働協約上、労働組合との協議や懲戒委員会の討議を経るべきことが定められているにも関わらず、それらの手続きが適正に取られていない場合です。

刃物をもって社長の腹部を刺し重症を負わせた従業員に対する懲戒解雇が、解雇協議約款の定めを守らなかったという手続き上の不手際で無効とされた。

しかし、いずれにせよ難しい案件なので、相反する判断が下されることが多いようです。

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