健康診断を受診した時間の割増賃金は?

始業時間前に健康診断を受診?

当社は、コンピューターシステムの開発を行っている、20名程度の中小企業です。

先月当社では、従業員全員に対して、1年に1回の定期健康診断を実施しました。

本当は休日に実施したいところですが、さすがに従業員からクレームが出そうなので、当社では、労働日に交替で実施することにしています。

「今年も健康診断の季節だなー。しかし、今年の健康診断は、受診時間がずいぶん早いよな。」

「あーそうだなー。去年は確か10時からだったと思ったけど、今年は8時からだからね。」

「うちの会社は始業が10時だから、いつもより2時間も早く出なきゃいけないってわけだなー。」

「それは大変だ。俺は会社より健診場所の方が少し近いから、おたくよりはまだマシだわ。」

「ところで、健康診断ってのは、会社の命令で受診するんだから、その時間って労働時間になるんだよなー?」

「どうだろうなー。でも去年は10時から健康診断だったけど、その時間分の賃金は支払われていたなあ。」

「・・・ということは、今回は8時からだから、早出残業の対象になるってことだな。」

しかし、その後の給料日に給与明細を見ても、健康診断を受診した時間の割増賃金は支払われていません。

「総務部長。先日受診した健康診断の時間に対する割増賃金が支払われてないんだけど、これは一体どういうことなの?」

「何を言っているんだい。今までも、そんなもの支払ったことなんて一度もないよ。」

「そうですかーーー。去年はちゃんと支払われていましたよ。間違えちゃったんじゃないの?」

「去年は就業時間中に実施したこともあって、賃金を控除しなかっただけで、就業時間外に実施したからといって、別途賃金を支給することは、これまでもしていないよ。」

「へーーーそうなんですかぁ?それで本当にいいんですかねぇ?どうもしっくり来ないなー。」

さて、健康診断は、労働安全衛生法によって会社に実施義務が課せられているものです。

健康診断の種類によって扱いが違う?

法定の健康診断といっても複数の種類があるのですが、主に、

  1. 一般健康診断、
  2. 特殊健康診断、

に大別することができます。

1.の一般健康診断には、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回行うことが必要とされている「定期健康診断」や、深夜時間帯を含む業務に常時従事する労働者に対して、配置換えの際や6ヶ月以内ごとに1回行うことが必要とされている「特定業務従事者の健康診断」等があります。

2.の特殊健康診断とは、有機溶剤等を取り扱う有害業務に常時従事する労働者に対して、配置換えの際や6ヶ月以内ごとに1回、特定の項目について行うことが必要とされている「特殊健康診断」や「じん肺健康診断」等があります。

では、このように、会社に実施義務が課せられている健康診断ではありますが、実施した場合の時間は、労働時間になるのでしょうか。

厚生労働省は、1.一般健康診断については、「一般的な健康の確保をはかることを目的として、事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと」としています。 (昭47.9.18基発第602号)

つまり、原則として、賃金の支払い義務を負う労働時間ではないということになります。

一方で、2.特殊健康診断については、「事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること」(前掲通達)とされており、一般健康診断とは異なり、明確に労働時間であるとされています。

このように、実施する健康診断によって、それが労働時間になるのか否かの判断が異なりますので、注意が必要です。


労働時間・残業のトラブル

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