みなし労働時間制の適用について

残業代が支払われていない!?

給与支給日の翌日、支給されている残業代について話をしたいと営業部に所属しているAさんが総務部長のところへやってきました。

「あのーーー総務部長、給与明細を見ると、残業代が少ないように思うのですが・・・。」

「あれっ、ごめん!計算間違ったかなーーー?何度も見直したりはしているんだけどね・・・。」

「今回の明細に記載されている残業時間が、私が計算していたのと比べて少ないと思うんです。」

「えっ、そうなの。いつも通り、勤怠システムの残業時間を集計したんだけどなあーーー。」

「そうなんですか。私は先月、1週間海外出張に行っていたのですが、出張報告書に記載している残業時間はシステムに反映されていますか?」

「なーんだ。それは出張だから、みなし労働時間が適用されて、海外出張の期間、残業はついてないんだよ。」

「そうだったんですね。でも、今回はB専務と一緒に出張に行っていたので、夜遅くまで商談をしていた時間分は、みなし労働時間を適用するのではなく、残業代がつくはずなのですが・・・。」

「えっ!?そうなの?ちょっとよくわからないので、とりあえずすぐに確認してみますね。」

「すみません、総務部長。お忙しいと思いますけど、どうかよろしくお願いします。」

さて、今回のような出張の場合は、事業場外みなし労働時間制は適用できるでしょうか。

みなし労働時間制適用のルールは?

事業場外のみなし労働時間制を適用する際の大前提として、「労働時間を算定し難いとき」という要件があります。

この「労働時間を算定し難いとき」とは、“事業場外でおこなわれる労働について、その労働態様のゆえに、労働時間を十分に把握できるほどには使用者の具体的指揮監督を及ぼしえない場合”(菅野和夫著『労働法第10版』)となっており、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるとして、みなし労働時間制の適用はないとされています。

その適用がない具体例として、行政解釈(昭和63年1月1日基発第1号)では、①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのグループのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合、②事業場外で業務に従事するが、無線や携帯電話等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合、③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場に戻る場合の3例が挙げられています。

これらを踏まえると、今回は、出張に専務が同行していますので、専務からの具体的な指揮監督を受けていることになり、時間の算定ができると考えることから、Aさんが言うようにみなし労働時間制の適用はないということになります。

また、平成26年1月24日に最高裁で初めて事業場外みなし労働時間制についての判決(阪急トラベルサポート事件)が出ました。旅行会社の添乗員に適用していた事業場外みなし労働時間制の適否が争われた事件でしたが、その最高裁判例では、労働時間の算定困難性に関して、①業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、②業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等から判断をしています。①に関しては、当該添乗員の業務は、旅行日程がその日時や目的地等を明らかにして定められることによって、業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られていることが、旅行会社の側で添乗業務の管理や把握が困難ではないとの評価につながる一事情として、考慮されています。

また、②に関しては、あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で、業務遂行過程においては、常時携帯電話の電源を入れて所持しつつ、ツアー参加者との間で契約上の問題やクレームを生じ得る旅程変更が必要となる場合に、個別に報告して指示を仰ぐこととされていることから、業務遂行過程における使用者の指揮監督が及んでいるものと評価されています。

出張、もしくは直行直帰についても、事業場外という理由のみをもってみなし労働時間制を適用できる訳ではありませんので、注意が必要です。


労働時間・残業のトラブル

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