資格取得の勉強時間は労働時間か?

会社が指示した資格取得のための勉強時間は労働時間に該当しますか?
労働者の行為が使用者から義務付けられ、またはこれを余儀なくされたときは、労働時間に該当すると判断されます。
このコンテンツの目次
  • 労働時間に該当する場合
  • 事例詳細

労働時間に該当する場合

  • 会社からの指示で義務付けられたもの
  • それを余儀なくされたもの
  • 制裁等の不利益取り扱いがあるもの

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事例詳細

当社では、今年4月に、人事部配属の社員として1名を中途採用し、この度無事に3ヶ月の試用期間を終え、7月から正社員登用となりました。

人事部の社員に対しては、より専門性を高めてもらうことを目的として、社会保険労務士の資格取得を奨励しています。

人事部長

Aさん。試用期間を終えて今月から正社員ですね。これからの活躍を期待しています。

A社員

人事部長、ありがとうございます。今後も御社のお役に立てるよう精進して参りたいと思います。

人事部長

当社では、業務との関連性もありますので、人事部の社員には、社会保険労務士の資格取得を奨励しています。是非Aさんもチャレンジしていただきたいのですが。

A社員

その話は入社前にも伺っておりましたので、これから勉強したいと思っています。ところで、これは義務なのでしょうか。

人事部長

義務ではありませんが、勉強することによって業務の幅も広がりますし、合格した際には資格取得一時金や資格手当が支給されたり、人事考課上も有利に扱われたりしますので、是非頑張ってください。

A社員

はい、わかりました。合格できるよう一生懸命頑張って勉強したいと思います。

こうしてAさんも、社会保険労務士試験の合格を目指して、勉強することになりました。それから数日が経過した朝礼での出来事です。

社長

昨今は、マイナンバーの影響もあり、個人情報の取り扱いについて、企業に厳格な対応が求められています。会社から個人情報が漏洩すれば、会社はマスコミに叩かれたり、多大な損害を被ることになってしまいます。そこで当社は、個人情報の取り扱いについて万全を期すため、全社員に対し個人情報保護士試験の合格を必須としたいと考えています。

A社員

えーっ! まじっすかー! 社長、私は他の資格取得の勉強もしてるんですよ!

社長

直近では、休日ですが9月9日の日曜日に試験が実施されます。受験や最低限の教材の費用については、会社が負担しますので、この試験は必ず受験するようにしてください。

こうしてAさんは、2つの資格試験の勉強をすることになりましたが、受験のための自主勉強や講習、および試験の時間は、労働時間と判断されるのでしょうか。

奨励と義務づけは異なる

労基法による労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されており、労働者の行為が使用者から義務付けられ、またはこれを余儀なくされたときは、労働時間に該当すると判断されます。

行政解釈においても、「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制が無く、自由参加のものであれば、労働時間にはならない。」とされています。

そうすると、Aさんが取り組む社会保険労務士の資格取得については、業務との関連性があることから推奨されてはいるものの、会社からの義務付けがあったわけではありません。

また、資格を取得できなかったとしてもこれによって制裁等の不利益な取り扱いがなされるものではありません。

不利益に取り扱われるかどうか

なお、制裁等の不利益取り扱いがなされないものの、資格を取得すれば有利に取り扱われるという場合に、「余儀なくされている」と判断されるかどうかですが、これは有利に取り扱われないこと自体が、不利益な取り扱いを行うこととは異なり、労働者にとって強制される要素はありませんから、「余儀なくされる」ことにはならないと考えられます。

よって、社会保険労務士の資格取得に関する自主勉強や講習、および試験の時間は、労働時間ではないと考えられます。

次に、個人情報保護士の資格取得については、これは社長から合格が必須との明確に指示がなされていることから、試験の時間は労働時間であると考えられます。

ただし、最低限の教材を会社が用意していることから、勉強のために講習に参加するのは本人の自主的な活動であるので、労働時間ではないと考えられます。

また、自主勉強に費やした時間についてですが、勉強時間数や勉強場所を会社が指示しているのではなく、いつどこで何時間勉強するかは本人の自由意思に委ねられていることから、これらについても労働時間ではないと考えられます。

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