入社奨励金の返還について

入社奨励金の返還について

入社奨励金を支給する際、一定期間の勤務を約束させることはできるのでしょうか?

→ 一定期間勤務しなかったら返還させるより、一定期間勤務した場合には、支払うこととした方がよいと思います。

目 次

  • 入社奨励金の目的と性質
  • 裁判所の判断
  • 事例詳細

入社奨励金の目的と性質

  • 入社奨励金の目的は、会社と雇用契約を結んだときに支払われるものであって、成約を確認し勤労意欲を促すこと
  • 一定期間企業に拘束されることに対する対価としての性質も有している

裁判所の判断

  • 入社奨励金が、労働者の意思に反して労働を強制することになるような不当な拘束手段であると判断される場合は、労働基準法等に照らして、返還約定が無効とされる可能性がある

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事例詳細

当社では、営業部門強化のため、人材紹介会社を通じて、経験豊富な人材を営業部長として採用することにしました。昨今は売り手市場なので、有能な人材を採用するには、それなりの条件を提示する必要がありました。

「Aさん。入社してくれるのであれば、年収1,500万円を支払うことを約束しよう。」

「ありがとうございます。ただ、現在別の会社からもオファーを受けておりまして、年収レベルではほぼ同じですから、もう少し検討させていただきたいと思います。」

「それなら、年収1,500万円の他、入社奨励金として150万円を支払うことでどうかな。」

「そうですか…。その入社奨励金というのは、インセンティブみたいなものですか?」

「インセンティブではありません。しかし、当社にとっては大きな投資となりますので、成果にかかわらず、入社後1年間は勤務していただきたいと思っています。」

「インセンティブではないのですね。仮にですが、1年以内に退職した場合はどうなりますか?」

「入社後1年以内に、自己都合で退職した場合は、全額を返還していただきます。」

「成果にかかわらず勤続1年が条件とのこと、承知しました。御社で働きたく思います。」

こうして当社はめでたくAさんを採用することができました。あとはAさんが期待通りの成果を上げてくれればよかったのですが、そうはいかず、入社して7ヶ月が経過したころ、Aさんから退職の申し出がありました。

「社長、申し訳ないとは思っていますが、今月いっぱいで退職させていただきます。」

「なんだって!?今月いっぱいで退職したい!?Aさん、一体どうしたというんだ?」

「入社以来頑張ってきましたが、当初思い描いていた仕事ではないと感じまして…。」

「うちがAさんにどれだけ投資していると思っているんだ!それなら、入社奨励金は全額返してもらうことになりますよ。」

「お言葉ですが、退職は労働者の自由ですし、入社奨励金も返還するつもりはないです。」

「入社の時に約束したじゃないか!ほら、この書面にAさんは署名しているじゃないか!」

会社は、Aさんから入社奨励金の返還を受けることができるのでしょうか。

労基法の定めと入社奨励金

ところで、労働基準法第5条では、使用者が暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって労働者の意思に反して労働を強制してはならないと定め、また同法第16条では、使用者が労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない旨を定めています。

その点、入社奨励金が、これらに抵触しているかどうかが問題となりますが、入社奨励金の目的は、会社と雇用契約を結んだときに支払われるものであって、成約を確認し勤労意欲を促すことだと考えられます。

一方で、1年以内に自らの意思で退職した場合にはその全額を返還することを約束することで、一定期間企業に拘束されることに対する対価としての性質をも有していることは明らかです。

裁判所の判断は?

これらに照らして裁判所は、以下のように判断しました。

「このように、入社奨励金が、一定期間企業に拘束されることに対する対価としての性質をも有していることから、入社奨励金の給付とその返還約定は、労働者の労務提供に先行して一定額の金員を交付して、労働者を自らの意思で退職させることなく1年間会社に拘束することを意図した経済的足止め策に他ならない。そして、入社奨励金の返還約定は、自発的に退職した場合に入社奨励金を返還することを定めているから、労働者の帰責事由を要件として本件雇用契約の解約を念頭に置いたものであって、返還される入社奨励金が労働者の債務不履行による違約金又は賠償額の予定に相当する性質を有していることも認められる。

よって、入社奨励金は、労働者の意思に反して労働を強制することになるような不当な拘束手段であるといえるから、労働基準法第5条、第16条に反し、返還約定は、同法第13条、民法第90条により無効であるというのが相当である。」

入社奨励金の金額にもよるとは思いますが、このような仕組みは違法と判断される可能性が高いので、一定期間勤務しなかったら返還させるより、一定期間勤務した場合には、支払うこととした方がよいと思います。

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