行方不明社員の退職の取り扱いは?

行方不明社員の退職の取り扱いは?

無断欠勤が続き行方不明になった社員を、解雇しても問題ないのでしょうか?

→ 実務では、解雇をせず、退職の手続きを行うことが適切だと考えます。

目 次

  • 退職で対応する
  • 手続き開始までの期間
  • 事例詳細

退職で対応する

  • 就業規則に行方不明期間の規定があれば、その期間が経過した後、自動的に退職処理を行う
  • 規定がない場合には、無断欠勤開始日に黙示の意思表示があったものとみなし、会社が退職日を決定する
  • その間もあらゆる手段で本人と連絡を取るよう努めることが必要

手続き開始までの期間

  • 民法第627条第2項「期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。」が適用されるため、行方不明期間は「50日」が適切

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事例詳細

当社は、東京郊外に本社を構える、従業員規模約70人の印刷会社です。

入社4年目の営業担当のA社員は、親元を離れて都内のマンションで1人暮らしをしています。これまで、勤務態度にさほど問題はなかったのですが、連休明けから会社に出勤していない状態が続いています。

会社も何度も、A社員の携帯電話に電話したり、メールを送ったりしていますが、本人が電話に出ることはなく、留守番電話に連絡するようにメッセージを残しても一向に連絡がありませんし、メールの返信もありません。

A社員の両親の自宅に連絡したところ、電話にでた母親も驚いており、A社員に連絡を取ってみるとのことでしたので、会社はしばらく様子を見ることにしました。

数日後、再びA社員の母親に連絡したところ、母親も連絡がつかなかったようで、警察に捜索願を出しに行くとのことでした。

こうした状況を受けて、A社員の上司である営業課長が、A社員のマンションに訪問してみましたが、A社員の部屋はもぬけの殻状態です。

郵便受けには、サラ金からの督促状が溢れていました。

「営業課長、ちょっといいですか。今日、A社員の部屋を訪問したんだって?それで、どうだった?」

「はい、社長。訪問したんですが、A社員はいませんでした。それどころか、サラ金からの督促状が、山のように郵便受けに入っていたんですよ。」

「そうか・・・。サラ金に手を出して、取り立てから逃れるために失踪しているってことか・・・。」

「どうやら、そのようですね。これまでの勤務態度から、そんな風には見えなかったんですが・・・。」

「人は見かけによらないものだな。もう起きてしまったことは仕方がない。本人の安否も心配だが、それは警察に任せるとして、会社として今後、A社員にどう対応すれば良いんだ?」

「そうですねぇーーー。ちょっと私には・・・。人事部長と相談してみます。」

「あぁ、そうだな。すぐに人事部長に相談して、今後の対応を私に報告してくれ。」

営業課長から相談を受けた人事部長は、直接、社長に報告を行いました。

「社長、A社員の件ですが、すでに無断欠勤が10日続いています。したがって、当社の就業規則によれば、無断欠勤が14日になった場合は解雇とあり、あと4日で解雇になります。」

「おっ、人事部長、忙しいのにすまんね。A社員は解雇か・・・。それで手続きはどうなるんだ。」

「はい。解雇ですから、30日前に解雇予告をするか、あるいは解雇予告手当を支払って、即時に解雇することになります。」

「人事部長。解雇予告するといっても、本人は行方不明になっているんだから、予告のしようがないのでは?それとも、親にその旨予告すれば、いいってことですか。」

「会社は、A社員と労働契約を締結していますから、親に通告しても法的には効力はないんです。やはり本人に通知しなくてはなりません。」

「そうは言っても、本人とは連絡がつかないんだから、どうすればいいんだ?」

「はい。民事訴訟法に規定されている公示送達という手続きがありますので、それを用いるしかないと思います。」

「ほぅーーー、なるほど、公示送達か・・・。しかし、その公示送達っていうのは何だ?」

「はい。公示送達とは、会社から裁判所に申し立てをして、これを受けて、裁判所がその旨を掲示板に掲示するとともに、掲示した旨を官報等で公告すると、その後2週間を経過したときに、相手方にその意思表示が到達したものとみなされるという制度です。」

「ほぅーーー、そんな制度があるのか。しかしなんだか面倒だな。それに官報に掲載されるのか?官報は普通の人は見ないが、経営者の場合、意外に見ている人もいるから、当社で行方不明者を解雇したなんて情報を、あまり知られたくないなぁ。他に方法は無いのか?」

「うぅ~ん・・・。そうですねぇーーー。ちょっと、これ以外は調べてみないと何とも・・・。」

さて、こうした問合わせを頂くこともありますが、こんな場合でも、実務では解雇の取り扱いはしません。

まず、実務対応としては、就業規則に解雇の条項ではなく、例えば「従業員が行方不明になり○日を経過し、会社も所在を知らないとき」というような規定があれば、この条項を適用して、一定期間経過後に自動的に退職処理を行うということが考えられます。

仮に、このような規定が就業規則になかったとしても、無断欠勤開始日に、従業員から黙示の意思表示があったものとみなして、一定期間経過しても行方が不明で、出勤しない場合であれば、会社が退職日を決定して退職手続きを行うことも可能だと思います。

行方不明

その間、会社としては本人の携帯電話への連絡や、メール、自宅訪問、文書の送付等、様々な手段で本人と連絡を取るよう努めることが必要です。その際、会社からの連絡の履歴を記録しておくと良いでしょう。

また、退職手続きをするまでの行方不明期間ですが「50日」が適切だと考えています。なぜなら、従業員が辞職(労働契約終了の申し込みではなく、従業員からの一方的な意思表示。会社からの一方的な労働契約終了の意思表示は、解雇になります。)の意思表示をした場合、一定期間経過後に労働契約は終了することになりますが、この場合は、民法627条2項の適用があるからです。

当該条項の内容は、給与計算期間の前半に退職の意思表示をすれば、その計算期間の終了日をもって労働契約が終了し、後半であれば、翌計算期間の終了日をもって労働契約が終了するというものです。

よって、当該民法の規定により、辞職の意思表示の効力が発生する最も遅い日を上回る日数として、「50日」という設定が適切だと考えます。


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