会社用パソコンの使用範囲は?

会社用パソコンの使用範囲は?

会社が貸与しているパソコンを、社員が私的に利用することによるトラブルを防ぐには、どうすればよいのでしょうか?

→ 就業規則に、私的利用を禁止し、調査をする場合もあることを規定し周知しておく必要があります。

目 次

  • 企業秩序維持権限とプライバシー
  • 就業規則と周知
  • 事例詳細

企業秩序維持権限とプライバシー

  • 使用者には、就業時間中に労働者が使用者の指揮命令下で労務提供を行い、企業秩序を守っているか監視し、また企業秩序違反行為があった場合には事後的に調査する当然の権限がある
  • 社内ネットワークシステムの私的利用が許されている場合には、労働者のプライバシーに関する情報は法的に保護されるべき

就業規則と周知

  • 就業規則には、私的利用の禁止とモニタリングも含めた調査をする場合があることを規定し、、プライバシーが保護される期待はないことを含めて周知しておく
  • 実際に調査等を行う際には、調査の目的、手段、及びその態様にも注意する必要がある

服務規律ついて正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。

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事例詳細

多くの会社では、業務を円滑に遂行するため、社員各自に会社からパソコンが貸与され、社内ネットワークシステムが整備されています。

当社も、各社員の電子メールアドレスは社内で公開されており、社内における連絡手段としても、また、外部に簡単にアクセスすることもできますから、仕事をするには大変便利な環境ですが、便利であるが故に、その利用については、各自のモラルが問われるところです。

とある日、A管理部長のところに、B営業課長がやってきました。

「ちょっと話があるのですが、少しお時間宜しいでしょうか。 昨日自宅のパソコンで、何気なくインターネットをしていたら、とあるネットの掲示板に、明らかに私のことを言っている内容の書き込みを見つけたんです。」

「おーーーB営業課長、掲示板に書き込みですか?・・・で、何て書いてあったんだい?」

「うちの課長はブサイク芸人の○○にそっくりだとか、仕事もできねぇのに、よく課長なんかやってられるなぁ、とか・・・」

「んーーー、でも、B営業課長のことを言っているとは必ずしも限らないんじゃないか?」

「私も信じたくはなかったのですが、他にもありまして・・・。先日、部下のC社員とD社員と一緒に、取引先とゴルフに行ったのですが、実はコースを走って移動しているときに、バランスを崩して転んで、池に落ちてしまったことがあって・・・。そのときの様子が書き込まれていたんですよ。」

「そうか。それは、B営業課長のことかも知れないな。すると、その2人のうちどちらかが書き込みをしたという可能性が高いということか。でも証拠も無いし、会社としても何ともしようがないんじゃないかな。」

「でも、書き込まれた時間が日中のものがあったんです。もし、C社員かD社員が書き込みをしているとすれば、就業時間中に書き込みしているってことですよね?」

「そうだな。仕事中に業務と関係のないことをしているということになるから、就業規則に違反することになるな。それが会社のパソコンを利用して行われていたのであれば、これも就業規則違反ということになる。」

こうして、A管理部長は、C社員とD社員に貸与している会社のパソコンを調査することにしました。

そして、調査の結果、C社員が就業時間中に、会社のパソコンから書き込みをしていることが判明しました。さらに、それ以外にも、わいせつサイトの閲覧記録などが、数多く確認されました。

そこで、A管理部長はC社員と話をすることにしました。

「C君、単刀直入に聞くが、就業時間中に会社のパソコンを使って、業務と関係のないことをしていないか?」

「どうしたんですか部長、いきなり。そんなことしてませんよ。何か証拠でもあるんですか?」

「証拠か・・・。君のパソコンの使用履歴を調べたんだが、業務と関係ない使途でパソコンを使っていると思われる形跡が、たくさん出てきたんだよ。」

「・・・。就業時間中に、業務と無関係なことにパソコンを使用していたことは認めます。すんませんでした。ただ、ひとつ言わせてもらうと、いくら会社から貸与されているパソコンとは言っても、勝手にパソコンの使用履歴を調査するなんて、プライバシーの侵害じゃないですか?」

「会社が貸与しているパソコンなんだから、当たり前だろ。プライバシーの侵害だなんてある訳が無いじゃないか。」

「いいえ。そんなことはありません。絶対にプライバシーの侵害です。謝罪して下さい!」

このように、会社から貸与されているパソコンの使用制限と、使用履歴の閲覧については、プライバシーとの関係から、どのように考えられるのでしょうか。

まず、使用者は、会社の円滑な経営のために、企業秩序を維持する必要があります。

よって、就業時間中に、労働者が使用者の指揮命令にしたがった労務提供を行い、企業秩序を守っているかどうかを監視し、また企業秩序違反行為があった場合に、事後的に調査することは、使用者の当然の権限と言えます。

一方で、労働者は日常生活の大半の時間帯を、労働契約上拘束されているのが通常ですから、社会生活を営む上で、必要且つ合理的な範囲内に限り、社内ネットワークシステムを私的に利用することが許される場合があります。

パソコンの私的利用

ということは、パソコンのデータ内には、労働者個人が私用のために受発信した情報等が含まれることは否めません。そして、こうした情報は、労働者個人のプライバシーに関する情報になりますから、法的に保護されるべきものということになります。

しかし、労働者のプライバシーは絶対的なものではありません。

先ほど説明した通り、使用者には、企業秩序を維持する必要性がありますから、調査を行う際には、企業秩序維持権限と、プライバシーの保護とのバランスが大切ということになります。

具体的には、

  1. 事前に社内ネットワークシステムの私的利用を禁止する旨の規定をしておくこと
  2. 当該規定を周知し、私的に利用した場合に、プライバシーが保護される期待がないことを知らしめておくこと

が必要だと考えます。

これは、事後的調査だけでなく、モニタリングをする場合にも同様です。

そして、前記の2項目に加えてモニタリングも含めた調査をする場合があることも規定化して周知し、実際に調査等を行う際には、職務上の責任ある立場の者が行うこと、責任ある立場にある者でも、専ら個人的な好奇心等から監視をしたりしないこと等、調査の目的、手段、及びその態様にも注意する必要があると言えるでしょう。


服務規律のトラブル

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