有給休暇の時季変更権はどこまで有効?

有給休暇の時季変更権はどこまで有効?

社員が有給休暇の取得を申し出たとき、会社はどの程度その時季を変更させることができるのでしょうか?

→ 「事業の正常な運営を妨げる場合において」は、時季変更権を行使できますが、実務上は注意が必要です。

目 次

  • 有給休暇の時季変更権とは
  • 時季変更権の行使の有効性
  • 事例詳細

有給休暇の時季変更権とは

  • 労働基準法第39条第5項には、「・・・(略)請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と規定されている
  • 時季変更権の行使方法は、「単に指定された年休日には事業の正常な運営を妨げる事由が存在するという内容のものでも足りる」

時季変更権の行使の有効性

  • 「事業」とは、申請した労働者の所属する事業場をいう
  • 「正常な運営を妨げる」とは、事業所の規模、業務内容、当該労働者の担当する職務内容、性質、職務の繁閑、代替要員確保の配置の難易、同時季に有給休暇を指定した員数、これまでの労働慣行などが判断要素になる
  • 実務上は、自主的に調整するような指示が必要

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事例詳細

精密機械部品を製造しているA社では、最近受注が多く大忙しです。

B製造部長は、人員が少ない中、受注に間に合うよう計画を立て、一生懸命資材や人のやりくりをしていました。そんなB部長の部屋に社員Cが入ってきて、こう切り出しました。

「実は今度の連休に合わせて、ちょっとばかり有給休暇を取りたいんですがねぇ・・・」

「何だ急に!今は業務が立て込んでいて、滅茶苦茶忙しいのでちょっとまってくれよ。」

B部長は、Cが提出した申請書を受け取りはしましたが、このように回答を留保しました。

ところがその次の日、今度はCと同じ部署の社員D、EがCと同じ日に有給休暇をとる申請を出してきました。

B部長は慌てました。連休ですら工場を稼働させないと納期に間に合うかわからないのに、同じ部署の社員が3名も休むのは全くもって予想外です。

B部長はイライラしたまま、部屋にC、D、Eを呼び出し、

「君たちは、今、業務が忙しいことを分かっているのに、休みを取ろうなんて、一体どうしたんだ。そもそも君たちの部署は6人しかいないのに、3人も休んだらどうなるかわかっているだろ。君たちの仕事は替えがきかないんだよ。」

と話し始めました。するとCが、

「有給休暇は自分たちの権利だからねぇーーー。それに理由だって別に言わなくてもいいはずだけどな。」

と口を挟んだために、B部長はかっとなり、

「権利も何も、仕事がちゃんとできなければ会社が潰れちまうだろ!!!C!お前の有給休暇は認めないぞ!他の日にしろ!」

と叫び、申請書をCにつき返しました。これを見たD、Eは

「ぶ・ぶ・ぶ・ぶ・部長ーーー!それは、あまりにもひどいんじゃないですかーーー!」

「そうだ、そうだ、部長。それはひどいぞ、ひどいぞ。そんな言い方はないぞ、ないぞ。」

と言い出し、一触即発状態となってしまいました。

さて、B部長は無事に納期に間に合うよう製品を製造できるのでしょうか。

有給休暇の時季変更権とは?

年次有給休暇は労基法39条に定められていますが、第5項で「(省略)請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」とされています。

そこでB部長の言動を検討すると、Cに対し「他の日にしろ!」といい申請書を突き返していますから、この時点でB部長は時季変更権を行使したとみることができます。

なお時季変更権の行使方法については、「労働者の時季指定に対し承認しない旨表示することは時季変更権の行使にあたり、その内容が単に指定された年休日には事業の正常な運営を妨げる事由が存在するという内容のものでも足りる」(広島県他(教員・時季変更権)事件)とされています。

次に時季変更権の行使そのものの有効性ですが、「事業」とは、申請した労働者の所属する事業場をいうこととされ、「正常な運営を妨げる」場合に関しては、事業所の規模、業務内容、当該労働者の担当する職務内容、性質、職務の繁閑、代替要員確保の配置の難易、同時季に有給休暇を指定した員数、これまでの労働慣行などが判断要素とされています(「労働関係訴訟の実務」白石哲編著)。

時季変更件の行使

なお、シフト制となっている事業場の場合には、シフトの調整をすれば代替可能であったところ、それをしなかったことで時季変更権の行使が否定された判例があることに注意が必要です。

これらを踏まえると、A社の業務は連休も操業を考えなければならないほど繁忙であり、かつCらが所属する部署のうち半数から同時期の有給休暇の申請がされていることで、Cらの代替要員を確保することが難しいことからすれば、時季変更権の行使の有効性は高いように思えます。

しかし、3名の中でなぜCだけなのかという点に関しては、恣意的と言わざるを得ないでしょう。

また、感情的なすれ違いから、労務管理上の問題も残るように思えます。

B部長は、いきなりCを指定するのではなく、時季変更権の行使を前提としつつ、3人で自主的に調整するように指示をする方が良かったでしょう。


年次有給休暇のトラブル

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