予防接種を義務付けることは可能?
予防接種を義務付けることは可能?
新型コロナウイルスのワクチンが開発された場合、従業員に予防接種を強制し、予防接種を受けなかった従業員には懲戒処分を科すことはできるのでしょうか?
→ 予防接種の義務付けはできず、仮に予防接種を受けずに感染した従業員に懲戒処分をしたとしても、争いになれば無効と判断される可能性が高いと思います。
目 次
- 予防接種の義務付けと懲戒処分
- 事例詳細
予防接種の義務付けと懲戒処分
- 予防接種には副反応のリスクがあるため、これを無視して、従業員の意思に反して予防接種を受けさせることは適切ではない。
- 予防接種の義務付けができない以上、仮に予防接種を受けずに感染した従業員に懲戒処分をしたとしても、争いになれば無効と判断される可能性が高い。
事例詳細
新型コロナウイルスの感染拡大が、未だに収まらない中、待ち望まれるのはワクチンの開発です。ワクチンが開発されれば、予防接種により、仮に新型コロナウイルスに感染してもその発症を抑えることが期待できます。
「営業部長、今後の売り上げの見通しはどうですか? 最近は景気の悪い話ばかりだが・・・」
「社長、新型コロナウイルスの影響で、年内は厳しい状況が続くと思います。早くワクチンや治療薬が開発されるといいんですけど。」
「ワクチンが開発されたら、まずは、社内で予防接種を徹底することが必要だな。」
「でも、そういえば何年か前に、インフルエンザの予防接種を義務付けた際、拒否した従業員がいましたね・・・。」
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「来月産業医の先生が来社された際に、インフルエンザの予防接種を受けるようにとの話しがありましたが・・・これって義務ですか?」
「まぁ、そうですけど・・・。でも、かかりつけの病院で予防接種を受けるのなら、それでもいいですよ。」
「そうですか。それなら、私はかかりつけの病院で予防接種をするようにします。」
そして、社内での予防接種実施から1ヶ月後、始業前にA社員から電話がありました。
「あの、昨日から体調が悪くて、38℃の熱があるので、お休みをいただきたいです。」
「それは大変だ。でも、まさかインフルエンザじゃないですよね。くれぐれも、お大事に。」
「ありがとうございます。今日中に病院に行きたいと思います。またご連絡いたします。」
そして、その翌日の始業前に、またA社員から電話がありました。
「すみませんが、まだ体調が回復しないので、今日もお休みさせていただきたいです。」
「分かりました。それで、病院には行きましたか? 診断結果はどうでしたか?」
「行きました・・・。あの・・・実はですね・・・インフルエンザにかかっていました・・・。」
「えーっ! インフルエンザ?! Aさん、予防接種受けたんじゃないんですか?」
「実は、注射が大の苦手でして・・・。かからないだろうと、高をくくっていました。」
「・・・そうでしたか。まあ、まずはとにかく、体調の回復に努めてください。」
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「・・・そんなこともあったなぁ。新型コロナウイルスのワクチンが開発されたら、予防接種は必須だな。」
「もしも、予防接種を受けずに感染したら、懲戒処分にしてもいいくらいですね!」
予防接種を従業員に義務付けることはできる?
果たして、会社は従業員に新型コロナウイルスの予防接種を義務付けることはできるのでしょうか。
確かに、ワクチンや治療薬が開発されたとしても、従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、周囲の従業員等に感染が拡大し、その結果、業務全体に支障が生じる可能性は否定できません。そのため、予防接種の義務付けをすることは必要とも思われます。
しかし、現時点では、新型コロナウイルスのワクチンが開発されていないので何とも言えませんが、例えばインフルエンザの予防接種の場合、副反応が生じる危険性も指摘されているところです。
このような副反応のリスクがある以上、これを無視して、従業員の意思に反して予防接種を受けさせることは適切ではありません。そのため、積極的に受けていただきたいところではありますが、「推奨」レベルに留めるべきでしょう。
また、営業部長は、予防接種を受けずに新型コロナウイルスに感染したら懲戒処分と言っていますが、これですと、予防接種を強制することと同じことになります。
予防接種の義務付けができない以上、仮に予防接種を受けずに感染した従業員に懲戒処分をしたとしても、争いになれば無効と判断される可能性が高いと思います。
いずれにしても、一刻も早く新型コロナウイルスのワクチンや治療薬が開発されることを願ってやみません。
懲戒処分について誤った対応をすると、不要なトラブルに発展する可能性があります。
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