懲戒処分における社内公表について

懲戒処分における社内公表について

非違行為に対する懲戒処分について、氏名を含めて社内公表することは可能でしょうか?

→ 懲戒処分となった行為が、悪質重大で企業に多大な影響を与える場合には、懲戒を受けた社員の氏名を公表することは可能ですが、就業規則に懲戒処分の際、氏名等も含め懲戒処分の内容を社内公表する場合がある旨の規定は設けておくべきです。

目 次

  • 公表する前に検討すべきこと
  • 事例詳細

公表する前に検討すべきこと

  • 公表の目的
  • 事案の性質・内容(職務関連性等)、事案の重大性(処分の重さも含む)
  • 関係者の名誉、プライバシー等への配慮

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事例詳細

当社は、システム開発を主とした中小企業です。

当社では、仕事内容も個人単位で行うことや、育児と両立して働きたいという要望もあったことから、会社が許可した社員には、在宅勤務を認めることとしました。

最近は人手不足の中、正社員の採用がうまくいかず、この度、初めてアルバイトの募集をかけ、新たに1名を採用しました。

ある日の事です。

「社長、先日在宅勤務を認めた社員が、虚偽の報告をして、勤務日に結婚式に出席していることが発覚しました。」

「なに!?それはけしからん。その社員については、今後在宅勤務を禁止するほか、懲戒処分とする。」

「かしこまりました。社長、その社員以外にもこういうケースがあるかもしれません。気を引き締めてもらうためにも、個人名を含め、社内公表を検討してはいかがでしょうか?」

「そうだなあ。しかし、それはプライバシ―の侵害だ!とか言われるのではないだろうか?問題ないのかね?」

さて、今回の懲戒処分について、氏名等含め社内公表をすることはできるのでしょうか。

社員に対して懲戒処分が行われた場合、社員の非違行為によって乱された企業秩序の回復を図り、同様の案件の再発を防止するため、企業が、懲戒処分に関する事項を社内公表することには、ある程度の必要性が認められると考えます。

一方で、社内公表される社員のプライバシーや人格権に配慮しなければなりません。

特に社員のプライバシー保護の観点から、個人情報保護法に注意する必要があります。

個人情報保護法第18条2項は、「個人情報取扱事業者は、書面等に記載された個人情報を、直接本人から取得する場合には、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない」としています。

これを踏まえると、社員の氏名の利用目的に、懲戒処分の際には公表することが含まれる場合、この利用目的を、入社時にあらかじめ本人に明示しておかなければならないことになります。

しかし、入社時に懲戒事実の公表が利用目的の一つである旨を、個別具体的に明示することは、これから入社する労働者にとって印象が良くないのではないかと思います。

したがって、人事労務管理に関わる諸手続きに利用するという目的の下に個人情報を取得し、別途就業規則に「懲戒処分の際に、会社は、懲戒対象者、懲戒の区分、懲戒事由等の懲戒事実を公表することがある。」といった内容を規定して、周知させることによって、労働契約の内容としておくのが実務的だと思います。

ただし、規定化し、周知していたとしても、懲戒事実の公表が名誉毀損に該当し、不法行為が成立する可能性もありますので、以下のような事情を総合考慮して、事案ごとに決定するべきだと考えます。

  1. 公表の目的
  2. 事案の性質・内容(職務関連性等)、事案の重大性(処分の重さも含む)
  3. 関係者の名誉、プライバシー等への配慮

確かに、懲戒処分を受けた社員の氏名を社内公表することで、その懲戒事案に対する意識が高まり、他の社員にも氏名は公表されたくないという思いが生じ、企業秩序の回復や、同様の案件の再発防止に繋がるでしょう。

しかし、懲戒を受けた社員の氏名を公表せずとも、懲戒処分の対象とされた行為、および懲戒処分の内容を公表すれば、同じような効果が得られると考えます。

個人情報やプライバシー等の意識が高まっている昨今では、実務上は、よほどの重大な事案でない限り、社員の氏名、所属部署、役職といった個人が特定可能な事実は、社内公表しない方がよいでしょう。

ただし、懲戒処分となった行為が、悪質重大で企業に多大な影響を与える場合には、企業秩序維持の回復、および同様の案件の再発防止の観点から、懲戒を受けた社員の氏名を公表することが考えられます。

したがって、就業規則に、懲戒処分の際、氏名等も含め、懲戒処分の内容を社内公表する場合がある旨の規定は、設けておくべきです。


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