業務中の事故と従業員の負担について

業務中に事故を起こした従業員が遺族に支払った損害賠償額を、会社が負担するよう求められたら支払わなければならないのでしょうか?
従業員は損害賠償責任保険に自分で加入することはできず、重い損害賠償義務を負うのは著しく不利益であり不合理なため、会社の負担が認められる可能性があります。
このコンテンツの目次
  • 業務上事故が起きた場合
  • 運送業の場合
  • 事例詳細

業務上事故が起きた場合

  • 従業員が業務上事故を起こした場合の損害の負担は、会社がその損害を被害者に対して支払った場合はその額の一部を従業員に払わせることができる。
  • ただし、事業の性格や(従業員の)業務の内容などの事情を損害の公平な分担という観点から信義則上相当と認められる範囲で認められる。

運送業の場合

  • 事業者が事故により損害賠償義務を負う一定の可能性がある。
  • 従業員が任意保険を自ら締結できない状態で、重い損害賠償義務を負うのは著しく不利益であり不合理。

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事例詳細

ある日、北大塚運輸に、裁判所から1通の郵便が届きました。

とくに思い当たる節もなかった総務部長は、何げなく中をあけてみると、なんと「口頭弁論期日呼び出し状及び答弁書催告状」とあるではありませんか。

びっくりした総務部長は、慌てて内容を確認すると、社長室に飛び込み「社長! あのAが、わが社を訴えてきました!」と報告を始めました。

そして、総務部長はAを呼び出し、こう言いました。

総務部長

なんだこれは、あの事故はお前が悪いんじゃないか。悪いから事故の遺族に自分で損害賠償をしたんだろ。すぐに取り下げろ!

いやあれは配送中の事故ですから、全部私が補償するのは不公平じゃないですか。1,500万円も払ったんですよ。運送業なのに自賠責しか入ってないって、どういうことなんですか! 遺族との交渉など全部自分でやるしかなくてほんっと大変だったんですよ。

総務部長

自賠責を超えて補償が必要な場合は、全部会社が支払ってるんだ。あの事故は交差点を君が左折する際注意をしていれば、横断歩道にいた自転車をひかなかったんだろ。大体、あんな事故を起こしてもうちが雇っているから遺族への損害賠償だって支払えたんだろ。それなのになんだ、すぐに取り下げろ!

絶対取り下げないし、会社も辞めません!

業務上の損害は従業員に全額負担させられる?

さて、北大塚運輸とAの間の問題は、Aが業務中に死亡事故を起こした結果、Aが遺族から損害賠償請求を受けAが支払いを行ったものの、今度はAが遺族に支払った額を限度に北大塚運輸に支払いを求めたという内容ですが、裁判所ではAの主張はどうなるのでしょうか。

まず、従業員が業務上事故を起こした場合の損害の負担は、会社がその損害を被害者に対して支払った場合はその額の一部を従業員に払わせることができます。

ただし、損害額の全部を払わせるのは難しく、事業の性格や(従業員の)業務の内容などの事情を損害の公平な分担という観点から信義則上相当と認められる範囲で会社は従業員に払わせることができる(茨石事件 最高裁一小 S51.7.8)とされています。

しかし、北大塚運輸とAの関係はこの逆です。

令和2年2月28日の最高裁では、福山通運株式会社に対して行われた同趣旨の訴訟で、茨石事件等を引用した上で、

使用者が損害賠償を行った場合と、従業員が損害賠償を行った場合で、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当ではない。

として、従業員からの逆求償権の行使を認め、審理を高裁に差し戻しました。

任意保険を締結できない者の全額負担は不合理

注意を要するのは判決に付された補足意見で、任意保険に加入しない点について、

トラック運転手として勤務している従業員について事故の損害を従業員の負担とするのは従業員に著しい不利益をもたらすのに対し、多数の運転手を雇用し運送業を営んでいる使用者は、事故に伴う損害負担は、変動係数の少ない確率分布に従う偶発的財務事象として取扱うことが可能であり、特に使用者が上場企業である場合は、最終的な利益帰属主体である株主は投資を組合わせるなど自らのリスクの大きさを自身で選好して調整できる。使用者が損害賠償責任保険に加入しなかったのは事業目的の遂行上利益となると判断した結果と考えられる反面、従業員は同保険に加入していれば受けられる支援を受けられないのであるから、同保険に加入しないことは被用者の負担を小さくさせる要素である。

とされた他、運送事業の許可基準は、事業者が事故により損害賠償義務を負う一定の可能性があることを前提にし、かつ従業員が任意保険を自ら締結できない状態で重い損害賠償義務を負うのは著しく不利益であり不合理なものであると指摘しつつ、任意保険に加入していなければ従業員が使用者に求償できる額は大きくなるとの意見が付されていることです。

事案は貨物運送事業ですが、逆求償権の行使は他の業種でもあり得ることですから、車を業務で使用する場合は損害額が大きくなりがちなので、保険の加入の有無、および保険の内容を確認したほうがよいです。

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