協調性不足の社員が部長職を要求してきた?

当社は、東京に本社を構える、約50名程の機械製造・販売業です。この度当社は、新規顧客の開拓を強化しようと考え、中途採用をすることにしました。

応募してきたAさんは、年齢55歳と若手ではありませんが、過去には一部上場企業に勤務し、海外勤務等の経験もあることから、こうした豊富な経歴を活かして営業活動を行ってもらえたらよいのではないかと考えていました。

部長職

一方Aさんも、キャリアのある方ですから、採用後は、社長室付き、あるいは部長待遇等の役職に就くことを強く希望していました。

当社としては、いくら経験豊富であったとしても、いきなり部長待遇というのは、これまで前例が無く、とりあえず1年間は、Aさんの能力や勤務ぶり等を見極めるために、嘱託として採用することにしました。

しかしながら、入社してまもなく1年が経とうとしているのに、勤務報告書の内容等は物足りるものではなく、そして、入社の際にA社員が説明していたようなキャリアに見合うような営業成績もあげられない状況が続いていました。

「嘱託期間が、あと1ヶ月ちょっとで終了しますが、A社員の勤務ぶりはいかがですか。」

「期待していたレベルには、及んでいないというのが正直なところですが、一般社員としてであれば、問題無いと思います。A社員が希望していた部長待遇としてということになると、難しいですね。」

「そうですか。面接の際には、嘱託としての期間が経過した後は、正社員として採用するつもりだったから、部長待遇は無理としても、正社員としては雇用することにしよう。A社員に正社員用の労働契約書を送付するようにしておきますよ。」

こうして、A社員は正社員として雇用されることになりましたが、その後、A社員から総務部長宛に、「質問状・意見書」なる書面が送られてきました。

書面には、「平社員では契約できない。部長待遇でなければ契約しない。そのことは、専務とも約束している。」というような内容が書かれていました。

これを受けて、営業部長はA社員を呼んで、話し合いの場を設けました。

「この間お渡しした労働契約書の件ですが、署名押印の上、提出して頂けないのですか。労働契約書と一緒に送付した書面にも記載の通り、会社としては、Aさんに役職に就いて頂くことは考えておりません。」

「先日、総務部長にも書面で申した通り、平社員ということでは契約できません。それに、労働契約書を提出すると、平社員であることを了解したととられる恐れがあるから、労働契約書は提出しません。」

こうして、A社員は、執拗に部長待遇の役職を要求し続け、話し会いは平行線のまま終了しました。

その後、A社員の仕事ぶりはこれまでにも増して会社の期待とは程遠いものとなっていきました。

A社員には、当社製品の試運転や修理等の技術がなかったので、A社員が契約した案件について製品を納入する際には、試運転ができる営業社員を同行させる必要があるのですが、A社員は、他の営業社員の都合に配慮することなく、勝手に日時を決めて、命令調で同行を指示するなど、自分中心に独断的な行動に出て他の営業社員から反発されたこともありました。

その後も、再び総務部長が話し合いの場を設けたのですが、A社員からは、「質問状の回答がない」「会社に誠意がない」、と従前の主張が繰り返されるのみで、勤務態度も変更されることもなく、相変わらず労働契約書も提出されなかったことから、会社は後日、A社員に解雇を通告しました。

本件は、実際に裁判で争われた事件ですが、裁判所は、解雇の有効性について、「A社員は、期待されている職責を積極的に果たそうとせず、勤務状況が劣るようになり、また、自己の主張に固執して、独断的な行動が多く、協調性に欠けていて、2回に渡る話し合いにおいても、総務部長に対して、従前の主張を繰り返し、勤務態度を改めようとの姿勢が、全く見られなかったのであるから、本件解雇は客観的に相当な理由があり、権利の濫用にあたらず、有効であるというべきである。」としています。

また、A社員が執拗にこだわった部長待遇という役職についても、「従業員を役職につけるかどうかは、会社の人事権に属し、その裁量的判断が尊重される事項であり、会社がA社員の勤務ぶりを見た上で、A社員を役職につけないと明言しているにも関わらず、納得できないとの理由で役職を要求し、労働契約書を提出しないことは、労働契約書未提出の正当な理由とは言えない」としています。

今回の事例も含め、協調性不足というのは、重要な普通解雇事由になります。

ブルーカラーの職場だけでなく、ホワイトカラーの職場でも、集団で労務提供をするのが通常ですから、必然的に他の従業員との協調性は欠かせないものになります。

そして、協調性に欠けていることで業務に支障が出ている場合には、労働者の債務不履行であり、使用者が、協調性不足を是正するための措置をとったにも関わらず、改善されなければ解雇も検討せざるを得ないということになります。

重要なのは、協調性の有無についての判断は、多分に主観的な部分が含まれていますので、明確に記録を残しておくということです。

つまり、日常業務の中で注意・指導を行っていればその内容を記録として残しておき、当該従業員のどのような言動が、協調性を乱し、どのような業務支障を生じさせたかについて、後日明らかとなるようにしておくことが重要です。

なお、配置転換できる可能性があれば、日常の注意指導に加えて、配転させて改善の機会を付与する必要はあると思います。


服務規律のトラブル

サブコンテンツ

このページの先頭へ