健康診断結果を提出しない社員は問題?

健康診断結果を提出しない社員は問題?

会社が社員に受診させなければならない健康診断ですが、社員がその結果の提出を拒んだ場合、会社は提出を命じることはできるのでしょうか?

→ 労働安全衛生法に定められた項目に関する健診結果は、提出を命じることは可能といえます。しかし、特別健診等は、同意が必要です。

目 次

  • 法定項目と特別健診等
  • 実務上の対応
  • 事例詳細

法定項目と特別健診等

  • 労働安全衛生規則に定められた項目に関する健診結果は、会社帰属情報となる
  • ただし、法定項目以外の特別健診(婦人科健診など)は、社員本人の同意が必要

実務上の対応

  • 健康に関する個人情報なので、慎重な取り扱いが求められる
  • 労働者の健康状態に関するプライバシーの問題は、取得後の管理の問題といえる
  • 社員の健康情報の収集は会社の義務であること、情報管理を徹底していることを十分に説明しておく

社員に健康診断を受診させることは、会社の義務であり、社員にもその趣旨を理解してもらう必要があります。

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事例詳細

当社では、例年1月の下旬頃に、従業員の定期健康診断を実施しています。しかし、今年は例年通りの時期に定期健康診断の実施予約をすることができず、1月の上旬に実施することになりました。

1月の上旬と言えば、忘年会・新年会等、暴飲暴食を経た直後ということもあり、一部の従業員からは、不満の声もありましたが、定期健康診断の実施は、少なくとも1年に1回以上ということもあり、前倒しで実施することになりました。

「ねぇねぇB子さん、今年の健康診断の結果はどうだった?なんか私ショックでさーーー。」

「私ですかぁ~?年末年始の不摂生のせいですかねぇ~。去年に比べて体重なんか激増しちゃって、とても人には見せられませんよ。」

「えぇ~、でもB子さん、そんな風に全然見えないけどな~。私なんて、もう最低ーーー。」

「そんなことないですよ~。A子さんこそ、見かけと違って全然大丈夫ですよ。きっと。」

健康診断後には、よくこんな会話が、繰り広げられるものの、ほとんどの従業員は、そのまま直属の上司に健診結果を提出します。

しかし今年は、女性社員のCさん1名が健診結果を提出しておらず、そのまま1週間が経過しました。

「Cさん。健康診断の結果ですが、まだ提出されていませんので、私か直属の上司のD課長まで速やかに提出して下さい。」

「すいません総務部長。今日は、自宅に忘れてしまって・・・。明日D課長に提出します。」

ところが翌日になっても、Cさんから健康診断の結果が提出されませんでしたので、D課長は、退社前にCさんを呼び出しました。

「Cさん。健康診断の結果ですが、持ってきましたか?早く提出してください。」

「・・・はい、持っては来たのですが、・・・どうしても提出しなきゃダメですか?」

「そりゃそうですよ。私も会社から言われているもんでね。早く出して下さいよ。」

「・・・私、出したくありません。そもそも健康情報は、私のプライバシーじゃないですか?」

「プ、プ、プライバシーかも知れないけど、私だって、会社から言われているんだからさぁーーー。」

「確かに会社からの命令かもしれませんが、私にだってプライバシーがあります。会社だからといって私のプライバシーを侵害してもいいんですか?」

「プ、プ、プライバシーの侵害って言われても・・・。出してくれなきゃ総務部長に怒られちゃうよーーー。」

個人情報保護法が施行されて以来、健康診断の結果について、医療機関等から会社に直接通知がされなくなるケースが見受けられます。

そのため、会社は労働者に対して、健康診断の結果の提出を求めることになりますが、例のように「健康情報はプライバシーだから、会社に提出する義務はない。」などと言われた場合、どのように対応してよいのか苦慮することになります。

この点、プライバシーの定義を誤解していることが原因だと思われますが、一般的には「個人情報や私生活をみだりに公開されない権利」と考えられています。

健康診断

そう考えますと、健康状態もプライバシー権で保護されるべき個人情報でありますので、慎重な取り扱いが求められることには異論はありませんが、国民としてのプライバシーと労働者としてのプライバシーとは、必ずしも同一ではありません。労働契約関係においては、労働者は、会社との間で労働契約を締結しています。

そして、労働契約の内容には、労働者が債務の本旨に従って労務提供を履行できる健康を有していることが含まれているわけですから、原則として、労務提供に関連した健康状態に関し、会社が取得することが許されないというわけがなく、当然に取得できると考えられます。

つまり、労働者の健康状態に関するプライバシーの問題は、会社が健康に関する個人情報を取得できるかどうかということではなく、取得した情報をどのように管理するかという、取得後の管理の問題と言えます。

その点、労働安全衛生法においても、第66条第1項で健康診断の実施を使用者に義務付け、そして同法第66条の6で当該健康診断の結果を労働者へ通知する義務を規定している(いずれも違反した場合には50万円以下の罰金の対象)ことからすれば、会社が、健康診断の結果を取得することが前提となっていることは明らかであり、健康診断の結果は、労働者に帰属するものではなく、会社帰属情報であると言えます。

ただし、健康診断の受診、及び結果通知の内容としては、労働安全衛生法上、最低限行うべき法定項目に関して、その実施を求めている点には注意が必要です。

つまり、法定項目以外の特別健診(例えば婦人科健診など)は、労働安全衛生法によって、会社に義務付けられているものではありませんので、当該健診結果が会社に通知されることについて、労働者が必ずしも承諾の上で、受診したとも限らないということです。

したがって、労働安全衛生法に定められた法定項目以外の健診を実施し、その結果を会社に通知してもらおうとする場合には、原則通り、本人の同意が必要となりますので、この場合には、会社へ当該健診結果が通知されること(あるいは会社へ当該健診結果を提示すること)を条件として特別健診を受診させることになります。もちろん、健康診断の法定項目については、既に説明した通り、会社帰属情報であることには変わりありません。

よって、特別健診を受診したことにより、法定項目と法定外項目が同一書面に記載されている場合でも、それを理由として、法定項目に関する健診結果を会社に提示しないことが正当化されることにはなりませんから、会社は法定項目に関する健診結果について提出を命じることは可能と言えます。

しかしながら、実務上は従業員が、会社に対して協力体勢をとりやすい様、会社が従業員の健康情報を収集するのは労働安全衛生法上の義務、及び安全配慮義務を全うすることが目的であること、そして、収集した健康情報は人事担当者や健康に関連する部署の者、あるいは上司等に限定し、それらの者には絶対に他言しないように情報管理を徹底しているということを、従業員に対して十分説明をしておき、円滑に健康情報を取得できるようにしておくべきでしょう。


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