定年後再雇用の賃金はどうする?(1)

定年後再雇用の賃金はどうする?(1)

定年後に再雇用する社員の、賃金を下げることは問題ないのでしょうか?

→ 定年後の再雇用が有期雇用であるからという理由で賃金を下げることは、労働契約法違反と判断される可能性があります。

目 次

  • 労働契約法の原則
  • 実務上の留意点
  • 事例詳細

労働契約法の原則

  • 労働契約法第20条によると、業務内容と責任の程度、職務内容と配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、有期雇用であることを理由に、不合理に労働条件を相違させてはならない

実務上の留意点

  • 無期雇用の社員と有期雇用の社員の間における業務内容や責任の程度、異動の範囲などを整理する

定年や再雇用について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。

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事例詳細

長年、大塚運輸に勤務していたAさんは、もうすぐ誕生日。会社が定める定年年齢の60歳になります。

Aさんは多少健康に問題がありますが、働く気は十分にあります。ある日、総務部長のBさんに呼び出されました。

「Aさん、長い間お疲れ様です。今年の○月○日で定年になりますが、その後はどうされますか?」

「あーーー総務部長。私はピンピンしてまだ動けますので、定年後も是非お願いします。」

「そうですか、では定年退職後の再雇用社員ということになり、労働条件が変わり1年ごとの有期雇用になるのと、基本給が今よりも30%減り、これまであった勤続給のような昇給はなくなります。勤務と始業終業の時刻、担当するコースは今までと同じでいいですか?」

「えーーーっ、そんなに減るんですか?勤務日数とか勤務時間とかは今までと一緒なんですよね?」

「そうですよ。定年後に再雇用で働いている方は、みんな同じ条件ですし、自分もこのまま定年になればきっと、そうなりますよ。」

「しかし、仕事の内容が同じなのに、給与だけ減るなんて、そんなの納得いきませんよ!」

「そんなこと言われても、こういうルールなんだから、応じてくれないと再雇用できないですよ。」

こうしてこの日は話が終わってしまいました。AさんとB部長、どちらの言い分が正しいのでしょうか?

AさんとB部長の会話の3年前、平成25年4月1日に改正労働契約法が施行され、新たに第20条が発効しました。

その内容は、“同一の使用者と労働契約を締結している有期雇用労働者と、無期雇用労働者との間で、期間の定めがあることにより、不合理に労働条件を相違させることを禁止する”というものとなっております。

厚生労働省はこの規定に関して“民事的効力のある規定で、法第20条により不合理とされた労働条件の定めは無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解される”としています。

そして平成28年5月13日には、定年到達前と再雇用後の労働条件の相違の合理性が争点の一つとなった長澤運輸事件の判決が東京地裁民事11部ででました(同社は同16日に控訴)。

この事件の場合は、定年退職後、再雇用された社員3名の労働条件のうち、基本給が減額されるなど賃金面での処遇が問題となりました。

訴訟になる前に会社は、社員3名が加入する労働組合と団体交渉を開催し、賃金の一部については改善を図ったようですが、解決を図ることはできず、訴訟となりました。

結果的に言えば裁判所は、労働者側の主張を認め、高年齢者雇用安定法により高年齢者の雇用確保措置が段階的に義務付けられていることを認め、賃金コストの無制限な増大を回避するために、定年後継続雇用者の賃金を定年前から引き下げること自体には合理性があるとしつつ、長澤運輸の場合には同法20条が明示する、

  1. 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、
  2. 当該職務の内容及び配置の変更の範囲、
  3. その他の事情

このうち 1、2について、定年再雇用後に有期雇用となった者と正社員は同一であると認め、3についても特段会社側の措置を裏付けるような事情はないとし、同法第20条に違反し無効とすると結論づけ、さらに長澤運輸の就業規則が、原則として全社員に適用されるところ、定年後再雇用社員の労働条件が無効となるため、無効となった部分については正社員と同様の労働条件となるとしました。

労働契約法第20条に関しては、無期雇用の社員と有期雇用の社員の手当支給の差が問題となって、大阪高裁で手当の差額分の支給を認める判決が出たハマキョウレックス事件(大津地裁 彦根支部 平成27年9月16日)などがあります。

このほかにも現在訴訟が行われている東京メトロコマースなどの事案もあり、今後同種の問題が頻発することが予想されます。

そのため無期雇用と有期雇用の社員が存在し、かつ、それらの職務内容や異動の範囲が同一の場合、特に給与面での相違があるかどうか確認が必要であり、相違がある場合には、無期雇用の社員と有期雇用の社員の間における業務内容や責任の程度、異動の範囲などを整理する必要があるでしょう。

さて、大塚運輸の場合はどのようになりそうでしょうか?

Aさんが争わなければ、そのままとなるかもしれませんが、訴訟となった場合には大塚運輸の分が悪そうですね。

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労働条件変更のトラブル

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