勤務地限定で雇用した者に配置転換は可能?

勤務地限定で雇用した者に配置転換は可能?

人間関係のトラブルを解消するため、勤務地限定で雇用した者を配置転換させることはできるのでしょうか?

→ 労働契約の範囲外であれば、配転させるには従業員の合意が必要です。

目 次

  • 配転命令の有効性
  • 実務上の留意点
  • 事例詳細

配転命令の有効性

  • 労働契約の範囲内である限り、法的拘束力を持つ
  • しかし、パートタイマーや、労働契約の内容が勤務地限定や職種限定であれば、配転命令は契約の範囲外となり、配転させるには従業員の合意が必要

実務上の留意点

  • 紛争防止のためには、就業規則や個別の労働契約書において、転勤や職種変更の有無を明記し、本人に十分説明しておくことが必要

配置転換等の人事異動についても就業規則の記載内容によってはトラブルに発展する可能性があります。

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事例詳細

当社は、大阪本社の他、全国8ヶ所に支店を置いています。

営業社員のAさんは、静岡支店に正社員として入社して2年が経過し、営業成績は静岡支店でもトップクラスですが、他の従業員との折り合いが良くないようです。

そこで支店長は、本社とも相談し、本人を配置転換しようと考えていました。

「A君、大阪本社で来月から新しいプロジェクトを立ち上げることになってな、君に是非このプロジェクトに参加してもらいたいんだが?」

「転勤ですかーーー?支店長、何言ってんですかーーー。それは絶対に無理っすよーーー。」

「どうしてだ。君にとっては、せっかくのチャンスなんだぞ。それに大阪はいいところだよ。」

「嫌だなー支店長。覚えてないんですか?私が採用される過程の中で、家庭の事情で静岡以外には勤務できないと申し上げていたことを。」

「そ、そ、そうだったかなーーー。最近、物忘れがひどくなってきたような気がして・・・。」

「そうですよ。私は、面接の時にはっきりとその旨申し上げました。それに対して、支店長は、承った旨回答してくれたじゃないですか。」

「まぁ、そうかも知れないが、君のこれまでの営業成績を評価してのことだ。何とか考えてくれないかな。」

こうして、2人の話し合いは物別れに終わり、1週間が経過しました。

「A君。この間の大阪転勤の件、もちろん考えてくれたよね。・・・で、どうなんだね?」

「はい考えました。私は、入社時に勤務地を静岡に限定して契約しています。家庭の事情もありますし、やはり転勤に応じることはできません。」

支店長は、何とか説得を試みましたが、話し合いは平行線で、A社員が配転命令に応じることはありません。

「そうか。私としては大変不本意だが、配転命令拒否は、解雇になるぞーーー。」

「私は勤務地を静岡限定で採用されています。それなのに、会社の一方的な命令に従わなかったら解雇なんて、あり得ないですよ!」

A社員は、かなり激しく怒っていましたが、会社も、別居手当の増額や、一時帰省に必要な交通費の支給、帰省休暇の付与、転勤費用の負担等の条件を提示してきたこともあり、A社員は、「異議を留めた上で」、転勤に応じることとしました。

しかし、大阪本社に赴任したA社員は、数年後に結局解雇されることになり、その後、会社宛に訴状が届き、裁判となりました。

裁判所は、「A社員が採用面接において、採用担当者である支店長に対して、家庭の事情で静岡以外には転勤できない旨を明確に述べて、支店長もその際に否定しなかったこと、そして支店長が本社に採用の稟議を上げる際、A社員が転勤を拒否していることを伝えたのに対して、本社からも何らの留保を付すことなく採用許可の通知が来て、採用となったことが認められ、そして会社がA社員に対し、転勤があり得ることを明示した形跡もない以上、A社員が応募するに当たって転勤が出来ない旨の条件を付し、会社がそれを承認したものと認められるから、雇用契約において勤務地を静岡に限定する旨の合意が存在したと認めるのが相当で、本件配転命令が、勤務地限定の合意に反するものであり、A社員の同意がない限り無効である。」としました。

マンション

配転命令は、労働契約の範囲内である限り法的拘束力を持つため、従業員はそれに応じる義務があります。

特に、長期的な雇用を前提とした正社員については、長期雇用が前提であるが故に、職種や勤務地等を限定せずに採用され、定年まで様々な職種や職場を経験することが予定されていることから、配転命令は、強く肯定されています。

しかし、パートタイマーや、あるいは正社員という呼称であっても、その労働契約の内容からして勤務地限定であったり、職種限定であったりすれば、配転命令は、契約の範囲外となりますので、配転させるには、従業員の合意が必要になります。

もちろん、複数の事業場を有する会社においては、仮に求人票や、求人広告等に勤務場所として、例えば「東京本社」と記載されていたとしても、それは単に、採用当初の勤務場所を示してあるに過ぎない(要するに勤務地限定の合意とは認められない。)と判断される傾向が強いものの、やはり紛争防止の観点から、就業規則や個別の労働契約書において、転勤や職種変更の有無を明記し、本人に十分説明しておくことが必要だと思います。


配転・人事異動のトラブル

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