配置転換や人事異動を拒否したら?
配置転換や人事異動を拒否した場合、懲戒解雇できるのか?
配置転換や人事異動を社員が拒否した場合、拒否したことを理由として懲戒解雇することはできますか?
→ 正社員に対する配置転換命令権は強く肯定されており、懲戒解雇することは可能です。考え方の目安と事例詳細を以下にご紹介します。
目 次
- 懲戒解雇できる理由
- 権利の濫用とされる場合
- 事例詳細
懲戒解雇できる理由
- 正社員には長期的な雇用を前提としており、職種や勤務地なども限定されないため、配置転換命令権は強く肯定されている
- 会社が有する人事異動命令権を機能させるには、懲戒解雇せざるを得ません
- ただし、仕事内容や勤務地が限定された雇用契約がある場合は、その範囲内に限定されます
権利の濫用とされる場合
- 不当な動機や目的に基づく配置転換である場合
- 従業員が被る不利益があまりにも大きい場合
- 業務上の必要性がない場合
- 人員選択が合理的ではない場合
- 配転手続きや経緯に問題がある場合
配置転換等の人事異動についても就業規則の記載内容によってはトラブルに発展する可能性があります。
就業規則への具体的な記載方法は、以下のセミナーで詳細を解説しています。
セミナー参加者特典として、無料個別相談で疑問点をすべて解消することもできます。
今後の開催予定
2019/03/08(金) 受付開始 9:30 セミナー開始 10:00~17:00
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2019/05/10(金) 受付開始 9:30 セミナー開始 10:00~17:00
事例詳細
A社員に転勤命令を伝えると・・・
配置転換とは、労働者の配置の変更であって、職種・職務内容、または勤務場所が相当長期間にわたって変更されることを言います。
配置転換の目的は、労働者の能力や適正に応じたものであったり、多様な業務経験による能力開発であったりあるいは組織の活性化や雇用調整等様々です。
全国展開する当社も、7月に大規模な人事異動を予定しています。
正式な辞令に先立つこと1ヶ月前、人事部長は転勤対象者のA社員に、その内示を行うことになりました。A社員は、入社15年目の中堅社員で、東京本社では、営業課の主任を務めています。
「A君。来月からなんだが、大阪支店へ転勤してもらうことになったので、よろしく頼むよ。」
「えっ!マジっすかーーー!!!私が大阪へ転勤ですかーーー?何で私なんですかーーー?」
「大阪支店に欠員が出てね。その後任として、是非君に頑張ってもらいたいんだ。君のキャリアアップにもなるし。君を評価してのことだ。」
「評価して頂けるのはありがたいんですが・・・。何でこの時期に私なんですか?」
「何か不満でもあるのかね?赴任手当も出るし、経済的にも得だぞ。いい話しじゃないか。」
「実は、先日東京にマンションを購入したばかりで、しかも年内には結婚する予定なんです。妻も東京で勤務していますし、加えて妻の両親の体調も思わしくない状態でして・・・。」
「そうか・・・。君の事情も分からんでもないが、会社としても組織として活動している訳だし、君も正社員の立場上、人事異動はつき物だろう。ともかく、1週間じっくり考えてみてくれないか。」
「わ、わ、わかりました・・・。せっかく無理してマンション買ったのになーーー。」
そして1週間後、再び話し合いが持たれ、人事部長は何とか説得を試みましたが、結局、不動社員が転勤命令に応じることはありませんでした。
「そうかーーー。私としては大変不本意だが、今回の転勤命令拒否は、就業規則により、懲戒処分の対象になるぞ。」
後日、社内で懲戒処分についての会議が行われ、その結果を人事部長が不動社員に伝えることになりました。
「誠に遺憾だが、君は転勤命令拒否ということで、就業規則の規定により懲戒解雇と決まったよ。」
「ちょ、ちょ、懲戒解雇?マジっすか???それはあんまりでしょう!これまで一生懸命会社のために頑張ってきたのに、就業規則の規定だけで、あまりに一方的すぎます。」
「残念だが、役員会で今回の処分は決まったんだよ。今さらどうしようもないね。」
「そんな懲戒解雇なんて絶対にできるわけないでしょ!こうなれば僕も会社と戦うしかありません!」
正社員に対する人事異動命令権は?
さて、一般的に正社員とは、長期的な雇用を前提としており、そのため職種や勤務地等を限定せずに採用され、定年まで様々な職種や職場を経験することが予定されていますから、正社員に対する配置転換命令権は、強く肯定されています。
したがって、人事異動命令を拒否した場合には、懲戒処分の対象となるのですが、例えば、その処分として、「出勤停止」とした場合、本人は甘んじて「出勤停止」処分を受け入れることも考えられます。
そうなると、会社が有する人事異動命令権が機能しなくなってしまいますから、会社としては、「懲戒解雇」処分を選択せざるを得ないことになります。
権利の濫用か否かの判断基準は?
しかし、配置転換の意図が、不当な動機や目的に基づくものであったり、業務上の必要性があっても、従業員が被る不利益がそれを大きく上回ったりする場合には、権利の濫用とみなされることがあります。

裁判例では、転勤に伴い「通常甘受すべき不利益」という表現を用いて権利の濫用か否かを判断しましたが、その範囲は、一般人の感覚よりも広く、「病気がちの親の面倒をみたい」、「子供が幼少で、単身赴任を余儀なくされる」という程度の事情では、転勤拒否の正当な理由にならないとみなす傾向にあります。
しかし、親の面倒をみる必要がある場合でも、それが代替不可能であるという事情がある場合や、例えば子供が病気であって、専門的な治療の必要性から転院が不可能であるという事情がある場合には、「通常甘受すべき不利益」の程度を著しく超えると認められる可能性が高いと思われます。
加えて、昨今の社会状況を反映し、介護を要する高齢の両親がいる従業員の転勤問題には、企業に求められる配慮が大きくなっており、慎重に対応するべきだと思います。
配転・人事異動のトラブル
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