懲戒前自宅待機は無給でもよいか?

懲戒前自宅待機は無給でもよいか?

懲戒処分の実施の有無や程度を検討するため、社員に自宅待機を命じた場合、給料を支払わなければならないのでしょうか?

→ 賃金支払い義務を免れるためには、自宅待機命令に緊急かつ合理的な理由があること、就業規則に明示していることが必要です。

目 次

  • 賃金支払い義務
  • 就業規則に規定する
  • 事例詳細

賃金支払い義務

  • 原則、自宅待機は、「一種の職務命令とみるべきものであるから、使用者は当然にその間の賃金支払い義務を免れるものではない。」
  • 賃金支払い義務を免れるためには、緊急かつ合理的な理由または懲戒規定上の根拠が必要

就業規則に規定する

  • 不正行為の再発、証拠隠滅の恐れなどの緊急かつ合理的な理由がある場合を前提とする
  • 諭旨解雇や懲戒解雇事由に該当、ないしその恐れがある場合に限定しておく

懲戒ついて正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があります。

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事例詳細

当社は、今年で創業30年になる調剤薬局の経営を行う株式会社です。

当社の業界は、競争が厳しく、当社もここ数年は売上も伸び悩んでいることから、以前より経費の削減に取り組んでいるところです。

しかし、取引先の維持・拡大のためには、接待等はある程度は必要ですので、営業社員には、そうした経費に関し、ある程度は大目に見ていました。

ただし、社員が支払ったものについて、領収証を添え、相手方や金額・場所を記載した精算書によって請求をさせ、社長の決済を経て精算する方式は、最低限採っておりました。

こうした方式で、これまでは特段の問題はなかったのですが、先月調査会社に依頼して調査を行ったところ、営業社員のAさんが請求した精算について、一部に不正な処理が発見されました。

Aさんは、入社5年目の営業社員で、薬局の出店、管理、仕入れ、医療機関との交渉、渉外など、営業全般の業務に従事しています。

「今月にAさんから、3件で約20万円の交際費の精算請求があったんだが、覚えてるかい?」

「あっ、社長。それはですね、え~っと、確か取引先の○○と、それから別の取引先の××と、え~、あとは△△ですね。」

「確かにAさんが請求した内容はその通りだが、その前に、それらの内容は事実なのかね。」

「・・・はい。もちろん事実です、社長。・・・あのーーー、何か問題でもありますか?」

「そうか。Aさんが取引先の××部長を接待したとして請求があった日なんだが、実は急遽××部長から連絡があってね、私と食事をすることになって、夕方から会ってたんだよ。」

「げ・げ・げえっ~!!!そ、そ、そうなんですかーーー?あ~、私の記憶違いでした。そう言えばその日は、C医師を接待していたんでした。すぐに書き直します。」

「ほーーー、そうなんですか。では、正しい内容に直してください。そして再度提出して下さい。」

A社員の言動に疑いを強めた社長は、早速C医師に問い合わせをしました。

「C先生、つかぬ事を伺いたいのですが、よろしいですかね。A社員のことなんですが・・・。」

「あーーー、Aさんね。元気にしていますか?そう言えば、最近見ないけど、何かあったんですか?」

「えっ!先生、最近見ないって、・・・それは、どれ位前から見てないんですか?」

「そうですね~。おそらく、もう3~4ヶ月は会ってないんじゃないかなぁーーー。」

「そうなんですか・・・。実は、A社員が請求してきた今月の交際費なんですが、相手先がC先生になっているものですから・・・。」

C医師への確認を受けて、翌日社長は、A社員を呼び出しました。

「Aさん。昨日の件ですが、あなたの報告のあとに、C医師に電話で確認してみましたよ。」

「うううっ・・・・・マジでぇ・・・!!!そ、そ、そうなんですかっ!!!・・・」

「C医師を接待したという日どころか、ここ3~4ヶ月間、C医師に会ってすらいないそうじゃないですか!これが事実であれば、横領に該当する行為ですよ。もしそうでないのであれば、そうでないことを立証して下さい。何か言うことはありませんか?」

「うううっ・・・・・!!!・・・い、い、今のところ、言うことは特にありませんが・・・。」

「会社としては、本件を含め、その他の事案についても、より詳細に調査して、何らかの処分の必要性を検討することとします。したがって、Aさんには、会社から連絡するまで、明日から自宅待機を命じます!」

「・・・自宅待機するのは構いませんが、もちろん、その間の給料はお支払い頂けるんでしょうね?」

懲戒事由の有無や程度を調査し、実際に懲戒処分を実施するか否か、ないしはその程度等を決定するまでの間自宅待機を命じることがあります。

自宅待機命令については、そもそも労働者には就労請求権はありませんので、賃金を支払う限りにおいては、使用者は、就業規則における明示の根拠なしにそのような命令を発する権限が認められます(とは言え、実際に業務命令権を行使する際の支障の程度を緩和するためにも、就業規則上に明示して、労働契約の内容としておく方が、労務管理上は適切だと言えます)。

このように、自宅待機命令は当然に可能であるとしても、その一方で問題となるのが、当該自宅待機中の賃金の支払いです。

経費

その点について裁判例では、「このような場合の自宅謹慎は、それ自体として懲戒的性質を有するものではなく、当面の職場秩序維持の観点から執られる一種の職務命令とみるべきものであるから、使用者は当然にその間の賃金支払い義務を免れるものではない。(日通名古屋製鉄作業事件 名古屋地判H3.7.22)」と判示しています。

したがって、原則として賃金支払義務は残ることになりますが、必ずしも賃金の支払いを要するということではありません。

同裁判例でも、「使用者が右支払義務を免れるためには(1)当該労働者を就労させないことにつき、不正行為の再発、証拠隠滅の恐れなどの緊急かつ合理的な理由が存するか、または(2)これを実質的な出勤停止処分に転化させる懲戒規定上の根拠が存在することを要すると解すべきであり、単なる労使慣行あるいは組合との間の口頭了解の存在では足りないと解すべきである。」とし、(1)か(2)のいずれかの要件を満たせば、自宅待機中であっても賃金の支払いを要しないということを示しています。

したがって、自宅待機命令に加え、当該自宅待機期間中を無給として扱おうとする場合には、その旨を就業規則上に明示することが必要です。

ただし、単に自宅待機期間中は無給であるということのみを規定するだけでは足りません。先の裁判例を参考にすれば、自宅待機期間中の賃金支払義務を免れるためには、当該労働者を就労させないことについて、不正行為の再発、証拠隠滅の恐れなどの緊急かつ合理的な理由が求められるとされていることから、そうした理由があるという前提はもちろんのこと、その有効性を基礎付けるために、譴責、減給等の比較的軽い懲戒処分も含むのではなく、諭旨解雇や懲戒解雇事由に該当、ないしその恐れがある場合に限定しておくことが必要だと考えられます。


懲戒処分のトラブル

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