労働新聞記事

2007/06/25---人事学

ILO条約と日本型経営

ILOとは国際労働機関のことで、労働者の世界横断的な労働条件を加盟国が条約や勧告つくりに参加して順守しようという組織。日本も当然加盟しているが、条約の批准状況は187件中47件にとどまり、加盟国平均数の42件を上回っているものの、OECD平均の72件を大きく下回っている。この要因は、終身雇用・年功序列という固有の経営スタイルにあるというのが事実で、批准が少ないから低労働条件国とはいえない。もっとも名目賃金世界1は「長時間労働」にあると先進各国から指摘されているが…。来年4月からスタートする改正パート労働法は、ILO条約175号にいう「パートとフルタイムの均衡処遇」に近づいてはいるものの、その道のりは遠く、したがって175号条約を批准する段階に至っていない。日本型スタンダードは世界基準とは異なった歩みをしており、いたずらにILO批准を強調するのは疑問という声が使用者側には多い。

2007/06/18---人事学

派遣労働者の削減と指名

労働者派遣法では、紹介予定派遣を除いて派遣労働者を特定する行為はできない。特定する行為とは、派遣元や派遣労働者から履歴書を提出させたり、事前面接あるいは「できるだけ若い者を」といったことを指す。ならば、派遣労働者の削減に当たり、派遣労働契約を結びなおす場合において、仕事の適用能力の高い者を残し、低い者を除外すると「特定」違反となるのだろうか。厚生労働省では「短期の派遣契約を結び、しかる後に適応能力の高い者を指名して新たな契約を結ぶこと」は同法違反という見解。この短期は試行的に1ないし2カ月程度と解すれば、削減契約時期によってはこのしばりから外れることは考えられないだろうか。企業は収益追求が至上命題であり、許されてしかるべきだ。

2007/06/04---人事学

骨を抜かれたパート年金

年金一元化法案の審議が遅れ、同法案の柱の1つであるパートの厚生年金適用拡大は見送られる公算が強い。もともと法案に組み込む前の段階からフード産業やスーパー業界などから猛反発を受けていたもので、前回の年金改正に当たっては附帯条項に付されて見送りとなったいわくつきのものだが、安倍首相の再チャレンジ政策の目玉として5年間かけて検討するという方針がわずか3年で再登場となった。当初、現行の週30時間以上を被保険者とする規定を週20時間に短縮することによって300万人以上の適用拡大を狙っていた。猛反対を受け@月収9万8000円以上A300人未満の中小企業は適用猶予などの代替案を付け加えたため、適用対象者数は当初の15分の1にまで縮小し、骨抜き法案になってしまった。7月の参議院選挙への波及を恐れた与党内部の慎重論の影響も強い。

2007/05/28---人事学

労働時間等設定改善委員会の代替

所定労働時間は着実に減少しているが、肝心の年間総実労働時間は20数年前から「1800時間」の達成目標を掲げているものの、いっこうに近づかない。労働時間設定改善法は、設定改善委員会を設置し、決議した場合には労働基準法上の労使協定のうち6つと同等の扱いとする「おまけ」を付けている。委員会は社員各層から選出し、問題点をえぐりだして実効性を帰すもの。さらに委員会を衛生委員会で代替するのも可能と設置にも柔軟な姿勢を示している。ただし、衛生委員会の場合、半数は労働者委員でなければならないとされていることから、パートや管理職の委員が設定改善委員会に参加不能の場合もある。

2007/05/14---人事学

妊娠中の女性労働者解雇

妊娠中および出産後1年を経過しない女性労働者について、男女機会均等法では解雇を禁止するとともに新たに「不利益取扱い」も禁止されることになった。厚生労働省令では、当該解雇禁止規定に抵触する要件を例示しているが、それを見る限り使用者が解雇できる余地はほとんどない。たとえば禁止期間中に当該女性労働者の担当職務が消滅した場合であっても、人事異動のルールに従って配置転換しなければならない。わずかに解雇の理由が妊娠・出産に該当しない場合だけ、解雇有効となり得る。しかしながら、その立証責任は使用者に課せられており、他の合理的理由で解雇したということを示さなければならずやはりこの禁止規定のカベを破ることは不可能に近い。

2007/05/07---人事学

少子化対策やっと本格化

急ピッチで少子化対策進んでいる。今年4月1日から出産手当金が増額された。従来、標準報酬日額の100分の60とされていたが、改正健保法では、同3分の2に増額されることになった。児童手当も改善され、ゼロ歳から2歳児の第1子、第2子まで5000円であったものが、1万円に倍増されている。なお、児童手当制度は小学校6年生までの児童を養育している者に支給されるが、3歳の誕生日翌月からは、第1子、第2子が5000円、第3子以降が1万円となっている。そのほか昨年4月からは健保の適用対象外になっている特定不妊治療(体外受精など)についても改善措置が施された。

2007/04/30---人事学

短期特例被保険者とは?

雇用保険法の改正案には、短期特例被保険者の特例一時金について現行の50日相当分から、30日分に引き下げることになっている。しかし、当面は40日分とするもようだ。短期特例被保険者とは、農閑期に出稼ぎで就職するいわゆる循環的失業者で、自営で働くことが確定している者に「次の就職までの経済的つなぎ」である雇用保険(基本手当)を適用するのはいかにも不自然。このため一般給付とは異なって「一時金」となっているのだが、その不透明感が払拭されるわけではない。農業従事者は保守系にとっては、重要な票田でもあり、こうした圧力もあって廃止に踏み切れないという見方もある。

2007/04/09---人事学

雇用対策法改正と外国人雇用

職業安定法では、外国人の雇用管理改善を施行規則で示し、具体的対応として指針を出している。これを受け、改正雇用対策法では、指針の内容が十分周知されていないとし、さらなる改善を図った。指針では、毎年6月1日現在における外国人の雇用状況報告を所轄の公共職業安定所に提出することとなっているが、届出率はおもわしくない。そこで、改正雇対法では、指針に法的根拠を持たせた。具体的には、届出を行わなかった事業主に対して30万円以下の罰金を科すこととしている。一方、事業主の負担軽減を図る観点から報告の届出に当たっては、雇用保険被保険者資格取得届・喪失届提出時に併せて行うことができるよう改善していく。

2007/04/02---人事学

大企業の決着で賃上げ混乱

景気回復を背景に今年の賃上げは久方ぶりに大型、と予想された向きは多いはずだ。春闘を主導する金属労協の回答はわずか「1000円」、一発で妥結となった。その代わり賞与はずい分はずんだようだが、経営側は国際競争力を強めるため、収益は設備投資に回すという。ただ、賃上げについて世間には誤解がある。賃上げは定期昇給とベースアップに分かれ、後者はここ数年見送られた産業もあり、たとえ1000円でも波及効果は大きい。一方賃金カーブを維持する定昇は約2%あり、両者で8000円前後になる。賃上げ総額2000円、賞与年間2カ月の無組合中小企業の実態と比べるとやはり恵まれている。

2007/03/26---人事学

労働時間中における公民権行使

労働基準法第7条では「使用者は労働者が労働時間中に選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては拒んではならない」と規定している。ところで、司法改革の目玉ともいえる「裁判員制度」が平成21年5月までに導入される。国民から無作為に選ばれた裁判員は相当の理由がない限り拒むことができない。参加する裁判は殺人、傷害致死など重大事件であるため、かなりの時間を費やすことになるはずだ。法第7条は1時間程度の労働時間を予定しており、裁判員にはなじまない。無給とするか有給とするかは企業の自由意思だが、長期間にわたり有給とするのは無理。日当もでるというから無給とすべきだ。

2007/03/19---人事学

均等法、男女双方の禁止へ

4月1日から施行される改正男女雇用機会均等法は、@男女双方への差別禁止A間接差別の登場B妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止Cセクハラの対応が配慮義務から措置義務へ強化――が目玉だ。ここで気になるのは、男女双方の差別禁止により、従来、特例の女性優遇策も対象外となるか否か。代表的な「一の雇用管理区分において、女性の割合が4割を下回っている場合には『女性のみの募集・採用は適法』という優遇策」だ。これについて、改正法では従来どおり、違法ではなく使用者によるポジティブアクションとして位置付けている。

2007/03/12---人事学

派遣労働者の死傷病報告

労働災害が発生した場合、所轄の労働基準監督署長に対し、死亡または休業災害だった場合には「遅滞なく」、その他の場合には「4半期ごと」に届け出なければならない。ところで、労務提供サービスを受ける派遣労働者の場合は、使用者である派遣元が行うのか、安全配慮義務上「みなし使用者」とされる派遣先が行うのかという問題がある。正解は両者ともに届出責任があるのだが、災害がダブルカウントされる可能性が高い。そこで、様式が改正され、派遣先、派遣元のどちらの届出かが明らかになるような方式となった。ただし、様式の片隅にどちらかを○で囲むような簡単なものだから、完全解決とはいえない。

2007/03/05---人事学

波乱含みの最低賃金法改正案

今通常国会に上程予定の労働関係8法案の中で、波乱含みなのが最賃法改正案だ。廃止予定だった産別最賃は特定最賃に衣替えして残ったが、地域別最賃について生活保護基準との整合性を持たせようという点をめぐって労使の見解がまったく分かれている。格差解消の目玉としたい政府と本来的に支払能力と労働貢献度に基づいて労使自治により賃率を設定すべきという使用者サイドとの考えの開きも大きい。改正案ではこれまでの罰金額を25倍にアップし、強権をもって履行させようという方向性にも反発は高い。

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