労働新聞記事
2008/08/25---人事学
パートタイマーと育児休業
有期雇用契約の上限が1年間とされていたことや育児期間が終わって、再就職する者が多かったことから一般的に「育児休業」はパートにはなじまないとされていた。最近では有期契約の上限が3年に延長されたこと、配偶者の収入の伸び悩みなどがあって、若い主婦もパートとして入職するケースが増加してきた。しかしながら、2人目の子供ができると、会社が雇用契約の延長を期待していた場合であっても退職する傾向は変わっていない。雇用保険への加入促進や社会保険の制度改正が煮詰まれば、若いパートも育休を取得して長期雇用システムに組み込まれる可能性は高い。生活と職業の調和を図り、正社員に取って代わる基幹労働力として位置付けていくには、パートの育休取得がカギとなろう。
2008/08/18---人事学
年俸制ヒラ社員と割増賃金
電機関係の大手企業で裁量労働制の対象者を年俸制とするケースがあった。年俸制は一般には管理監督者を対象としており、表面的には深夜労働を除き割増賃金問題は発生しない。ところが、年俸制では、月例賃金に相当する分を例えば17分の12、賞与に相当する部分を17分の5というように分ける例が多い。割増賃金の対象外なら、表面的な問題は生じないが、一般社員の場合は時間外労働等の算定基礎問題が発発生する。人事担当者も年俸制には残業代が含まれると理解する者が多く、自動的に基礎賃金は月例給与部分だけとかいしているようだ。しかし、確定された賞与については除外賃金たる「1カ月を超えて支払う賃金」には相当せず、17カ月の年俸全体が基礎賃金となるので注意が必要だ。
2008/08/11---人事学
出張における移動時間の扱い
最近はどこの会社も予めキップなどを購入して手渡すから、出張の旨みは少なくなったとグチをこぼす向きも多い。交通手段の発達に伴って、移動時間にも余裕がなくなったが、行政解釈や判例によって「移動」は拘束性は認められてはいるものの、貴重品を運ぶための監視業務など別段の指示がある場合を除き、飲食や休憩など本人の自由裁量度が高く、労働時間とはされない、ことが確立している。それどころか出張中に日曜日等の法定休日が挟まっていても、業務の無い限り「休日労働」として割増賃金を支払う必要もない。ただし、拘束時間が長くても残業代がつかないことは労働者のモラールダウンにつながってしまうため、通常は日当を支給するがその額は残業代には遠く及ばないのが実態だ。
2008/08/04---人事学
計画年休に頼るしかない消化率
厚生労働省の調査によると、平成18年の1年間に1人当たりの年次有給休暇取得率は46.8%に過ぎず、規模別にみてもワークライフバランス(仕事と家庭生活の調和)に熱心な大手企業でさえやっと過半数をクリアしている程度だ。そこで、行政が制度の導入を進めているのが計画年休。私傷病など不意の事故に備えて最低5日は自由使用とし、それを越える部分について、労使協定によって消化を高めようとするもの。大型夏休みに適用するケースが圧倒的に多く、帰省や海外旅行も可能となった。ただし、一斉付与の場合、年休が発生していない新入社員等の扱いが問題となる。行政指導では、事業主の責めによる休業として6割に賃金を最低でも保障すべきとしているが、労務管理上の配慮として、特別休暇を付与することがベターという考えが大勢を占めている。
2008/07/28---人事学
本採用拒否にまつわる珍事例
試用期間とはいっても、すでに「期間の定めの無い労働契約」は進行中だから、試用期間を終え、本採用に至る段階で取消しすれば、労働契約法にいう「解雇は合理的理由を欠き、社会通念上相当でないと認められない場合には権利の濫用として無効」とされる。試用期間中に行う教育は学生から社会人に導入するための訓練であり、1人前へのスタートということになる。しかし、昨今の大学生は、電車内でのマナーの悪さが批判されているように「常識」のかけらすらみられない者も多い。今回紹介する事例は実際に「非常勤」の本社会長が当該子会社を訪問した際、出くわした新入社員が頭も下げず、挨拶もしなかったことを理由に本採用を取消されたことを不当として裁判で争われたもの。試用期間中ならとくに周囲に気を配るのは当たり前だが、この鈍感な新入社員の訴えに対し、判決では、解雇権の濫用に当たるとして、会社のいい分を退けている。
2008/07/21---人事学
試用期間の延長は一方的に可能か
労働基準法第21条に定めてある「試の使用期間」は解雇予告等の除外者を規定したもので、わずか14日間でしかない。そのため、各企業が基礎的な教育・研修を行うために3〜6カ月の試用期間を設定しているが、私的自治として認められている。一方、その間は解約権留保付の労働契約とされ、企業の持つ解約権(解雇権)は、試用期間が終了するまで発動しないケースが圧倒的に多い。ただ、期間の定めの無い労働契約は進行中であるから、よほどの事情のない限り、本採用拒否は不可能に近く、再吟味のための試用期間の延長も試用者の身分が未だ不安定な状態に置かれるため、就業規則によってその旨の定めがあれば可能だが、無い場合には公序良俗違反を問われる恐れが強い。
2008/07/14---人事学
労働時間の始点と終点
労働時間管理には、タイムレコーダーを使用するケースが多い。入門してすぐ脇に打刻場所があるのと作業場に設置されている場合とでは、時間的ロスは大きい。ただ、労働時間の開始は使用者の支配下に置かれてからであり、入門後職場までの歩行や着替えは、労働力提供の準備行為とはみなされない。タイムカードに打刻された時間イコール労働時間とはいえないわけだ。したがって、賃金台帳に実労働時間を記入する際には、カードはあくまで施設管理上のツールであり、労働時間算定の補助手段とすべきである。一般に残業時間のカウントもタイムカードだけで行う企業が多いが、これは使用者に過大な負担を課すことになる。就業後、クラブ活動など私的行為をしていたにも関わらず、活動の終了後に打刻されたのではかなわない。カードに頼らず厳密な労働時間の把握を行いたい。
2008/07/07---人事学
解雇権濫用法理の求めるもの
労働契約法第16条は、労働基準法第18条の2で定められていた解雇権濫用の無効をそっくり移したもの。労基法では第20条によって、解雇予告をするか解雇予告手当を支払えば解雇できるとされているが、それは同法上の規定であって、その手続きを履行しても労働者がすんなり同意するとは限らない。そこで、法廷での争いとなるが、解雇が合理的客観的理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは無効、というのが最高裁判例で確定している。その判例を条文化したのが労契法第16条というわけで、就業規則に相当する非違行為があっても、解雇とは過酷に過ぎないかなどを考慮すべきとしている。労契法に違反しても監督指導や罰金を科せられることはないが、争いの行方は予見できるため、無駄な法廷費用をかけることが避けられる。とくに解雇権濫用法理は典型的だ。