身元保証書の提出拒否で解雇できるか?

小学生

当社は、小中学生向けの学習塾を経営しています。教室は都内に3つあり、従業員規模は、約20名程度の零細企業です。

この度当社では、常勤の講師として、Aさんを採用することにしました。

Aさんは、講師の経験はありませんが、都内の有名大学を卒業し、選考時に実施した筆記試験も優秀な成績でありましたので、当社でもやっていけるだろうと考え、採用を決定しました。

「・・・ということで、労働条件や会社のルールは、今説明した通りとなっております。」

「わかりました、総務部長。 私のキャリアを持ってすれば、きっと御社のお役に立てるに違いありません。任せてください。」

「そうですか。それでは、こちらの書面が雇用契約書になります。ここに署名と捺印をお願い致します。」

「あれっ!え~と、あの~、その~、総務部長、この雇用期間のところなんですけど・・・。」

「何でしょう。Aさん、どうしました? 何か雇用期間の記載内容に問題でもありますか?」

「雇用期間が4月1日から6月30日までになっているんですけど・・・。これは何かの間違いでしょうかね?」

「当社の場合、常勤の講師でも最初の雇用契約書は、やはり本人の適性を評価するための期間として、一応3ヶ月間の有期の雇用期間を設定させてもらっているんですよ。」

「へーーーそうなんですか。それじゃあ、まるで試用期間みたいなものなんですかね・・・。」

こうした経緯を経て、実際にAさんは勤務を開始することになりました。

Aさんは、当初は講義をすることに戸惑っている様子でしたが、入社して2週間も経つ頃には、だいぶ慣れ、講義をする姿も板についてきたように見えました。

しかし、講義をすることに慣れてくる反面、例えば、度々ネクタイの着用を怠ったり、朝礼に遅刻、あるいは欠席する等、勤務態度に問題が見られるようになってきました。

当社は学習塾ですから、勉強を教えることはもちろんですが、人間教育にも力を入れておりますので、子供たちの見本になるよう、基本的なことですが、スーツにネクタイの着用を義務付ける等、服装を端正にすること、また、時間厳守も徹底しておりますので、遅刻や欠席をすることなど、もっての外なのですが、Aさんについては、遅刻や欠席の理由も電車が遅れたとか寝坊したとかいうものばかりで、時間厳守に対する意欲や自覚の欠如が感じられました。

そのため、当社が力を入れている人間教育の部分において、適格性に欠けるのではないかと判断するに至り、3ヶ月間の雇用契約期間の満了をもって、雇用を終了することにしました。

「Aさん、申し訳ないけど、今月末で雇用契約の期間が終了するので、期間満了で退職ということになります。」

「えーーーっ!!!何でですか?そんなこと急に言われても、とても納得できないですよ!」

「一応、期間満了ですので。まぁ、あとはこれまでも何度か注意しましたが、服装であったり、度々遅刻をする等、時間にルーズだったりしたこともありましたし。」

「いくら有期の雇用契約って言ったって、試用期間みたいなものじゃないですか?だとしたら、そんな理由で契約を更新しないなんて、絶対に認められないですよ!」

「いや、Aさんも雇用契約書に署名しているじゃないですか。ですから、期間満了で終わりです。」

このように、試用期間的な意味合いで、有期の雇用契約を締結している場合、雇用契約期間の満了という理由のみをもって、契約を更新しない(本採用をしない)ことは、認められるのでしょうか?

最高裁は、次のように判示しています。「使用者が労働者を新規に採用するにあたり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた主旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。そして、試用期間付雇用契約の法的性質については、試用期間中の労働者に対する処遇の実情や試用期間満了時の本採用手続きの実態等に照らしてこれを判断するほかないところ、試用期間中の労働者が、試用期間のついていない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取り扱いにも格段変わったところはなく、また、試用期間満了時に再雇用(すなわち本採用)に関する契約書作成の手続きが採られていないような場合には、他に特段の事情が認められない限り、これを解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。そして、解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の主旨・目的に照らして客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるものであって、通常の雇用契約における解雇の場合よりも広い範囲における解雇の事由が認められてしかるべきであるが、試用期間付雇用契約が試用期間の満了により終了するためには、本採用の拒否すなわち留保解約権の行使が許される場合でなければならない。」

つまり、有期の雇用契約を締結している場合であっても、それが試用期間としての意味合いであると判断される場合には、単に雇用契約期間が満了したという理由だけで、契約を更新しない(本採用しない)ことは許されず、解雇する場合と同様に、客観的に合理的な理由があること、そして社会通念上相当であると判断される場合に限られるということです(ただし、試用期間と同義ですので、本採用をされた正社員を解雇する場合と比較すれば、解雇が認められる範囲は広いことになります)。

確かに、形式的には有期の雇用契約になっていますので、期間満了という理由で、契約を更新しなかった(本採用しなかった)としても、紛争化しない可能性もあります。

しかし、これは労働者の美しき誤解があって、はじめて成立するものであると思われますし、そうだとすれば通常の試用期間と何ら変わりませんので、あえて有期契約にすることにあまり意味は見出せません。

また、一方で、正社員を希望して就職活動をしている求職者の目線で言えば、採用後に有期の雇用契約を締結するという取り扱いをしていることにより、それが求人への応募を躊躇し、良い人材を採用できない原因になることも懸念されますので、テクニカルに有期の雇用契約を締結するよりも、通常の試用期間を設けるといった対応の方が宜しいのではないかと思います。


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