復職の判断でトラブルを避けるには?

当社は、東京郊外に本社を構える従業員規模約70人の印刷会社です。

入社7年目で、30歳になる営業担当のA社員は、今年に入ってから、うつ病で体調を崩し、休職に入っています。

「おーーーい、営業課長。営業課で休職しているA社員の休職期間はいつまでだったかな。」

「はい、社長。当社の就業規則では、休職期間は12ヶ月となっていますので、2週間後の9月末で休職は終了になります。」

「あーーーそうか。・・・それで、A社員の体調はどうなんだ?復職はできそうなのかね?」

「来週、本人が来社して、復職可能かどうかの面談を行います。その際に、医師の診断書を持ってくるように、言ってあります。これまでも、毎月1回程度、メールで状況を聞いていますが、あまり調子は良くなさそうでした。診断書次第ですが復職は困難かも・・・。」

「ふーーーむ、そうか。まあ、来週の面談は営業課長に任せるから、ひとつよろしく頼むよ。」

「はい、わかりました社長。A社員とじっくり話しをして、よーーーく観察しておきます。」

そして面談の日、営業課長はA社員に久しぶりに会いました。何かおどおどしている様子で、一目見て以前とは様子が違うことに気づきました。

「一応、9月の末で休職期間は満了ということになるんだけど、どうですか。体調は?」

「最近はだいぶ落ち着いて、日常生活も特に問題ありません。復帰も大丈夫だと思います。」

「しかし、当社の営業は労働時間も長いし、お客様からの急な要望にも対応しなくてはならない。しかも君は、新規開拓担当だから、体力的にも精神的にも負荷も大きいだろう。」

「・・・それはそうですが、私は、大丈夫です。自分のことは自分が一番良くわかります。」

「そうですか。・・・それで、Aさんお願いしておいた医者の診断書は持ってきたのかね。」

「はい。持ってきました。これが医師の診断書になります。ちゃんと復職は可能だと書いてあります。」

そう言ってA社員は、営業課長に医師の診断書を提示しました。

すると、診断書には、「職場復帰に関しては、現時点では可能な状態にあると考えられる。ただし、復帰後1~2ヶ月程度は、残業や出張は避けた方が望ましい。」との記載がありました。

「確かに、復職可能と書いてあるけども、残業ができないとなると、これまで通りの業務をしてもらうことは難しいんじゃないかなぁ。」

「そんなことありません。1~2ヶ月もすれば残業も出張もこれまで通りできますし、それまでだって、多少の残業は大丈夫です。それに、復職について当社の就業規則では、医師の診断に基づき復職の可否を判断すると規定しています。医師からもこのように診断してもらっていますので、来週から復帰したいと思います。」

「・・・わかった。しかし、復職するための条件として、当社の指定医の診断を受けてくれないか。会社は、それで判断したいと思うのだが。」

「何でですか、課長!そんな必要ないじゃないですか!診断書はもう出していますよ!」

A社員は、急に大きな声を出して話し出しました。

「まぁまぁまぁAさん、少し落ち着いてくれよ。君の体調を思ってのことなんだよ。」

「もう診断書は出ているんですから、その必要はありません。就業規則にも、会社指定医の診断を受けろだとか規定されていませんよ。」

「・・・しかし、これが会社の判断だ。もし君が、当社指定医の診断を受けないのなら、残念だが、休職期間の満了をもって退職とさせて頂きます。」

「何言ってんだよーーーっ!そんな扱いは不当だーーーっ!絶対に復職してやるからなっ!」

A社員は、そう言って怒ってその場を立ち去ってしまいました。

うつ病の診断

さて、休職期間満了時の労働者の取扱いは「治癒したかどうか」で判断します。

ここでいう「治癒した」とは、単に「出社できる」とか「軽作業ならできる」という意味ではなく、基本的には、健康な状態に戻り、休職前に行っていた業務を支障なく遂行できる状態になっているかを基準に判断することになります。

ほとんど治っているが、休職前に行っていた業務はできないという場合には、原則として、治癒したとは言えませんし、復職も認められません。

しかし、休職期間満了時には、軽作業しかできないが、2~3ヶ月経てば、休職前の業務を行うことができるという場合には、注意が必要です。

復職当初、軽作業に就かせれば、徐々に通常業務をこなすこともできる回復の見通しがあったにもかかわらず、復職を認めなかったことを無効とする判決もありますので、このような場合にも、一律に治癒していないと取り扱うことにはリスクが残ります。

特に近時の裁判例は、職種に限定のない労働者について、そのような傾向が見られますので、注意すべきです。

ただし、リスクは残ると言っても、基本的には一度休職措置をとって解雇を猶予しているので、完全に回復するまで待つ義務は会社にないと言えます。

よって、休職期間満了時に、健康時に行っていた通常の業務を遂行することができる程度に回復しなければ、復職できないという理論は、原則論として維持されると考えられます。

実務上は、復職の可否判断をするときが、会社と従業員間で最も争いになりやすいので、その点(「治癒の定義」、「会社が主治医への面談を求めた場合に協力すること」「会社指定医への受診を命じることがあること」等)を、事前に書面化して交付し、明らかにしたり、あるいは就業規則に記載する等しておくと宜しいと思います。


健康問題のトラブル

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