業務命令権の本質を理解しよう

指示命令の根拠は何?

「その指示や命令は、何を根拠にして私に命じるのですか?」

組合員

最近、労働組合ができたというA社の社長から「出張に行って欲しい。」とか、「健康診断を受診して下さい。」と指示したり、命令すると、すぐに「その指示や命令は、何を根拠にして私に命じるのですか?」と、聞いてくる組合員がいて閉口しているというお話がありました。

指示命令の根拠を法律的説明すると?

普通の労働組合がない会社であれば、そのような理屈っぽいことを言ってくるような従業員はいないでしょうし、仮に、そんな事を言ってきても、「いいから、指示に従いなさい。」程度で終わる話だと思いますが、相手がユニオンに加入した社員だとそういう訳にもいきません。特に、もともと会社に対して反抗的な態度をとっていた社員だとすると、話が厄介になるケースが多々あります。

こういったときのために会社は理論武装をしておく必要があります。

会社と労働契約を締結している以上、従業員が会社の指示命令に従うのは当然のことだろうと思われるでしょう。

それはその通りなのですが、これを法律的に理屈っぽく説明すると以下のようになります。

  1. 会社と労働者が労働契約を締結することによって、労働者がその労働力の処分を使用者(会社)に委ねた。このことにより会社は労働者に対する業務命令権を取得したことになる。
  2. この業務命令権の範囲について考えると、労働契約を締結すれば、特に合意しなくても使用者が労働者に対して持つことになる業務命令権と、労働契約を締結するときに具体的に労働者の合意を得て、使用者が取得することになる業務命令権との2種類がある。
  3. 前者の業務命令権を一般的に労務指揮権と呼び、労務遂行自体に関する指示や命令で労働者の日常の労務提供の内容を特定する権限で、日常の業務指示、同一事業場への応援命令、他事業場への出張命令等は、労務指揮権の範囲内のことであり、採用時に労働者に必ずしも明示しなくても会社はそれらの指示命令をすることができます。健康診断なども会社は法令により労働者に受診させる義務があるのでこれに含まれると思われます。
  4. 後者の業務命令権は、労働契約の内容に当然に含まれておらず、労働契約を締結するときに、特に労働者の合意を得ておく必要があります。それぞれの会社で必要と思われるものをピックアップして労働者に提示して合意を取っておく必要があります。例えば、海外出張が多い会社であれば海外出張命令権であり、出向命令権や懲戒権等もこの後者の業務命令権と考えられています。通常これらの権限については就業規則等に規定されていると思われます。
  5. 労働者は、これらの業務命令に対しては、労働契約や就業規則で規定し合意されているのであれば業務命令権の範囲内の事項となり、さらに業務上の必要性や合理性が認められるものであれば、これらに従う必要が発生します。
  6. そして、労働者が正当な理由がないのに業務命令を拒否するなら、業務命令違反や職場規律違反として、懲戒処分をできることになります。

会社には明確に指示命令する権限があります。

業務命令

以上のような理屈で、会社の指示命令に従わない組合員に説明することとなります。

組合ができた当初は、組合員も何か万能の魔法の杖を持ったかのように会社に対して何でも反抗し、抗議してくることがありますが、決してそのような魔法の杖を労働組合法が組合員に与えたわけではありません。

会社は上記のように労働契約の内容や就業規則に規定した条項によって、労働者に業務の円滑な遂行のために指示命令する権限があり、労働者はその指示命令に従って誠実に労務の提供をしなければならないのが大原則であり、その立ち位置を間違えてはいけません。


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