遅刻が多い社員を懲戒するには?

当社のA社員は、入社3年目の営業担当社員です。入社当初は勤務態度も比較的良い方で、真面目に勤務していました。

しかし、試用期間が終了した辺りから、徐々に勤務態度に変化が見られるようになってきたのです。特に目立つのは、遅刻の回数とその態様です。

会社も度々注意をしてはいたのですが、相変わらずの遅刻の常習犯で、平均すると毎月2~3回、多いときは週に1~2回程度の頻度で遅刻することもあります。30分以内の遅刻がほとんどですが、最近では、事前の連絡も無しに遅刻することもしばしば見受けられるようになりました。

そして本日も、A社員は事前の連絡なく、10分ほど遅刻してきました。そこで、総務課長はA社員を応接室に呼び出しました。

「ちょっと、Aさん、今少しだけよろしいですか?また、今日も遅刻しましたね。」

「はぁ。すんません。遅刻届は、さっき書いて営業課長に出しておきましたよ。」

「Aさんね、遅刻届を出せばいいってもんじゃないんですよ。今日は何で遅刻したんですか?」

「今日は、たまたま電車が遅れてちゃって・・・。しょうがないっすよね、こればっかりは。」

「電車は遅れることもあるってことを念頭において、行動しなきゃだめじゃないか。電車が遅れたことが原因であれば、遅延証明書も提出して下さい。」

「あーーー、今日は、遅延証明書を貰ってくるのを忘れました。そんなの貰ってると、もっと遅れますよ。」

「あなた、これだけ遅刻していることについて、自分自身どう思っています?」

「私は、営業社員ですから、始業時刻ピッタリに来なくても、他のみんなには、特に迷惑を掛けていないと思いますが。」

「他の営業社員は、定時には会社に来ています。あなたが遅刻したことによって、現に業務に支障が出ていないとしても、あなた一人が身勝手な行動を取ると、社内の秩序が乱れます。」

「そうですかねぇ。でも私は、遅刻する場合には届出もしていますし、就業規則に違反するようなことはしていないと思います。」

「いいえ。現にあなたは今日、事前連絡もなく、遅刻してきたじゃないですか。」

「今日はたまたま事前に連絡できませんでしたが、すぐに遅刻届を出したじゃないですか。」

「だから、届出を出せばいいってもんじゃないって、言ったでしょう。そもそも、誰に承認を得て、遅刻しているんですか。」

「遅刻に、承認がいるんですか?就業規則には、単に届出としか書いてありません。それに、総務課長が先月着任する前までは、遅刻についてここまで注意されたことはありません。」

「従来のことはともかく、今後遅刻を繰り返すようなら、懲戒処分をすることになるから、十分注意して下さい。」

「・・・○$×%※△?□#!・・・ブツブツ・・・=&%※○#×◇*□¥・・・ブツブツ・・・」

さて、時間を厳守するということは、一社会人として組織で働く以上常識であり、やむを得ない事由がある場合はともかく、故意または過失によって、遅刻や欠勤を繰り返すという従業員は、社会人としての適性すら疑わざるを得ません。

しかし、もし会社が、「少しの遅刻だから、まぁいいだろう。」という考えでいたとすれば、本人も、「この程度の遅刻であれば、許容されるんだ。」というような誤った認識を持ってしまう恐れがあります。

よって、企業秩序の維持という観点から、仮に短い時間の遅刻であっても、理由を問い質し、その理由によっては、譴責などの懲戒処分を科すべきですし、情状酌量の余地がある場合であっても、口頭で注意し、それが繰り返されるようであれば、書面での注意、譴責処分を科す等、会社として、遅刻は認めないという姿勢を明確にすることが必要だと思います。

就業規則にも「欠勤・遅刻・早退の事由が本人の過失にある場合は、懲戒処分を科すことがある。」というように、懲戒処分もあるという規定を、明確に設けるべきですし、電車等の遅延によるものであれば、遅延証明書の提出を必ず求めるようにするべきです。

残業申請

合わせて、欠勤はもちろん、遅刻や早退をする際の手続きについても、単に「届出なければならない」と定めるのではなく、必ず「許可制」である旨就業規則に規定し、会社が判断することができるようにしておくことが必要です。

その上で、実際に遅刻等の不就労が頻発し、改善がなされない従業員に対しては、解雇による労働契約の解消も検討していくことになります。

しかし一方で、解雇を行う会社の立場としては、その解雇権の行使が濫用であると評価されない様、慎重な対応が求められます。

具体的には、まず、勤怠不良がある程度(2~3回程度)あったら、書面による注意をしておくことが必要だと思います。

過去に無届欠勤・遅刻等を理由とする懲戒解雇が正当と認められた裁判例(横浜地判 S57.2.25 東京プレス工業事件)でも、上司が繰り返し注意や警告を発している点が考慮されています。

繰り返しになりますが、この場合、注意や警告は書面で行うことが必要です。

口頭だけの注意ですと、訴訟になった場合、相手側は、注意されたことなど無いと主張してくるため、会社側は、注意してきたという事実を証明できるようにしておくことが極めて重要になります。

また、解雇をする前に、軽めの懲戒処分をしておくと比較的安全と考えられます。無断遅刻の多い労働者が、その始末書の提出を拒否したことを理由になされた懲戒解雇が懲戒権の濫用であるとして無効とされた事件(名古屋地判 S53.9.29共栄印刷紙器事件)では、軽めの懲戒をしておかなかったことが、解雇無効の判決を下した重要なポイントとなっております。

これは、書面で注意しても、軽めの懲戒処分をしておけば、「次は解雇もありえる」という最後通告的な意思を伝えたことにもなり得るからです。

上記2点、

  1. 注意した形跡を書面で残しておくこと
  2. 解雇の前には、軽い懲戒処分をしておくこと

については、一般的な解雇事件においても、最も重要視される部分になりますので、遅刻等に限らず、日常の労務管理において、十分注意されることをお勧めします。


懲戒処分のトラブル

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