残業承認制の導入で注意すべきこと?

残業承認制で注意すべきことは何ですか?

残業承認制を導入すれば、承認を得ていない残業には残業代を支払わなくてもよいのでしょうか?

→ 原則として未承認の残業に対しては、残業代の支払いは必要ありません。ただし、黙示的指示と判断されるような場合は労働時間となりますので、注意が必要です。

目 次

  • 黙示的指示と判断されるような場合とは?
  • 事例詳細

黙示的指示と判断されるような場合とは?

  • 指示された業務量が、所定の勤務時間内では完遂することができないような場合
  • 当該業務の納期などが、所定の勤務時間内では完遂することができないような場合
  • 客観的にみて、所定の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合
  • 会社が残業の存在を知りつつ放置したような場合

残業承認制を導入する場合でも、労働時間の実態を正確に把握するなど労働時間管理をしっかり行わないと、トラブルに発展する可能性があります。

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事例詳細

当社は、東京に本社を構える自動車関連部品の販売を主とした会社です。従業員規模は約100人です。

当社では、「残業代を支払うのは月10時間まで」という社長の方針により、それ以上の残業をしていたとしても、その分の支払いは行っていませんでした。

しかし、社長の経営者仲間からのアドバイスにより、今後は、残業代をきちんと支払っていく方針となりました。そうは言っても、ダラダラ残業を始めとする無駄な残業にまで、残業代を支払いたくはありません。

そこで当社は、残業承認制を導入することにしました。この制度はその名の通り、従業員が残業を行う場合には、事前に所属長に申請して、承認を得なければならないというものです。

「総務課長。先月から導入している残業承認制の運用状況はどうですか。残業時間はどれくらいになりますか。」

「はい。今までと違って残業の上限がありませんから、法的には改善されていると思います。ただ、みんな素直に申請しているので、申請された残業時間は、結構な時間になっています。平均すると、1人30時間位ですね。中には50~60時間といった人もいます。」

「うぅ~ん。これじゃ大幅なコスト増になってしまうな。ところで、これらの残業は、本当に必要な残業なのだろうか。」

「私も、各営業所からの集計を把握しているのみですから、実際のところは分からないです。」

「残業承認制は、無制限に残業を認めるという主旨ではないのにな。総務課長、所長たちと面談して、残業の実態を調査してくれないか。」

「はい、わかりました社長。さっそく所長を集めてヒアリングしてみます。」

面談の結果、申請のあった残業に関して、必要性の有無を検討することもなく承認していたり、また申請漏れがあると、タイムカードの打刻時間に基づき、後付けで申請させたりしていたということが判明しました。

これを受けて社長は、緊急に各所長を招集し、申請のあった残業をやみくもに承認するのではなく、その必要性を吟味することや、事前承認を徹底し、やむを得ず事後申請となった場合にも、従業員にヒアリングの上、適正な残業時間についてのみ承認するようにとの指示を出しました。

「残業の必要性かぁ・・・。自分の仕事もやらなきゃいけないし、部下の残業の必要性まで精査するのは難しいよなぁ。」

「でもなぁ、正直に申請のあった残業をすべて承認すると、後で社長に怒られそうだしなーーー。」

「部下の労働時間管理が、我々の査定にも影響してくるだろうし、どうすりゃいいのかねーーー。」

「結局は以前みたいに、残業時間の目安を示して、その範囲内で収めてもらうしかないかもなーーー。」

「そうだな。部下には、その範囲内で業務を完了するように指導するしかないってことか。」

そして、その1ヶ月後・・・。

「おーーーい、総務課長。ところで今月の残業時間はどのくらいになりそうですか。」

「そうですねーーー。今月の残業時間は、ほぼ全員10時間程度で、長くても20時間程度ですね。」

「ほーーー、そうかーーー。なーーーんだ、みんなやればできるじゃないか。」

その後も同様な状況が続き、残業承認制の導入は上手くいったように思われました。

しかし、各営業所の従業員からは、このようなことも囁かれていました。

「この間導入された残業承認制って、どう思いますか?結局最初の1ヶ月だけで終わっちゃった感じがするんですけど。」

「そうですね。これまで10時間分しか残業がつかなかったけど、一応、そういうことも無くなったみたいですし、いいんじゃないんですか。でも、残業時間はできるだけ10時間以内になるように申請してくれって言われました。」

「・・・結局のところ、実態は以前と変わってないってことですよねーーー。」

「そうそう。残業時間が短くなっている訳でもないし、実際、申請した時間以外にも残業してますからね。」

「でも、承認されない残業は、やはり残業代の対象にはならないんでしょうかね。」

さて、このような場合、承認を得ていない残業には残業代を支払わなくてもいいのでしょうか。

原則として、残業承認制を採用していた場合には、承認を得ていない残業に対しては、残業代の支払は必要ありません。

しかし、「使用者が労働者に対し労働時間を延長して労働することを明示的に指示していないが、使用者が労働者に行わせている業務の内容からすると、所定の勤務時間内では当該業務を完遂することはできず、当該業務の納期などに照らせば、所定の勤務時間外の時間を利用して当該業務を完遂せざるを得ないという場合には、使用者は当該業務を指示した際に労働者に対し労働時間を延長して労働することを黙示に指示したというべきであって、したがって、当該労働者が当該業務を完遂するために所定の勤務時間外にした労働については割増賃金の支払を受けることができるというべきである。」(東京地判平11.7.13 リンガラマ・エグゼクティブ・ラングェージ・サービス事件)と判示されている裁判例もあります。

残業申請

同様の判示は他にも多数あり、また行政解釈でも、「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる」(昭25.9.14基収第2983号)としています。

つまり、せっかく残業承認制を採用したとしても、会社が残業の存在を知りつつ放置すれば、それは黙示的指示と解釈される可能性が高いと言えます。

よって、残業承認制を採用する場合であっても、残業申請の内容とその実態(例えばタイムカード等の打刻時間)を照合して、乖離がある場合には、その点につき従業員との面談を実施して実態を把握したり、残業の承認をされていない従業員は帰らせるなど、労働時間管理を怠らないようにする必要があるといえます。


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