誓約書の有効性判断ポイントは?

当社は、家具量販店を全国に展開している会社で、独自のノウハウを活用し、家具量販店業界でも屈指の業績をあげています。

営業系列における職階は、平社員、チーフ、マネージャー、副店長、店長、営業本部長となっており、副店長以上の地位にある者は、労働基準法の管理監督者として取り扱い、時間外、休日手当等は支給されません。

誓約書の提出はあったが・・・

副店長以上の地位にある者が退職する場合には、会社独自のノウハウや運用、機密情報を守る為、競業避止義務および秘密保持義務を負わせることとし、退職後最低1年間は同業者へ転職しないことを制約する旨の誓約書を提出しなければならないとしていました。

「社長、先日退職したA(元店長)が、どうやら退職翌日からライバル会社Nへ、転職をしたようなんです。」

「何~!?よりによってNへ!?もしそれが事実であれば、大変だ。例の誓約書はちゃんと提出されているのか?」

「はい・・・。その点はご安心下さい。このようにしっかりと誓約書を交わしています。」

「そうか、んーーー。まずは本当にライバル会社Nへ転職したのかどうか、事実確認からだ。」

こうして、当社は、Aを呼び出し事実確認を行ったところ、Aはあっさり、ライバル会社Nへの転職を認めました。

「N社へ転職するというのが事実ということであれば、ちゃんと誓約書の内容を守るんだぞ。」

「嫌ですよ。退職後にどんな職に就こうが、私の自由です。どうこう言われる筋合いはありません。」

「何~。君は退職の際に、しっかりとこの誓約書にサインしているじゃないか?」

「確かにサインはしましたが、それは憲法にある職業選択の自由に反しています。この誓約書は無効です。」

この後、会社はAに対して誓約書に基づき、競業避止義務に違反するとし、訴えることになりました。

一般的に、労働者には職業選択の自由が保障されている(憲法22条1項)ことから、使用者と労働者との間に労働者の退職後の競業についてこれを避止すべき義務を定める合意があったとしても、使用者の守るべき利益の保護を目的とすること、労働者の退職前の地位、競業が禁止される業種、期間、地域の範囲、使用者による代償措置が講じられているか等の諸事情を考慮し、その合意が合理性を欠き、労働者の職業選択の自由を不当に害するものであると判断される場合には、公序良俗に反するものとして無効になると考えられます。

誓約書の有効性は

今回の場合について、Aは、

  1. 店長という地位から、店舗における販売方法や人事管理の在り方を熟知し、全社的な営業方針を知ることが可能である為、Aのような地位にあった従業員に対して会社独自のノウハウの保護を目的として、競業避止義務を課することは不合理ではないこと。
  2. 競業が禁止される業種として、会社の業務内容と同種の家具量販店に限定されると考えられること。
  3. 競業が禁止される期間について、退職後1年という期間は、不相当に長いものではないこと。
  4. 競業が禁止される地域の範囲には地理的な制限はないが、会社が全国的に家具量販店を展開する会社であることからすると禁止範囲が過度に広範ではないこと。
  5. 使用者による代償措置について、誓約書の提出を求められる副店長以上の従業員に対し、高額の基本給、諸手当等を給付していること。以上のことから、会社が主張した競業避止義務の有効性は高いと考えられます。

競業避止義務が有効かどうかは、背景事情によりますが、就業規則や誓約書等の存在があっても、必ず有効であるとはいいきれません。

しかし就業規則や誓約書を有効とするために、少なくとも対象となる従業員や競業が禁止される業種、期間、地域の範囲、使用者による代償措置等は規定したほうが良いと考えられます。


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